*2010年08月16日:「平ら山を越えて」
*2010年08月17日:「時計館の殺人」「黄衣の王」
*2010年08月18日:マン喫で更新
*2010年08月19日:「鉄腕アトム《オリジナル版》復刻大全集 ユニット4」照合調査
*2010年08月20日:メタ無知
*2010年08月21日:「ワイオミング生まれの宇宙飛行士」
*2010年08月22日:マン・レイ展/秋葉原
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*2010年08月16日:「平ら山を越えて」


 「平ら山を越えて」(Terry Bisson、河出書房新社、奇想コレクション)読了。

 短編集である。なかでも、「ちょっとだけちがう故郷」が、もっとも素晴らしい。砂漠の中の孤立した町や、競技場に隠されていた(ガラクタからなる)幻想的な飛行機などの、諸星大二郎的なイメージ。砂漠を飛行機で越えていった果てに現れた、「こちらの現実とは少し異なる」もうひとつの町。そこに留まることを選んだ幼なじみとの別れ..(なぜなら「こちらの現実」とは異なり、ここでは彼女の母は存命であり、彼女もまた不治の病に犯されていないからだが..留まった結果として..)「スカウトの名誉」は、ネアンデルタール人の滅亡(最後の一群の全滅)に立ち会ったタイムトラベラー、という、これもまたなんとも切ない設定の傑作。

 「マックたち」は、テロリスト(大量殺人犯)の「処刑」を遺族に委ねる話だが、なにしろ百数十名を殺した犯人なので、全ての遺族に行き渡るようクローンを量産し、「その中にひとりだけ本物を混ぜて、誰が本物だかわからないようにして」、遺族たちに分配する。遺族たちは思い思いの方法で、そのクローン(もしかすると本物)を「処刑」する。((恐るべきことに)実話にインスパイアされた)大傑作。「平ら山を越えて」は、爽やかな寓話。「光を見た」は、クラーク的・宗教的な佳品。「謹啓」の設定は、人口調整のための強制的安楽死が施行されているデストピア。アイデアも展開も既視感が強く感じられ、私はあまり乗れなかったが、これを集中第一の傑作と推す人は多いだろうし、その観点は理解できる。

 「ザ・ジョー・ショウ」はファーストコンタクトものだが、この超越的な知性体は、単にエロいだけだった [;^J^]。こういうの、大好き。[;^.^][;^.^][;^.^]

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*2010年08月17日:「時計館の殺人」「黄衣の王」


 私は、綾辻行人の「館シリーズ」を、ほとんど読んでいない。(「殺人鬼」シリーズは読んでいる、という、鬼畜な読者でございます。[_ _][;^.^])それというのも、もう随分昔のことになるが、「十角館の殺人」に失望させられたからである。ただし急いでフォローしておくと、作品の問題というよりは、期待が高すぎたという、こちら側の問題である。なにしろ、「「新本格」というジャンルを作り出した革命的な作品」であり、その謎解きでは「世界が変わる」という評を読んでいたのだから..確かに、終盤の「あの1行」で愕然としたことは事実だが、「世界が変わる」ほどの衝撃は受けなかった。そしていったん冷めてしまってからふり返ると、欠点ばかりが見えてしまったのである。(処女作なのだから、欠点のふたつやみっつや十や二十は、あっても当然であるのだが。)もしも冷めずに、つつき返さなかったら、そんな欠点には気が付かなかった(というよりは、気が付いても問題にしなかった)はずであるから、「期待過剰」とは、つくづく罪深いものである..

 ..などという、他人には全くどうでもいい経緯(いきさつ)はさておいて [;^J^]。まぁそんなこんなで、なんとなく、「館シリーズ」には手が伸びていなかったのであるが、帰省中の無聊を慰めるために積読の山から適当に掴み出して来た文庫本の中に、「時計館の殺人」(綾辻行人、講談社文庫)が混じっていた。

