ACT.36(第4巻 ACT.2)童話作家を乗せたミッドナイト。彼は(その職業に似合わず)ムショ入りしていたらしい、と、ミッドナイトは見抜く。
車を降りた童話作家(南川)は、かつての3人の仲間(北山、西原、東村)と落ち合う。久しぶりの再会である。ここはかつて、彼ら4人が住んでいたコダマ荘があったところ。しかし今では巨大なビルが建っていた。
15年ぶりの同窓会なのだ。児童文学を目指してグループを結成していた、若くて貧しい4人組。しかし、出版社に認められてデビュー出来たのは、南川ひとり。そして彼は、世に出た矢先に、逮捕されてしまったのだ。身に憶えの無いマリファナ密売容疑で..部屋から大量のマリファナが見つかり、1年の実刑判決を受け..そして童話グループは自然解散となり..残る3人は、それぞれ、不動産業、生命保険業、貿易業で、成功していた。
南川は、彼らに新作の童話を配る。彼だけは若き日の夢を捨てず、今でも童話を書き続けていたのだ。感動する3人。さあ、同窓会だ! 不動産業者となった北山が、この巨大ビルにみんなを案内する。なんとこれは、彼が建てたビルであり..そしてコダマ荘が、その内部に、そっくりそのまま保存されていたのだ! 旧友たちへの、最高のプレゼントだ!
歓声を上げてコダマ荘かけこむ一同。しかし南川は、15年前のことを思い出さずには、いられない。どうしてあの時、ぼくの部屋の天井裏に、マリファナがあったんだろう..?
それは真犯人が、自分の部屋から天井裏をつたって、あんたの部屋の上に置いたんですよ、と、例によって [;^J^] あとをつけてきたミッドナイト。プロの売人が天井裏みたいな、すