*2001年07月02日:小林泰三を2冊
*2001年07月03日:「レッドオマンGO!」ゲット
*2001年07月04日:「山尾悠子作品集成」
*2001年07月05日:峠茶屋
*2001年07月06日:歓送迎会
*2001年07月07日:リブ100の液晶交換
*2001年07月08日:Tさん宅単行本サルベージ
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*2001年07月02日:小林泰三を2冊


 ネタが無いので、昨日読了した書籍の話題でお茶を濁す。小林泰三を2冊。これまで、雑誌やアンソロジーで時々読んでいたのだが、まとめて読むのは初めてだったのである。

 まず、「玩具修理者」(角川ホラー文庫)。表題作が出世作。わざわざクトゥルー神話の固有名詞を使う必要は無いと思うし、生物/非生物のディスカッションが唐突であるとも思うが、非常に良くまとまった短編。詳述はしないが、この“トリック”は、シンプルであるだけに効果的。短編は、かくありたいものである。「酔歩する男」は(意外なことに)正攻法の時間SFであった。意識の流れと時間の流れのリンクを切り離すというアイデアは、必ずしも独創的ではないかも知れないが、この設定で直ちに思いつく「食事も逆行」「会話もできない」「風景はどう見える」等など、支離滅裂で小説にも出来ない状況を、「時間の流れを認識する能力を失っても、意識がある間は、“五感”や“常識”が、それを代替する(従って、意識を失うと(眠ると)別の時間に飛ぶ)」、という理屈で、うまく回避している。

 もう1冊は、「肉食屋敷」(角川ホラー文庫)。表題作の、屋敷を脱出して外から見たときのイメージ(“屋敷”に、じろりと睨まれる)は、昔々、バイオ系の短編SFマンガで見た記憶がある。絵柄は、確か、荒木飛呂彦だったと思うのだが..(「バオー」でも「ジョジョ」でもない。)「ジャンク」は、「異形コレクション」で既読の傑作。「妻への三通の告白」も、佳作。ネタには触れないが、この構成は「瓶詰の地獄」(夢野久作)に似ている。超特選が、「獣の記憶」! そうか。多重人格物は、こういう処理も可能だったか。

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*2001年07月03日:「レッドオマンGO!」ゲット


 Yahoo! BB から、ADSL接続サービスの本申込の受け付け開始メールが来てしまった。困った [;^J^]。まだ、心の準備が出来ていないというのに..とりあえず付和雷同で予約するだけして、あとは回りの様子を伺いつつ(人柱ウォッチングを行いつつ)、大きな流れに身を任せて行くつもりだったというのに..(← これが大人の処世術。)

 「スーパー源氏」で発見・発注していた、「映画ファン 1977/04号」が届いた! 長年、探していたのだ。ようやく、手に入った。これには、吾妻ひでおの単行本未収録作品「レッドオマンGO!」が掲載されているのであった。(予想どおりの駄作であったが。[;^J^])

 その存在を知っていながら実物未見、という吾妻作品は、これでもう、ほとんど残っていない。「チャンスくん」(テレビランド 73/06号)、「ちびママちゃん」の単行本未収録エピソードの一部(月刊少年チャンピオン 77/09,77/10,77/11号)、及び、謎の「吾妻ひでおの爆笑劇場」(月刊プレイコミック 79/07号?)くらいのものである。(無論、未知の作品は、まだ残っているだろうが。)また、単行本等で読んでいるものの、初出誌にアクセス出来ていない作品が、これら以外に、あと85本くらいある。これでも、手塚治虫の残存調査案件に比べると、桁外れに少ないのである。

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*2001年07月04日:「山尾悠子作品集成」


 積読の山から、「山尾悠子作品集成」(国書刊行会)を片付けた。(さすがに、数日間かかりましたが。)極めて寡作な作家であり、この1冊で、ほぼ全貌を見渡せるのだ。(全作品が収録されているわけではないが。)ちょっと高いけど、お薦め。

 やはり特選は、既読の「遠近法」。「遠近法・補遺」も、良い。作者自身によって、ボルヘスの「バベルの図書館」やロマーノの絵画が霊感源であることが明らかにされているが、(正確には、ロマーノにインスパイアされて書き始めてから、ボルヘスを読んで(ネタ=イメージが被っているので)仰天してしまったらしいが、)私は、ジョン・マーティンやパリ幻想派の絵画群も想起する。実際、ジョン・マーティンらの作品の空間は、しばしば途轍もなく巨大で、それは、閉塞宇宙である「遠近法」とは、一見結びつかないのだが..その“無限の感覚”が、近しいと思うのである。