 ほほぅ..これは素晴らしいではないか!(上から目線で [;^J^])見直しました。「密室」はまるで密室たりえておらず(なにしろ「秘密の通路」が堂々と開陳されており [;^J^])、それに気が付いた時点で(逆算して)犯人の見当もついてしまうが、この作品の肝は、そんな「どうでもいい」[;^.^] ところには、ない。このメインアイデア(というより「ビジョン」)の「幻想性」こそが、本質である。この世界観がもたらす感動は、ほとんどSFのそれに近い。(なんの必然性もなしに超能力者が出てくるとか、そんなくだらないレベルの「SF性」ではなく。)

 何故、犯人は時計を凶器に使うのか。何故、幽閉されていた少女の部屋のレコードのレーベルは、手作りのレーベルに貼りかえられていたのか..「十角館の殺人」どうよう、叩けば埃は出るのだが [;^J^]、叩く気にはなれない。ここらあたりが(私にとっての)「「十角館」とは異なる値打ち」、なのだろう。

 「黄衣の王」(Robert W. Chambers、創元推理文庫)も、読了。「黄衣の王」シリーズ(短編4編)と、長編「魂を屠る者」を収録する。

 「黄衣の王」シリーズは、それを読むと発狂する(という設定の)「黄衣の王」なる戯曲をめぐる作品群。この中では、「評判を回復する者」が素晴らしい。幻想のアメリカ史に囚われた狂人の物語..などというまとめでは、その真価は全く伝えられない。是非とも読んで欲しい..のだが..本書の大部分を占める「魂を屠る者」が、読者を選ぶ作品であるだけに、買え!と命ずるのは躊躇われてしまう。

 要するに、光(=キリスト教=文明社会=アメリカ合衆国=人類)、対、闇(=アジアの邪教(のもとに集結する共産主義やアナーキズムなど、アメリカの「理性的な白人文明」に対立するもの全て))、という図式がどうしても鼻につくのである。私などは、そこらへんの要素は適当にスルーして楽しんでしまうが、そうまでして読みたくはない、という人もいるであろうし..本書については、石堂藍氏の書評が、大いに参考になるであろう。

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*2010年08月18日:マン喫で更新


 「廃墟通信」は木曜日朝(実際には水曜日深夜)に更新しているのであるが、廃墟通信を含む「倉田わたるのミクロコスモス」のマスターファイル群をメンテナンスしているリブ100は、実家ではインターネットにアクセスできないのである。私のリブ100は有線LANにしか対応しておらず(正確には、有線LANカードしか所有しておらず)、実家にはLAN設備など、無いのである。(従って、今さら(Win95用の [;^.^])無線LANカードを入手しても、全くの無駄というわけさ。)昔は、リブ100にパルディオ611S(PHS端末)を装着してFTPしていたのであるが..(突然、気が付いたが、もしもDocomoがPHSから撤退せず、名機パルディオ611Sが今なお使えていたとすると、私はまだ iPhone を買っていなかったかも知れない。[;^.^])

 ..というわけで、廃墟通信の更新ファイルをSDカードにコピーして、相鉄線でひと駅となりの二俣川の駅前の、AirsCafe(マンガ喫茶)へ。ここのPCにSDカードを挿入し、IEでアップロードして、更新した。

 セキュリティ的に気にならないことはないのだが..可能な限り痕跡は消しておいたし、多分、この街には、そんなに気の利いたクラッカーはいないだろう。とはいえ、あとで(今回、入力した)パスワードは変更しておかなくてはね。

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*2010年08月19日:「鉄腕アトム《オリジナル版》復刻大全集 ユニット4」照合調査


 朝のうちは曇天で、比較的過ごしよい。

 バスで9時半ごろに中山駅に出て、Tさんに迎えに来ていただき、Tさん宅で、「鉄腕アトム《オリジナル版》復刻大全集 ユニット4」の、初出誌との照合調査を行なう。

 今回判明した「書き換え箇所」は、トータル24箇所。「宇宙の寄生虫」では、寄生された“動く”木を指して「木ちがいめっ」などが、全滅 [;^J^]。まぁ仕方がない。それにしても、私の子ども時分(このエピソードが描かれた1960年代)には、「きちがい」に、たいして重いニュアンスなど無かったんだけどねぇ。(いまどきの「バカ」「アホ」と、同程度であったと記憶する。)

 「ダーマの宮殿(改題:悪魔のハチ)」の序盤の、現行版(最終版)ではカットされているシーンで、ヒゲオヤジがアトムを「携帯電話」のようなもので呼び出している。思わず、おおっと思ってしまうが、これはもちろん携帯電話ではなく、「マイクロ送信器」である。

 15時前に作業を終わらせ、中山駅まで送っていただき、バスで帰宅。さすがに暑くなってきた。あとは夜まで、本日調査分のデータ整理をぐたぐたと行なう。

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*2010年08月20日:メタ無知


 これは、さすがに..

