1997年05月05日:詩人とコピーライター 1997年05月06日:黄金時代のガラスの城 1997年05月07日:井戸の底のぬるま湯 1997年05月08日:「明るい館の秘密」 1997年05月09日:酒の容器、2題 1997年05月10日:居酒屋Yの謎 1997年05月11日:「大伴昌司コレクション」目次へ戻る 先週へ 次週へ
(SF)作家になり得たかも知れない才能あるクリエイターが、アニメやゲームの世界に行ってしまう、という((SF)作家側の)危機感について先日書いたが、その時々で勢いのある分野に、若者が身を(人生を)投じるのは、当然のことである。
例えば15年(20年?)ほど前には、「これまでならば詩人になったであろう青年たちが、みな、コピーライターになってしまう」と嘆かれたものだ。確かに、きょうび詩人になっても..
ゴールデンウィークは、今日まで。手荷物もあることだし、東京に出ることはせず、新横浜からこだまで浜松に帰る。
目次へ戻る(以下の考察は、職場の後輩から聞いた話がヒントになっている。)
現在では価値観が細分化されている。それは単に情報が多いからだけではなく、「自分が求める、自分にとって“心地よい”」情報へのアクセスが、極めて容易になったからだ。情報だけではない。インターネットやパソコン通信で、“同好の士、あるいは同じ価値観を持つ人やグループ”を、実にたやすく見つけることが出来る。
つまり、異なる世界を理解しようと努める必要がなくなったのだ。
今とは異なり、社会や人間関係が狭かった時代には、相手の好みに合わせる、相手が好きなものを自分も好きになろうと努める、あるいは、相手を自分の好みに従わせようとする、といった、(良い意味での)社会的な“摩擦”が、確実に存在していた。私も身に憶えがある。SFやら幻想絵画やらベルリオーズやらを、「それのどこが面白いわけ?なんの価値があるわけ?」と言う顔をしている(いや、それならばまだよいのであって、多くの場合、全くなんの反応も示さない)友人たちに、必死になって“布教”してきた。布教せざるを得なかったのだ。同好の士がいなかったのだから。大変なエネルギーを必要とすることであり、何度もくじけそうになったが、しかしこれは同時に、非常に実り多い“訓練”でもあった。
相手の世界を努力して理解することによって、自分の世界が確実に広がるのはもちろん、自分の世界を相手に伝えるためには、その世界を、自分の中で確固たるものに高めなくてはならない。誰よりも深く理解しなければ、愛さなければ、到底、伝道できるものではないのだ。
こんにちでは、そのような努力をしなくても、気の合う、話の合う連中を、日本中、いや世界中から調達することが出来る。これはもちろん、素晴らしいことである。しかし同時に、かつての“血反吐を吐くような努力”は必要なくなり、より浅い理解、より薄い愛情にとどまる機会が、圧倒的に増えてしまった。その程度の理解や愛情でも“楽しくやっていける”からである。しかしその“楽しさ”は、“戦いを通じて勝ち取ったものでは、ない”のだ。
そういう時代なのだ。だれもが安易に、自分の世界と“自分の社会”を持つことが出来る時代..その“涙無しに”作られた世界と社会は、ただの一撃で崩れるほど、脆いものであろう。
目次へ戻る昨日述べたことと関連する話題である。
これは別にインターネットやパソコン通信に特化した問題でもないのだが、特にこれらの世界で目障りな存在として、“環境に過剰適応”してしまった人々がいる。
例えばネットニュースの、あるニュースグループ。あるいはニフならば、特定のフォーラムや会議室。さらにはメーリングリスト。なんでもいいが、どこかに“居心地のいい場”を見つけてしまって、そこから出て行かない人々である。いや、出て行かない分には、誰にも迷惑はかけないのだが、何もかも、その“場”で解決しようとし始めたら、これはもう明らかに、邪魔である。
他にオフラインミーティング専用の連絡会議室があるのに、(例えば、本来アカデミックな議論をするための会議室で)打ち合わせをする、などというのは一番ありふれた例で、それこそ雑談から、全く関係ない(より相応しい“場”が、しかるべきところに用意されている)議論から、果ては人生相談に至るまで、その、自分の“ホームグラウンド”で、すませてしまうのだ。
そして、何かの拍子に“外の世界”に出たときに、そのあまりの居心地の悪さ、風の冷たさに驚いて、生温い井戸の底に逃げ帰って来るのである。
目次へ戻る大荒れの天候である。靴の損傷は、既に“穴”ではなく、完全にめくれあがった鰐口状態。もはや漫画である。10メートルと歩かぬうちに、靴の中は沼沢地と化す。
