ミッドナイト:SCENE 10

SCENE 9から続けて読むこと)

 蒸し焼きにされつつある、ミッドナイトの追憶。

 彼は車を徹底的に改造し、愛人であるかのごとく、大切にして来た。そんなある日、ミッドナイトは、人間の娘に初恋をした。

 ファミリーレストランのウェイトレスだった。念願の海辺でのデート。しかし、ミッドナイトが目を離している隙に、車が暴走して、彼女をあわやひき殺すところだった。彼女の機嫌が直った頃に、もう一度車に乗せたところ、今度はハンドルが動かなくなり、大事故を起こした。ミッドナイトは無事だったが、恋人は植物人間になってしまったのだ。

 犯人は車だったが、車を廃車処分にすることは、どうしても出来なかった。今、死にかけているミッドナイトは、悟った。車は彼と心中しようとしているのだ! ミッドナイトは叫ぶ! 俺を愛しているのならば、助けを呼べ! その時、奇蹟が起こった。突然、車のクラクションが生き返り、大音響を発したのだ!

つづく


*「ミッドナイト 4」(秋田文庫)


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Aug 18 1996 
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