 菅首相は19日、「制服組」トップらとの意見交換が始まる前、北沢俊美防衛相に「昨日事前に予習しましたら(防衛)大臣は自衛官ではないんだそうですね」と笑顔で話しかけた。

 さらに、会談のあいさつでは「改めて法律を調べてみたら(総理大臣は)自衛隊に対する最高の指揮監督権を有すると規定されている」とも述べた。

2010年8月20日(金)18時37分配信 J-CASTニュース(抜粋)

 ..もちろん、高校の教科書に載っているのであるが、菅首相の場合、世代的に学校では習っていない可能性が高いし、社会人になってしまうと、こういう「義務教育+α」程度の常識(たとえば、鶏は四本足ではない、とか)は、自覚的に勉強しないと、一生、憶える機会が無いんだよね。(← 全力で擁護してみました。[^.^])

 ま、過去は改変できないので、これまで知らなかったという事実は、今さら覆せない。この機会に憶えられたのなら、それはそれでよいことである..が!

 どうしてわざわざ、バカ正直に「それ」を言うかね。「改めて法律を調べてみたら」なんて..前の晩に会談のための予習をして、「やべっ! そうだったのか!」と、今頃になって知ったのだとしても、そんなことをわざわざ言う必要はない。(大昔から知っていましたよ、こんなの常識じゃないですか)という顔をして、すっとぼけていればいいのだ。首相ならば、そうするべきではないか。

 彼は、これがどれほどの一大事であるか、理解できていないのだろう。世界でも有数の兵力をもつ「軍隊」の最高指揮官が、「自分が最高指揮官であることを知らなかった」ということが。

 無知の自乗である。

 おそらく彼は、自衛隊には興味がないのだろう。自衛隊にかかわる案件(海外派兵など)は、任期中は、「いい感じにやりすごす」つもりなのだろう。

 ちなみに、本件は、私のマイミク諸氏のミクシイ日記と、私のツイッターのタイムライン上では(評論家系を除くと)ほとんど誰も言及していなかった。

 無視されたのである。

 自国民に無視される首相は、当然、他国からも無視される。菅首相が国際社会で無視されるのは当然だと思うが、彼の巻き添えをくらって日本も無視されるのが、やるせない..

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*2010年08月21日:「ワイオミング生まれの宇宙飛行士」


 「ワイオミング生まれの宇宙飛行士」(中村融編、ハヤカワ文庫)読了。「宇宙開発SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー) 」である。

 「主任設計者」は、実在人物と架空の人物を巧妙に配置して、ノンフィクションタッチで、ソ連の宇宙開発史の裏面を点描的に綴る傑作。「サターン時代」は、アポロ計画が中断されずに延々と続く、アメリカのもうひとつの宇宙開発史。木星がターゲットという伏線から予想されたとおりのエンディングである。[;^J^]「ワイオミング生まれの宇宙飛行士」に登場する、宇宙への憧れを抱いてついには火星に降り立った主人公は、グレイ型の宇宙人のような容姿をしており、それによって、宇宙開発低迷時代における人類の愚行と迷妄を、また、それと対比されることによってよりいっそう光り輝く人類の気高さを、感動的に描き出す。

 ほか、「電送連続体」にはいまいち乗り切れなかったが、「月をぼくのポケットに」「月その六」「献身」は、いずれも文句なしの面白さである。

 「ぼくらが夢見た未来都市」(五十嵐太郎、磯達雄、PHP新書)読了。

 大阪万博と愛知万博を両端に置く構成。古くはレオナルドやフーリエらから、現代の一連の建築家まで、「未来都市」をどのようにイメージしてきたのかを、非常にコンパクトに、しかも幅広く目配りして記述する好著。現実の(実在の)未来都市計画と、SF小説/SF漫画/SF映画における未来都市とを、交互に紹介してくれるのも、面白い。

