*2016年11月21日:幻想美術選「フェニックスを守護する女」レオノール・フィニー
*2016年11月22日:「木の葉を隠すなら森の中」..
*2016年11月23日:4週末連続上京確定 [;^.^]
*2016年11月24日:寒い..[;*.*]
*2016年11月25日:84ゴジラを..
*2016年11月26日:速水御舟展/山本もえ美展/年末恒例の飲み
*2016年11月27日:円山挙応展/秋田蘭画展
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*2016年11月21日:幻想美術選「フェニックスを守護する女」レオノール・フィニー


 「幻想美術選」も第39回であるが、ここ最近、シュルレアリストを取りあげていなかったような気がするので、今回から4回ほど続けて取り上げる。いずれも、シュルレアリスムファンにとってはビッグネームであるが、一般の美術ファンにはほとんど知られていないであろう画家たちであるが..とはいえ、最初にとりあげるこの画家は、まだしもメジャーではあるまいか。アート系に強い書店では、単独の画集を見かける機会もある。

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「フェニックスを守護する女」(レオノール・フィニー、1954年)

 レオノール・フィニー(1907〜1996)について、詳しく知りたければ、Wikipediaを参照のこと。この作品は彼女の、初期から中期にかけての作風を伝えている。

 深読み(妄想)は、いくらでもできる。この「女(母か..あるいは、少女とすら見える)」が守っているのは、フェニックスの卵なのであろう。とすれば、彼女を慕うように、あるいは守るように取り囲んでいる鳥たちは、フェニックスたちということになろうか..あるいは、自分たちの「王」たる「フェニックス」の誕生を待つ、「臣下」たちなのであろうか..彼女は、フェニックスの「乳母」なのか。あるいは(生物界では珍しくもないことだが)フェニックスが誕生した暁には、最初の「餌」となる運命の「人身御供」なのであろうか..(だとすると、この鳥たちは、彼女を「監視」しているのかもしれない..)背景は、どう見ても「廃墟」。この赤い空は、人類文明を焼き尽くした劫火なのであろうか..そういえば、フェニックスは、炎の中から再生するのだった。フェニックスの再生のために(ただそれだけのために)、人類文明を滅ぼしたのだろうか..?(..誰が?)

 ..いかん、歯止めが利かなくなってきた [;^.^]。ちょっと筆を(タイプする指先を)滑らせてみただけで、脳内には、永井豪世界(「魔王ダンテ」「凄ノ王」「バイオレンス・ジャック」)、手塚治虫世界(「火の鳥」)、そして、アルフレッド・ベスターのSF小説、マルセル・シュウォッブの幻想小説などが、あとからあとから、とめどなく..[;^.^][;^.^][;^.^] 前にも述べたと思うが、こういう作品こそが、私にとっての理想の幻想絵画なのである。あるいはあなたは、私とはまったく異なる妄想に襲われたかも知れない。それでいい。いつか、その話を聞かせてもらえると、私はとても嬉しい。

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*2016年11月22日:「木の葉を隠すなら森の中」..


 ..「本を隠すなら、倉田の自宅」..などとチェスタトン的に気の利いた警句を吐いている場合ではなく..[;_ _][;_ _][;_ _] 絶対に、自宅内のどこかにあるはずなのに、数ヶ月にわたって、どうしても見つけられない本が、少なくとも3冊ある..[;_ _][;_ _][;_ _]

 捜索時間(コスト)を鑑みれば、買い直す方が賢い..しかし、それでは、どこかに埋もれてしまっている本に対して、申し訳が立たないではないか [;_ _]。その本が自分で姿を隠したわけではなく、見つけられないのは、全面的に私の責任なのに..[;_ _](それに、諦めて買いなおした途端に見つかることは、経験則から明らかであるし。[;_ _][;^.^])

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*2016年11月23日:4週末連続上京確定 [;^.^]


 10日前の日記に、こう書いた↓

 それよりも深刻なのは、根津美術館の「円山応挙展」の(前期は無理なく行けるが)後期の「11月29日(火)〜12月18日(日)まで」という日程と、千葉市美術館の「浦上玉堂と春琴・秋琴」の(前期は無理なく行けるが)後期の「12月6日(火)〜12月18日(日)まで」という日程である..どうしよう..もしもこの両者とも観るとすれば、「12月10日(土)/11日(日)」か、「12月17日(土)/18日(日)」しか、チャンスがないぞ。前者だったら、4週末連続上京だ [;^.^]。後者でも似たようなもんだ..というか、ほとんど年末である。[;_ _]