 同じく既読の「夢の棲む街」。昔々、SFマガジンで初めて読んだ時には、「なんか、気色の悪い想像力だな..」、と、どちらかと言えば“悪印象”を抱いたものであるが、今回、久々に読み返してみて、細部まで実に良く記憶と一致していることに驚いた。つまり、奥深いところに憶えさせられていたわけであって、私の負けである。(いや、勝ち負けの問題では。[;^J^])

 未読だった作品では、「透明族に関するエスキス」が、ピカイチ。この、奇妙な生き物たちは、実に良い。こんな街に住みたくはないけどね。[;^J^]

 「破壊王」連作からは、「夜半楽」が特に良い。「童話・支那風小夜曲集」「眠れる美女」も佳作。他、「月蝕」「ムーンゲイト」「シメールの領地」「街の人名簿」「巨人」「蝕」「黒金」「支那の禽」「菊」「傳説」「月齢」「ゴーレム」など。

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*2001年07月05日:峠茶屋


 いったいコンビニが全国に何万店存在するのか知らないが、私はどうもコンビニに対して、「峠茶屋」的イメージを持っているようなのである。

 そもそもは、学生時代に遡る。卒業する1〜2年前だから、多分1983年頃のことだと思うのだが、当時私が在籍していた東京理科大学理工学部は、千葉県野田市にあり、これは、JR(当時は国鉄だったかな)柏駅から東武野田線で4駅目の「運河」駅の前にあった。ど田舎である。下宿先もここであった。

 運河駅から柏駅まで、電車で15分くらいのものではなかったかと思うが、私は柏まで出る時、しばしばこの距離を“歩いた”。別に電車賃が無かったわけではなく、単に歩くことが好きなのと、暇だったからである。2時間ほどもかかったろうか。国道何号線か忘れたが、交通量は多いがほとんど人通りの無い郊外の道を、柏方向へてくてくと歩く..

 柏の町並みに入る少し前に、その広い道は長い下り坂になるのだが、その坂の上に、当時はまだ出始めだった(と記憶する)コンビニがあった。ここに着く頃には流石にいくらか疲れているので、コーヒーを飲んで一服して雑誌を立ち読みし、暑い季節であれば、冷房の効いた店内でしばし涼をとって鋭気を養ってから、最後の坂を下りていったものである..だから、峠茶屋。

 現在の通勤経路にも、「峠茶屋」はある。車通勤なのだが、工場の2キロほど手前で長い坂を下りる。その坂の「手前」に、やはりコンビニがあるのだ。毎朝ではないが、週に2〜3回は出勤時に立ち寄って、週刊誌のチェックをしたりペットボトルの飲料を買ったりしている。

 実は、坂の「手前」といっても、下り坂が始まる地点まで、600メートルもある。徒歩だと「手前」どころではないが、車を運転していると「手前」なのである。てくてくと歩き続けた学生時代に比べて、この“距離感”自体が“堕落”していると自覚してはいるのだが..今では、2時間も歩く元気(というより、心の余裕)は、もはや無い..

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*2001年07月06日:歓送迎会


 久々に、自部署の歓送迎会に出席する。ここ1〜2年、なぜか(事前に決めていた)私の用事とバッティングして、参加出来ずにいたのである。今日も、実は有休を取って日比谷図書館に行く予定だったのだが、あとから歓送迎会がセッティングされたので、有休&日比谷図書館は月曜日に回したのであった。

 Aという店で、しゃぶしゃぶの食べ放題。ここへは、徒歩でも40分そこそこだが、バスを併用して、20分くらい。あとさき心配せずにたっぷり飲めるのは、有り難い。

 宴が果ててから、どこぞで二次会をしていたのかも知れないが、私は徒歩で「赤ちゃん」へ。(5分位の距離なのだ。)カウンターで、初対面のNさんと幻想交響曲の話など。明日のこともあるので、ほどほどの時刻で切り上げて、徒歩で帰宅。

