*2002年12月23日:ウィーン美術史美術館名品展
*2002年12月24日:ウェアラブル時代
*2002年12月25日:不吉? [/_;]
*2002年12月26日:手帳 VS PDA
*2002年12月27日:ネットは正しく使いましょう
*2002年12月28日:暗唱の美徳
*2002年12月29日:「ナイト・ソウルズ」「カッティング・エッジ」
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*2002年12月23日:ウィーン美術史美術館名品展


 ときわホテルで起床。今日のプランを考えていなかったので、「展覧会案内」にアクセスして、上野の東京藝術大学大学美術館で開催されている「ウィーン美術史美術館名品展」をピックアップ。今日が最終日である。

 東京駅の銀の鈴の大型コインロッカーにシンセ等を放り込み、駅構内で(廉くて不味い [;^J^])ラーメンで腹ごしらえをしてから、上野へ。

 ハイライトは、やはりベラスケスの「青いドレスの王女マルガリータ」であろうか。これは、ちょっと見には「細密画」に見えるのであるが、よくよく見ると、衣裳や装飾品の「極めてリアルな輝き」は、大胆な筆遣いでググィッ、と、ほとんどひと筆、走らされているだけなのである。もの凄い技術である。

 ヤン・ブリューゲル(父)の「青い花瓶の中の花束」は、これとは対極的な「細密画」。百合科(?)の花の花弁の精緻な模様は、ほとんどシュルレアリスム絵画のデカルコマニーに近い。アルチンボルドの「冬」と「水」が来ていたのも、嬉しい発見。

 ルネサンスからバロックに至る「肖像画」をメインに展示しているのだが、順路の最後の作品が、ヴァルトミュラーによる「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの肖像」というのは、なかなか洒落ている。

 現代マンガ図書館に回って、若干調査。銀の鈴に戻ってシンセ等を取りだしてから、少し早いがこだまで浜松へ。

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*2002年12月24日:ウェアラブル時代


 一昨日の朝日新聞に報道されていたニュースだが..米当局いわく「米国向けのスーツケースに鍵をかけるな」、とは、何事だ。

 要は、テロ警備の強化ということで、航空機に持ち込まれるスーツケースや荷物は、全て開けて調べる。鍵がかかっていれば、壊してでも開ける。だから、壊されたくなければ鍵をかけるな、ということらしいのだが..

 筋は通っているが、まさにギャグである。こともあろうに米国内に、鍵のかかっていない荷物を送れとさ。壊されるのを取るか盗まれるのを取るか、究極の選択というわけだ。(壊されるのを覚悟の上で、「丈夫で廉い」スーツケースと鍵を、フライトごとに「使い捨て」にしていく、という“解”もありそうだ。)

 しかし、「困った時」こそ、ビジネスチャンス。

 要は、(少なくとも米国内に向けては)スーツケースには「盗まれても惜しくない」ものしか入れることが出来ない時代が到来した、ということである。じゃあ、その他の荷物はどうする? 「全部身につけて、客席に持ち込めばいい」..つまり、超小型化すればいいのだ。

 もちろん、個々のものは今でも(十分)小型化されている。PC、デジカメ、携帯電話、ビデオカメラ..しかしこれらを全てポケットに入れられるか、というと、まだまだ..特にPCの場合、本体は十分小さくても、バッテリーだのメディアだのケーブルだのの周辺の小物を合わせると、非常に嵩が張るものなのである。これらの台数を減らすための複合機化も、さらにすすめる必要が有ろう。PC機能とビデオ機能とTV機能とデジカメ機能を携帯電話の筐体に押し込むぐらいのことは、すぐにもできそう(というか、ある程度実現されている)だろうが、そのPCのOSがWinXPかというと、まだそこまでは行っていないだろう。大体、客先で(プレゼン等に)使えなければ、PCを持っていく意味は無いのである。(携帯の画面でプレゼンすると、確かに受けるとは思うよ、10秒くらいは [;^J^]。すぐに気まずくなるだろうけどさ。[;^.^])

 書籍や書類の問題も重要である。嵩張るし重い。誰もが簡単に思いつく解としては、スキャンして(例えば)PDF化して、ビューアーで読めばいいのである。問題は、そのスキャンに手間がかかり過ぎることである。(“時間”がかかるということは、すなわち“金”がかかるということである。)書類の数十枚程度ならともかく、書籍数冊となるとね。ビューアーの品質(と大きさ)も重要だ..