 ..で、引き続き悩んでいたのだが、実はもうひとつ、12月10日(土)に、上京してまで行くかどうか、悩んでいたイベントがあったことを思いだした [;^J^]。これである↓

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第302回定期演奏会

ベルリオーズ:序曲「海賊」作品21
プーランク:バレエ組曲「牝鹿」
ベルリオーズ:「イタリアのハロルド」―ヴィオラ独奏付きの交響曲 作品16

指揮:広上 淳一
ヴィオラ:川本 嘉子

 まぁ、もうチケットは無いだろうしなぁ..と、検索してみたら、まだあるではないか。この時点で、いわば「キレて」[;^.^]、即購入。すなわち、12月10日(土)の上京確定。午後の公演なので、高速バスで上京することに決めて、バスのチケットをこれも即購入。どこに泊まるかはあとで考えることにして、翌12月11日(日)に、以下の予定を入れた↓

*千葉市美術館
 「文人として生きる−浦上玉堂と春琴・秋琴 父子の芸術
 後期:12月6日(火)〜12月18日(日)まで

*根津美術館
 「円山応挙 「写生」を超えて
 後期:〜12月18日(日)まで

*スパンアートギャラリー
 「東逸子 個展 ヘルシニア〜光の残響〜
 12月3日(土)〜12月13日(火)まで

 ..あ〜、すっきりした、吹っ切れた。[;^.^]

 11:30に、先日発注したワインが届いた。11:40に発って、12:00前にクリーニング出し。(これで、本日18:00に仕上がりを受け取れる。)某事業所で休日出勤(13:00〜14:30)。14:45、帰宅。14:50に出直して、浜松日産伊場店へ。15:25、帰宅。夜、クリーニング受け取り。

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*2016年11月24日:寒い..[;*.*]


 朝、雨が降っているあいだは普通の寒さだったのだが、昼過ぎ、雨がやんでからが、むしろ非常な寒さ [;_ _]。夜にはまた、普通の寒さに。

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*2016年11月25日:84ゴジラを..


 SFマガジン誌で仕入れた小ネタ。「84ゴジラ」(初代「ゴジラ」(1954)に対して、1984年に公開された「ゴジラ」を「84ゴジラ」と呼び習わしている)を、「どちら側」に属していると把握しているかで、オタクとしての世代(私に言わせれば「オタク年齢」)が判別できるというのである。(これはもちろん、実年齢とは無関係である。)

 私の主観(史観)では、「84ゴジラ」というのは、完全に「後期ゴジラ」。「平成ゴジラシリーズ」への序曲である。(大体、1984年なんて、つい最近ではないか。[;^J^])それに対して、主として若い人々にとっては、「前期ゴジラ」らしいのである。「昭和ゴジラ」の悼尾を飾る作品であり、「平成ゴジラシリーズ」とのあいだには断絶がある、と..

 まぁ、彼らにとっては、1984年というのは、遠い過去なのだろう。1954年とほとんど差がないほどまでに..(よく考えてみたら、2016−1984 > 1984−1954、だった..[;_ _][;_ _][;_ _][;^.^])

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*2016年11月26日:速水御舟展/山本もえ美展/年末恒例の飲み


 6:02に(今日は寝坊をせずに [;^J^])自宅を発ち、予定どおり、7:00に浜松駅前ロータリーを発つ、渋谷新宿ライナー浜松2号で東上。富士山、白い。足柄SA、雪残っている。

 例によって、渋谷まで辿り着く前に、(首都高が渋滞しているので)10:52、用賀で臨時降車。田園都市線で渋谷に直行し、タワレコで、ももクロの今春のドームツアーの「BD BOX」を購入 [^.^](..← ここでたまらず、未来からの介入 [;^J^]。この文章を書いている11月29日(3日後)になって判明したのだが、これが、想定外の破局をもたらそうとは..[;_ _] 廃墟通信の来週号を、乞うご期待だ! [;^.^][;^.^][;^.^])