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*2001年07月07日:リブ100の液晶交換


 7:14のひかりで、2ヶ月ぶりに国会図書館。調査案件は、手塚治虫関連と吾妻ひでお関連、両方である。

 吾妻関連は、「4色カラーで発表された、単行本未収録作品」のカラーコピーの取得が中心。(従来、コピーをゲットしている場合でも、全てモノクロだったのである。手元に置いておく“資料”としては、ちと問題ではないか、と、考えを改めた次第。)これには、新発見の、


図解 世界各国のゲーム事情:2:ファミコン通信:1991/01/11

 ..も、含まれている。(この作品の存在に気が付いたのは、ヤフー・オークションに出品されていたから。落札しなかったのは、既に結構な価格に騰がっていたし、それほどレアな雑誌でもないので図書館でコピー出来るだろう、と、判断したからである。)

 これは、世界12ヶ国の「ゲーム事情」を絵解きしたもので、恐らく、別のライターが書いた原稿にイラストを付けたものである。“恐らく”、というのは、この記事にはライター名もイラストレーター名もクレジットされていないからだが、しかし明らかに、(91年頃の、いささか緩んでいる)吾妻ひでおの絵なのである。

 手塚治虫関連は、地道な「つぶし」作業。主として、最近Nさんから送られてきた資料の、データ未確定分の裏付け調査である。よって、めざましい新発見は無いのだが、この、地味で地道で単調な作業こそが、信頼性の高いリストを作るための基本なのだ。

 やや早めに切り上げて、久々に渋谷のタワーレコードへ。LSO(ロンドン交響楽団)が自前でレーベルを持ち、自分たちのライヴをCD化し始めているのだが、その中に、コリン・デイヴィス指揮する「トロイアの人々」(ベルリオーズ)が含まれており、かつ、現在タワーでは格安のスペシャルプライスで入手出来る、という情報をキャッチしていたからである。

 ..残念ながら、売り切れていた。次回入荷日程も、未確定。しかし、同じレーベルで、やはりコリン・デイヴィス指揮の「ファウストの劫罰」(ベルリオーズ)があったので、これは確保..その隣に、妙なCDを発見。同じく「ファウストの劫罰」だが、フルトヴェングラー指揮するルツェルン祝祭管弦楽団のライヴ。メフィストフェレスが、ハンス・ホッター..こんな盤、あったっけ? ウラニアレーベルだから、海賊盤のわけは無いが..そもそも、フルトヴェングラーとベルリオーズには、ほとんど接点が無いはず。「幻想交響曲」の録音すら、存在しないのである。恐いもの見たさ(聴きたさ)で、もちろんゲット。

 ちなみに、私にとって「ファウストの劫罰」こそ、ベルリオーズの最高傑作にとどまらぬ、西洋音楽史上の最高傑作なのである。この件について語り出すと止まらないので、日記では一切省略するが、お暇ならば、「新・ベルリオーズ入門講座 第6講 劇的物語 ファウストの劫罰」参照のこと。「孤島の1枚」という言い方があるが、私にとってはそれどころではない、「人生最後の1曲」なのだ。もう、あと1曲しか聴けない..聴いている時間が無い..そのとき私が選ぶのは、確実にこの音楽である。

 閑話休題。

 秋葉へ転進。

 チチブ電機で、リブ100の液晶交換である。

 徐々に不良化が進んでいた液晶であるが、とどめとばかりに、ど真ん中に白い横線が現れた次第は、既に述べた。さすがにこれでは使えない。東芝サービスに修理依頼すると、ひと財産無くなる。そこで、自力で部品交換、というわけ。チチブ電機以外に入手できるチャンネルがあるのかどうかは知らないが、とにかくこの店では、3万8千円(税別)で購入できる。

 注意しなくてはならないのは、この店では「部品」を売っているだけであり、交換サービスはしていない、ということである。(メーカーとの契約で、そうなっているのではないかと推測しているが、本当のところは知らない。)さらに、「新液晶」を売る際に、「旧液晶」を回収するのである。つまり、お客は予め、自分で外して持っていかなければならないのだ。

 現実問題、自宅でそこまでは出来ない(出来なかった)客が多いであろう。そもそも外し方を知らない場合もあるであろう。私もそう。だから、取り外さずにチチブに持ち込んだ。