 本書第99頁から、素敵な文章を(コンテクストは略して)紹介しよう。「海から生まれ、海に帰る。東京は水に取り憑かれた都市なのである。」

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*2010年08月22日:マン・レイ展/秋葉原


 帰省は今日まで。実家前のバス停から8:21のバスで発ち、まずは乃木坂の国立新美術館に向かう。実はこの美術館を訪れるのは初めてなのだが、メトロから直結しているのは(この酷暑の折 [;^J^])非常に助かる。

 開館時刻の10時ほぼジャストに到着。マン・レイ展である。

 大変興味深い展示品が多く、短編映画(15分程度)も複数上映されており、おかげで、観終えるのに3時間もかかってしまった [;^J^]。例によって図録を買おうかと思ったのだが..3千円という価格はともかく、あまりの分厚さにめげてしまい、断念。(この判断は、結果的に正しかった。[;^.^])何も買わずに帰るのも寂しいので、代わりにクリアファイルを購入した。

 このあと、神保町と秋葉を廻ってから浜松に帰るつもりなのだが、既に13時半近くで、あまり昼食を遅らせたくもなかったので、この美術館の3Fのこじゃれたレストランで食べることにした。せっかくなので、ランチコース。

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 左から順に、「サーモンのリエット サラダと共に」「豚ロース肉のロースト リヨン風グラタン添え ソース・シャルキュディエール」「“ムッシュ ポール ボキューズ” のクリーム・ブリュレ」..呪文料理((C)のだめ)というほどではないが [;^J^]、ひとかみふたかみ、しかねない [^.^]。なかなか美味しく、満足した。強いて言えば、メインの肉料理のクオリティが私の予想を下回っていたのだが、ウェイトレスのお姉さんが実にキュート(とくに笑顔が最高)なので、この程度のことは、全部チャラだ! [;^.^]



 14:10過ぎにレストランを発ち、神保町に着いたのが14:45分頃。十分に暑い。十分に暑い。複数の書店を廻って、新刊ばかりひと山買う。いつもながらのことではあるが..これらのうち半数は、浜松に戻ってからでも、たとえば(浜松駅直近の)メイワンの谷島屋で買えるであろうし、残り半数も全て、アマゾンで買えるものばかりである。わざわざこの酷暑の中、都内から重い思いをして担いで帰る必然性は、なんら無い。なんら無いのだが..「目の前に欲しい本があるとき、それを買わずに我慢するのは健康に悪い」のである。ほんとだよ。[;^.^]

 15:15頃に神保町を離脱し、徒歩で秋葉(万世橋交差点付近)に着いたのが、15:30頃。もうへっとへとである [;_ _]。荷物か酷暑か、どちらか一方ならばともかく、合わせ技では..[;^.^]。しかし何より驚いたのは、石丸電器3号店が潰れていたこと。細身のビルの全フロアが、ジャズとクラシック(とあと若干?)のCDとDVD売場だったのだが..まぁ、仕方が無いか。ここ数年は、いつ行っても、すっかすかに空いていた(1フロアに客1〜2人ということも珍しくないありさまであった)のであり、さすがにこの規模の店舗は維持できなかったということだろう。寂しいなぁ..(などと、通販を多用している人間が言う資格は無いとは思うが..)

 ここでCDをいくらか物色するつもりだったのだが、すっかり出鼻をくじかれてしまったので、ヨドバシに直行。スマメ用のPCカードアダプタを買うつもりだったのだが、何しろ「スマートメディア」かつ「PCカード」という二重苦であるが故、この大規模店にも店頭在庫が無かった。秋葉のどこかにはあると思うが、これ以上動き回る元気は、いっさい無い [;^.^]。今日はここまでとする。

 16:26東京発のこだま。18:24浜松着。駅前のビックカメラで、USB接続のポータブルHDD(500G)を購入して、バスで帰宅したのが19:15。あとはぐだぐだになるだけである。[^.^]

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*解説


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Aug 26 2010
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