 12:15、山種美術館。「速水御舟の全貌 ―日本画の破壊と創造―」(後期:〜12月4日(日)まで)である。

 ほぼ全て、何度も実物を観ている作品であるし、前期から(通期で)展示されている作品がほとんどなのだが、いくつかコメントしておこう。「菊花図」画像検索結果)は、ある意味、病的な幻想。実物を実見しないと、この描線の立体感は伝わらないだろうなぁ..ほとんど、異生物である。「日向葵」画像検索結果)も、いい。この構図、ゴッホの一連の「ヒマワリ」よりも良いと思う。(思えば、ゴッホの「ヒマワリ」も、実物をみないと、あの描線の迫力はわからないよなぁ..)「春昼」画像検索結果)は、改めて素晴らしい作品。まぁ、私の場合は「春昼」で泉鏡花を想起してしまうという問題(なのか? [;^J^])を抱えてはいるのだが..[;^.^] この明るさと対照的な、農家の戸口の中の闇が、深く心に残る..

 13:35に発つ。時間の余裕がありそうなので、有楽町へ。14:05、スパンアートギャラリー。「山本もえ美 個展 異次元に遊ぶ」(〜12月1日(木)まで)である。(つまり、あなたがこれを読む頃には、終わっている。[_ _])

 いつまで掲載されているかはわからないが、前記のこの展覧会のページの、展示風景のパノラマ写真、および個々の作品の写真は、非常に充実しているので、参考にして欲しい。画家本人(チャーミングな女性である)と、いろいろお話できた。明示的に「夢の風景である」というのが、潔い。技法的には、多くの作品で「古色を出すために」紅茶が使われているのが面白かった。

 14:30に発つ。有楽町から、山手線と京浜東北線を乗り継いで東神奈川にいくつもりだったのが(有楽町には、京浜東北線が止まりません)、ふと気が付くと、大崎 [;^J^]。品川まで戻ったのだが(← このあたり、山手線と京浜東北線の位置関係をご存知無い方にはわかりにくいと思うが、いちいち説明するのも面倒なので、「倉田がドジ踏んだらしいな」程度でスルーしていただいて結構です [;^J^])、東神奈川駅で人身事故発生とかで、京浜東北線、動いていない [;_ _]。その東神奈川駅で待ち合わせているのだが [;^.^]。ところがぎっちょん!(← 調べるのもイヤになるほどの超古語 [;^.^])、東神奈川には、品川からなら、京浜急行でもアプローチできるのだ!(← このあたりも、首都圏の路線群に暗い方にはわかりにくいと思うが、仔細は略す。[;_ _])待ち合わせ時刻の15:30に遅れること、数分程度で、東神奈川駅に着いた。

 年に一度の、中学時代の旧友たち(及び恩師)との会合(お墓詣り&忘年会)である。さすがに2人ほどは、数分程度の遅延ではたどり着けず、ひとりが追い付いた時点で(もうひとりはあとから合流してもらうことにして)出発。16:00頃には(徒歩数分先の)お墓。16:25に、忘年会会場の「根岸屋」。ここで、遅れていたもうひとりも追いついた。

 まさに、四方山話である。数十年前の昔話にも、今回はわりとついて行けたぞ。[;^J^](以前も書いたと思うが、私は、昔のことをあまり憶えていないのである..)

 19:10に店を出て、19:25、近所の「木曽」に河岸を変えて、続行。21:20、散会。

 今夜の宿は、例によって、新宿歌舞伎町の「はたごや」を予定していた。東神奈川からは、京浜東北で北上して、山手線(外回り=時計回り)に乗り換えて、なんなくたどり着くはずだったが..気が付いたら、何故か王子 [;^.^]。(← このあたり、山手線と京浜東北線の位置関係をご存知無い方にはわかりにくいと思うが、いちいち説明するのも面倒なので、「倉田がドジ踏んだらしいな」程度でスルーしていただいて結構です [;^J^](← コピペしました。すみません。[;_ _][;^.^]))

 田端まで戻り、山手線を内回り(=反時計回り)して、23:10頃、無事、新宿着。小腹がすいていたので、例によって、はたごやの前のすし屋で少しつまんでから、23:25にはたごやに向ったら..なんと満室 [;_ _]。想定外。[;_ _]

 水道橋へ転進。久しぶりに、スパ ラクーア。0:15着。リクライニングシートが確保できたので、紆余曲折あったとはいえ、万事OK、ということにした。[;^J^]

 フィデル・カストロ、逝去。享年90歳。評価も想いも人さまざまだとは思うが、合掌..