 この場合、店の片隅を貸してくれる。「そこで外しといて下さい」、というわけ。(これなら、店側が交換サービスをしたことにはならない。)しかし、外し方を知っていれば、苦労はしないのである [;^J^]。プラスドライバーを手にして困っていたら、さりげなく、「どこかを剥がすと、プラスドライバーが使えるかも..」ってな感じ [;^J^]。この程度の(助言とは言えないレベルの)ヒントとドライバーの貸与が、店側の出来る限界 [;^J^]。

 ま、結論としては、無事に取り外せたし、それをレジに持っていって、引き替えに新液晶を購入。さきほどのエリアでリブ100に装着して、動作確認成功! それはいいのだが、ここでリブ100の開腹手術をしていると、他のお客さんからは店員であるかのごとく見えるようで、なにかと質問されたり [;^J^]。私も客です、と、答えたら、今度は私の作業をじっと見ていて、公開手術モード [;^J^]。金取るぞ、こらっ [;^.^]

 とにかく、リブ100ならではの美しい画面が復活して、大感激。大容量バッテリーも(今現在、3本ストックがあるのだが、1本、ヘタリ始めているので)1本、追加購入。後継機が出る気配は無いので、まだまだ当分、頑張ってもらわないとね。

 すぐ近場の石丸ソフトワンに寄って、LSOライヴの「トロイアの人々」を探すが、そもそも石丸には入荷していないことが判明。タワーの再入荷予定も見えないし、しゃあない、ネット通販で買うか。

 ソフトワンの2階のDVD売場も、軽くチェック。あ〜あ、アダルトDVDが大増殖。まぁ、いずれはこうなるわなぁ..(わざわざ“そこ”に行かなければ、そんなことには気が付かない(偶然、目に入るような場所ではない)ですか。そうですか。[;^J^])

 横浜の実家に帰省。

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*2001年07月08日:Tさん宅単行本サルベージ


 9:24のバスで、Tさん宅へ。(中山駅前10:00待ち合わせ。)

 既にほとんどのチェックは終わっている。(といっても、「これまでに蒐集された分については」、であるが。)本日の主要案件は、「これまでにチェックした単行本の書名の確認」、である。

 「なんのこっちゃ」、と思われたであろう。説明する。

 手塚治虫の単行本のチェックをする理由は、ただひとつ。そこに、作品本体以外の「まえがき/あとがき」「描き下ろしのオマケ」などが無いかどうか確認するためである。そしてこれまで、Tさん宅にある単行本は片端からチェックしてきたのだが、私の調査ノートには、それらの「新ネタが掲載されていた」単行本のデータは記されていたが、「新ネタが掲載されていない」単行本については、記録が残っていなかったのである。ありがちなことである。

 やはり、どれとどれが「未見の単行本」であるのか、確実に把握しておく必要がある。例えば「現代マンガ図書館」の蔵書目録を見て、「もしかしたらこれは未見かも」、と、請求して、実はチェック済みだったりすると、痛い。時間も無駄だし、現代マンガ図書館では100円/冊かかるのである。

 そこで、「手塚治虫全史」の巻末の単行本リストから、これまでの調査記録によって「これは確実にチェック済み」と判定できるものを削除して行き、最終的に、「確実に読んでいない書名」、及び、「読んでいる可能性が高いが、記録も無いし確信を持てない書名」の和集合のをリストを作ったのである。201冊あった。

 以上、(例によって)背景説明が長くなったが、このリストから、Tさん宅の書架にある(すなわちチェック済みの)単行本を削除して行き..なんと、残ったのは、僅か17冊。つまり、「ほとんど全ての単行本がチェック済みだった=ほとんど全ての単行本がここにある」ことが判明したのだ。残存17冊のほとんどは、ごく初期の極め付きのレアなものである。

 誤解の無いよう申し添えておくが、例えば「ジャングル魔境」とか「月世界紳士」とかの初版本があるわけでは無い。これらは、のちに青林堂や名著刊行会などから刊行された「復刻版」で所有されているのである。極道マニア諸氏は「なぁんだ」と仰るかも知れないが、資料的には、これでなんの問題も無いのだ。これらの「復刻版」は、表紙・裏表紙はもちろん、奥付にいたるまで精確に再現しているからである。

 上記の作業に加えて、新規追加資料などの若干の調査を行い、やはり早めに実家に帰宅。(明日は有休取得済み。)

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*解説


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jul 11 2001 
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