 ..しかし、あなたに簡単に解決できない問題は、他人にも簡単に解決できないのである。先にやったもん勝ちである。チャンスである。

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*2002年12月25日:不吉? [/_;]


 おぃおぃ、勘弁してくれ..靴紐が、また切れたよ。[/_;]

 この前、靴紐が切れた(ので買い直した)のが、去年の4月であるから、単純に「耐用年数(寿命)」を考えると、「そんなものかな..」、であるのだが..釈然としないのは、「ほとんど全く負荷(ストレス)がかかっていない」のに、何故切れたのか、ということなのだ。

 早い話が、この20ヶ月間、「ただの一度も締め直していない」のである。引っ張ってもいない、結んでもいない。つまり、限りなく「使用していない」状態に近い。それなのに、「結び目とは全く関係ない場所が、自然に切れた」のである。おっかしいなぁ..風雨にさらされていたには違い無いが、気候が穏やかな浜松で履き続けていたのであるから、さほど風化するとも思えないんだがなぁ..

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*2002年12月26日:手帳 VS PDA


 能率手帳の2002年度版から2003年度版への引継処理を行っている。アドレス帳の差し替えはもちろん、普段能率手帳に貼り込んでいる各種資料(バスの時刻表なども含む)を更新して貼り直すなど。

 随分、原始的なことをしていると思うでしょ? さっさとPDAに完全移行しろよ、と、思うでしょ? もちろん、あなたが正しいし、PDAを(リブ100に加えて)持ち歩くことに、否やはないのだが..PDAは「手帳」を完全にリプレースすることはできないのだ。

 早い話、なにかをさくっとメモる時、これは絶対に紙とボールペンの方が速い。「そこまですぐに書き込めなくてもいい(ちょっと時間をかけてじっくり書けばいい)」場合は、今度は(数十秒かけて立ち上げた)リブ100の方が、エディタ環境は比較にならないほど優れているわけだ。つまり、少なくとも「筆記」に関して言えば、今のPDAは実に「中途半端」なのである。

 また、日常的なインプット/アウトプットは、「紙(あるいは“紙的なもの”)」であることが、非常に多い。例えば、雑誌を読んでいて気になったページを破りとってはさみこむ、あるいは貼り込む。他人に(地図などを書いてもらうために)手帳のページを千切りとって渡す。ポストイットを常時携帯しなけばならないことは、言うまでもない..これらは必ずしも「手帳」を持ち歩かなければ実現できないことではないが、もしも「手帳」を持ち歩かないのであれば、そのかわりに「カードフォルダー」「小物入れ」のような小道具を持ち歩く必要があるわけであって、そんなことなら、「手帳」の方が、応用範囲(カバーできる仕事)が広い分、便利なのである。

 結局、現状では、PDAを導入しようがしまいが、相変わらず手帳も携帯し続ける必要がある、というわけだ。

 もちろん、アドレスメモとか時刻表とか乗換案内とかの用途には、PDAの方が手帳よりもすぐれていることは言うまでもない。(リブ100でも問題なく出来る作業であるが、起動時間が比較にならない。)だから、あと、そうだな..デジカメ内蔵、デジタルビデオ内蔵、TVチューナー内蔵は当然として、これらに加えてスキャナー機能(カラー・300dpi程度でOK)を内蔵して、現行の一般的なパームOS機程度の大きさだと、かなり購買意欲がそそられるんですけどね。(ちなみにスキャナーの使い勝手ですが、ハンディスキャナー型はNG。ディスプレイの上に紙を置いて、スイッチを押すだけ..最低限、デジカメの「接写」感覚でなければ、使い物になりません。)..もしかして、既にありますか?

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*2002年12月27日:ネットは正しく使いましょう


 とある方から、メールをいただいた。先回りして結論から言うと、ちょっと困った内容のメールだったので(私にしては、精一杯 [;^J^])やんわりと指摘して差し上げたら、ただちにご理解された旨、返事をいただいたので、この件はケリがついている。但し、一般論としてケーススタディとして取りあげる価値はあると思うので、ここで俎上に上げさせていただくのである。他意は無い。

 その方は小学校の教諭で、国語の授業の最初5分程度を暗唱テストに当てており、少ない子で10、多い子で32程度の詩文を暗唱しているとのこと。まず、このこと自体は、非常に素晴らしいと思う。名文を暗唱するというのは、国語教育の王道である。私は無条件に感心した。

 ただ、ここからが問題で..さらなる暗唱詩文として「雨月物語」を選んだのだが、読み方があっているのかどうか、自信が無い。そこで、私(倉田)に見ていただきたい..と、その個所の原文と読み方をメールされてきたのだが..