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*2016年11月27日:円山応挙展/秋田蘭画展


 8:50、ラクーアを退出。9:25、根津美術館。「円山応挙 「写生」を超えて」(前期:〜11月27日(日)まで)である。前期展示の最終日ということで混む可能性を考えて、10:00の開館の30分以上前に来たのだが、それほどの行列にはならなかった。

 何度も観ている作品が多いのだが..当たり前だが、何度観ても、いいものは、いい。とにかくまずは、「牡丹孔雀図」画像検索結果)! 問答無用。どうしても孔雀(の羽根)に目を奪われてしまうのだが、実は牡丹がすごいよね。「西施浣紗図」画像検索結果)の、美しさ! 「雨竹風竹図屏風」画像検索結果)の絶妙な空気感と、圧巻の「藤花図屏風」画像検索結果)! この、輝くばかりの色彩を再現している印刷物を、未だに見たことがない。(もちろん、画像ファイルも。[;_ _][;^J^])そして真打ちは言うまでもなく、「雪松図屏風」画像検索結果)! 何度も観ているのだが、毎回毎回、言葉を失ってしまう..(無責任な)アマチュアで良かった、と、心底思うのは、こんなときである。プロの評論家が言葉を失っていたりしたら、食い扶持も失ってしまう。プロは必ず何かしら、語らなければならないのだ。

 「木賊兎図」画像検索結果)..これもまた、別の意味で言葉を失う [;^.^]。なんという、可愛いさだ..そして、「龍門図」画像検索結果)! この、三幅対の中幅、すごくない? 「鯉の滝登り」を、これほどのスピード感と空間感覚とデザイン感覚で完璧に描き上げた作品を、私は、ほかには知らない..まるで、ロケットのように宇宙空間に、あるいは異次元空間に、一直線に飛翔してゆく鯉..これは、三幅対、セットで観なければわからない。この巧妙な空間設計は。「写生図巻」画像検索結果)も、見応えがある。妙な表現だが、少年・手塚治虫が驚異的な画力で描きあげた、昆虫図譜を想いだした。

 しかしなんといっても、今回の展覧会のハイライトは、「七難七福図巻」である! これには圧倒された! 打ちのめされたと言ってもよい..ここまでご紹介してきた、他の作品の画像検索結果から感じ取られたであろう、端正さ、ある種の「高貴さ」を先入観として、この作品の画像検索結果を見ると、エラいことになる..(あ、もうクリックしちゃいました? [;^.^])これが、応挙の出世作。ここまで徹底的に写実を極めた..という言い方は少し違うな、写実の技術を「極める」のは、もちろん遙か後年。彼がこの作品で「極めた」のは、「写実」に対する「姿勢」「覚悟」なのである。

 「単なる「地獄絵図」は絵空事に過ぎない、ひとつ、本当の「この世の地獄」を描き出して欲しい」、というクライアントからの発注に対して、全力で出した回答が、これである。大概の「地獄絵図(絵空事)」を見慣れている私ですら、目を背けたくなるような、この世の地獄..人間が作りだした地獄..(..すまん、思わず「デビルマン(最終巻)」入ってしまった [;^.^])当然というべきかなんというべきか、圧倒的な迫力で迫ってくるのは「七難」図であり、「七福」図は、「悪くはないね」、という感想にとどまってしまうのは、もう、どうしようもなく、仕方がない。これは応挙の責任ではない。(ダンテの「神曲」だって、「地獄篇」の面白さに比べれば、「天国篇」なんか、あってもなくてもいいようなもんなんだから(← 罰当たりな。[;^.^]))今回、図録の購入を見送ったのは、後期展示を観てからにしたかったからである。

 11:00に退出し、11:30、サントリー美術館。「世界に挑んだ7年 小田野直武と秋田蘭画」(前期:〜12月12日(月)まで)である。

 恥ずかしながら、小田野直武の名は微かに記憶にあった程度で、「秋田蘭画」は、まったく知らなかった [;_ _]。世の中は、まだまだ未知の、驚異の世界で満ちあふれているのである [^.^]。これは慌てて [;^J^] 図録を買ったので、スキャンしてご紹介できる。