さすがに、居酒屋のTにも飽きてきた。不味さをカバーする廉さが取り柄だったが、この春のメニュー改定で結構値上がりして、単に不味いだけの店になってしまった。机が広いのと、(概して半年ともたずに替わる、おそらく学生アルバイトの)ウエイトレスに、可愛い娘が多いというメリットはあるのだが。
すぐ隣のHという店に入ってみた。廉くはないが、ま、普通のプライスだ。それほど高い訳ではない。(目先が変わったせいもあろうが)料理はTよりかなり美味い。「えのきと鳥のチーズ焼」が、なかなかのもの。美味しい酒も揃っている。
しばらく、ここを贔屓にしよう。
(..この日記を読んでいると、毎日毎晩、とっかえひっかえ、あちこちの居酒屋(等)で酒を飲んでいるように見えるかも知れないが、実はその通りなのである。)
雪中梅を飲みながら、「創元推理 No.15」掲載のエッセイ「明るい館の秘密」(若島正)を読む。「そして誰もいなくなった」の“叙述トリック”を解析している、読み応えのある論である。一般に、犯人当てが不可能であると見做されているこの作品には、実は作者によってフェアな伏線が張られているのだが、たった一個所の“誤訳”によって、その手がかりが失われてしまったのだ、という、驚くべき指摘がなされている。
目次へ戻るさて、リブレットは、いつ送り返してもらえるのかな、と、東芝テクノセンタに督促FAXを入れる。
今日もHへ。ここでは日本酒(吟醸酒)を注文すると、球形の素敵なボトル(容量は一合位か?)で出してくれる。別に珍しいものでもない。説明しにくいが、縦に輪切りにすると、断面が肉厚の“C”型になり、中央にくびれ込んだところに氷を入れておけるものである。ほどほどの冷たさを維持できる形状なので、自然にゆっくりと飲む、という効果もある。
それで思い出したが、例えば居酒屋E。あそこも美味い酒が揃っているのだが、それの注ぎかたがもったいない。グラスをオーバーフローして、受け皿にじゃばじゃばこぼれ、この受け皿からも溢れそうになるまで、注ぐのである。
で、いつも気になるのが、この受け皿にこぼれた分は、呑むものなのかどうか、ということなのである。私は、言うまでもなく、もったいないので呑んでしまうが。(別にテーブルにこぼれたわけじゃないし。)
目次へ戻る「3月上旬まで改装のため休店」と張り紙しながら、3月下旬になっても、全く改装もせずに店を閉めたまま(戸口から覗くと、いつもの閉店直後の状況と、ほとんど変わらぬまま)放置されていた、居酒屋Y。それから2ヶ月近くたち、いよいよネオン看板の外装が外れ、中の蛍光燈がむき出しになり始めた。これまでだな..と、乗り付けてみたら、呆れたことに、ドアの張り紙は、「閉店の挨拶」ではなく「3月上旬まで休店」のままなのである。つまり(閉店するのだとして)全く事後処置をしていないのだ。
不審尋問は覚悟の上で、戸口からだけではなく、駐車場から回り込んで、窓から中を覗いてみた..何もかもそのまま。さすがにテーブルの上は片づけられているが、椅子がテーブルの上に上げられていない。つまり、通常の毎日の営業終了後の「閉店処理」も、されていないことになる..そして、奥の座敷を見てみたら..
なんと、コーラやジュースの瓶が、栓を開けたまま並べられている! コップやおしぼりも、雑然と置かれている! まるで営業中に、いきなり“終り”になってしまったかのような..マ、マリーセレステ号!?(違うちがう [;^.^])
あまり人騒がせなことをせず、やめるならやめるで、とっとと取り壊していただきたいものである。
手塚治虫と吾妻ひでおの資料の整理。図書館でコピーした作品や、有志の方に譲っていただいた切り抜きなどが、未整理のままになっていたので、きちんとラベルを付けてファイリング。軽く半日かかってしまった。“未発見”のはずの作品のコピーがあるのを発見したりする。[;^J^]
そしてまた綺麗に整理が出来てしまうと..それに耽溺 [;^J^] してしまうのだ。さすがにファイルを撫でたりさすったりはしないが、吾妻ひでおが、とある「日記マンガ」で活写した、「○月×日、予定表用の白板を買う。3時間かけて予定表を作る。うまくできたので飽かずに5時間ながめる」状態である。
雨が降る度に、足元に沼を持ち歩くのはあんまりなので、靴を買う。
目次へ戻る数日前から、(例によってだいぶ以前に買ったまま積んでいた)「大伴昌司コレクション」(キネマ旬報社)を読んでいる。大伴昌司が監修した、「キネマ旬報」誌の増刊号、「世界SF映画大鑑」「怪奇と恐怖」「世界怪物怪獣大全集」、計3冊のセットである。1967年から69年にかけてのムックであるから、情報はそれなりに古色蒼然としているのだが、ある意味ではこれらのジャンルの黄金時代でもあったわけだ。また、古い作品の情報は、古い資料に限る、という面もある。“必携”とまでは言わないが、実に楽しい読み物である。
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