 ..これは、いけません。これは、ダメです。インターネットの使い方を間違っています。

 まず、仮に私に添削してもらえたとして..どうしてそれを「信用」することができるのか。私に白羽の矢が当たった理由は、恐らくサーチエンジンで検索してヒットしたからであろうが、(「怪談入門読破リスト」の下に「雨月物語」のページがある、)それは私の「素養」を担保しない。ま、私の(間違っているかも知れない)言葉(判断)をご自身で信じられるのは、ご自由だが..それを生徒に教えちゃいかんでしょう。

 次に、質問の仕方がまずい。暗唱詩文集に収録する個所のふりがなのみ、質問されているのだが、これでは全く応用がきかない。「先生、次のページも読んで!」、と、子どもたちにせがまれたらどうするのだ。[;^J^]

 だから結局、インターネットで検索するのであれば、個人ページなどではなく、新刊書店なり古書店なり図書館なりのサイトで、「雨月物語」の参考書自体を検索して、それを入手(閲覧)すべきなのである。いくらでもヒットするはずだ。但し、書名や説明文だけからでは、「総ルビ」かどうかは判らないことも多いであろう。だから、ここまで追い込んだ上で、その手の情報を掴んでいるかも知れない個人(例えば私)に、「以下のn冊のうち、全文に振り仮名がふられているものがあるかどうか、ご存知ありませんか?」、という質問をするのなら、まだ筋がとおっていたのである。

 以上、情報探索にあたって「ショートカット」するのは、しばしば(多くの場合)得策でない、という実例であった。

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*2002年12月28日:暗唱の美徳


 先週だか先々週だかの「PC USER」誌の編集後記から。


ブレードランナーのDVDを店頭で見かけ、安かったので購入。クライマックスでの誤訳(意訳?)が気になり、字幕を消して見ていたが台詞がすらすらと頭の中に入ってくる。いつの間にこれほど英語力が上達したのか、とびっくりしたが、単に台詞を記憶しているだけということに気付く。

 ..すっごく、ありがち。[;^.^]

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*2002年12月29日:「ナイト・ソウルズ」「カッティング・エッジ」


 この2〜3日で、積読の山の底から洋物のホラー・アンソロジーを2冊、片付けた。(まとまった読書時間を確保できない生活をしていると、どうしても短編集が主体になる。)

 「ナイト・ソウルズ」(J.N.Williamson 編、新潮文庫)と「カッティング・エッジ」(Dennis Etchison 編、同)。いずれも、10年も前に出たものであるが..特に後者の水準の高さに驚かされた。これに比べると、「異形コレクション」もまだまだ..というのが正直な感想である。

 まず、「ナイト・ソウルズ」。特選が、「ささやかな愛を」(ロバート・ブロック)、「ワードソング」(J・N・ウィリアムスン)。佳作が、「ソフト病」(F・ポール・ウィルソン)、「廃車置き場」(ウィリアム・F・ノーラン)、「代理教師」(ゲイアン・ウィルソン)、「モーリスとネコ」(ジェームズ・ハーバート)、「ポプシー」(スティーヴン・キング)、といったところ。「夜襲部隊」(ロバート・R・マキャモン)も悪くない。

 しかし、「カッティング・エッジ」は、さらに素晴らしい。必ずしも粒よりというわけではなく、外れ(というか、私には面白さも恐さも理解できない類の作品)も含まれているのだが、圧倒的な印象を残す作品がいくつも収録されているのだ。

 なんといっても凄いのが、「手」(ラムジー・キャンベル)である。この“地獄巡り”の“ビジュアルな皮膚感覚”のもたらす恐怖は、比類がない。次に凄いのが「ブルー・ローズ」(ピーター・ストラウブ)。ギスギスした家庭環境の中での弟虐め、という、これ自体はありふれている“小さな地獄”が、催眠術による“真に地獄的な悲劇”へと至るのだが、驚くべきは終章、この悲劇(弟殺し)の“犯人”であり、断罪されず悔い改めず、自分の“犯罪”自体も忘れて“健全”に成長したとおぼしき男の、恋人に宛てた“明るい”手記である..この短編は、何かもっと大きな物語の一部であるらしいのだが、まことに忘れがたい鮮烈な読後感を残す。

 「死の収穫者」(ロバート・ブロック)もまた、素晴らしい。「毎年(自分の身代わりに)ひとり殺すことによって、次の一年間を生き延びることが出来る」、という契約を死神と結んでしまった男が、“良心の呵責無しに殺せる(罪深い)人間”を完全犯罪で殺すことを試みるのだが、毎年、手違いによって、罪のない人間を殺してしまう..という設定の妙。結末の切れ味はいまいちだが、問題にならない。「とぎれる」(チェルシー・クイン・ヤーブロ)も、高水準の傑作である。

 その他、「いじめ」(スティーヴ・ラズニック・テム)、「やつらの目あては」(レス・ダニエルズ)、「最後の石」(ウィリアム・ノーラン)、「怪物」(ジョー・ホールドマン)、「空隙」(カール・エドワード・ワグナー)などなど、「これぞ、モダンホラー!」と叫びたくなる佳作が満載。お薦め。

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*解説


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jan 1 2003 
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