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 秋田蘭画というのは、大雑把に言って、幕末、秋田藩の若い武士たちによって作り出された、西洋の美と東洋の美が結びついた、時には稚拙で歪んでいながらも、しかし超絶的な技巧も見せる、ひとめ見たら忘れられない、不思議で異様な美しさに満ちた絵画である。その中心人物が小田野直武。左図は「鷹取鳥之図」。まだ秋田蘭画前夜の時代。彼の基礎力がはっきりと判る。そして右図が同じ画家の..タイトルを言う必要はないね、「解体新書」。この歴史的な出版物の挿絵師として抜擢されたのが、小田野直武だったのである。(どこかで聞いたことがある..というのは、これのことだったのだ。)もちろん、原書(等の西洋医学書)の挿絵の写しであるが、既にこれだけの技術を身に付けていたことに驚く。



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 やはり、秋田蘭画前夜の、これは松林山人の「白梅叭々鳥」。この枝振りといい、叭々鳥の細密描写といい..同じく松林山人の「牡丹図巻」にも息を呑んだのだが、これは、図録に見開きバーン、で、ノドにかかっていて、スキャンできず。画像も検索できず、残念。



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 この3点は、全て小田野直武。左から、「人物図」..どうです、きてるでしょう。来始めたでしょう [^.^]。中央が、「鷹図」。この、近景のモチーフを極端に大きく細密に描き、中景を省略し、遠景に、薄く淡い風景を描く(そして、しばしば地平線/水平線を明確に描く)のが、秋田蘭画の特徴なのである。全体を淡彩でまとめた傑作。そして右図が、「蓮図」..先ほど述べた特徴が全てあてはまる。そしてこの一種の「博物学趣味」。もうどうしようもなく、荒俣宏を思い出さずにはいられない。



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 左図は、佐竹曙山の「岩に牡丹図」。素晴らしくも、どこか非現実的な色彩。牡丹と蝶..夢の雰囲気があるのである。右図が、この展覧会のメインビジュアルであり、秋田蘭画の代表的な傑作である、小田野直武の「不忍池図」。この不思議な場面設定、事物の配置、色彩のバランス、細密描写..私が夢中になっている理由がおわかりであろう。これは完全に「幻想美術」の世界なのである。そしてここでも明確な「地平線」志向..先ほども述べた、この「地平線」へのこだわりが、シュルレアリスムを想起させる..(シュルレアリスム絵画を特徴づけるのは、「地平線」なのである..)



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 左図は、小田野直武の「日本風景図」。遠景の人物の細密描写が、面白い。中央図は、佐竹曙山の「松に唐鳥図」。この色彩の美しさ! くどいようだが、極端に大きく細密に描かれた近景と、淡く夢のような遠景の、超現実的な組み合わせ..夢の世界..そして、右図! 佐竹義躬の「岩に牡丹図」! あんまり驚いたので、思わず「幻想美術選」に回そうかと思ったぐらいである! だって、手前は崖でしょう? その「向こう側」に牡丹の花があるのである..少なく見積もっても、直径3メートルはくだらない、マンモスフラワー(「ウルトラQ」)..いや、もちろん、遠近法のミスなんだけどさ [;^J^]。この「怪植物」は、わたくし的には、本展覧会の白眉であった。[^.^]



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 遠近法のミスと言えば、左図、田代忠国の「菊と秋海棠図」。この花瓶、高さ5メートルぐらいない? [;^J^] その遠近感の異様さに思わず目を奪われてしまうが、花の描写は実に美しい..妙な連想かもしれないが、内田百けんの、幻想短編の世界を思い出す。そして、右図が、同じく田代忠国の「三聖人図」..何も言うまい。誰もこれには、勝てるまい..[;^.^]



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 最後に、司馬江漢の「江ノ島稚児淵眺望・金沢能見堂眺望図衝立」。これは実は「秋田蘭画」ではなく、「秋田蘭画以後」の作品である。秋田蘭画の時代は、少なく見積もると、僅か7年。関係者たちがさまざまな理由で夭折したのち、忘れ去られていくのであるが、その種子(西洋画と日本画と東洋画の融合)は、生き残った。そのひとりが、司馬江漢である。なんという..なんという、美しい絵画世界であろうか..



 13:20に退出。昔なら、もう一品(ひとしな)片づけた時刻であるが、この歳になると、無理はしない。14:03、東京発のひかりで、15:32、浜松着。八丁蔵で一息ついてから、18:10、帰宅。

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*解説


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Dec 3 2016
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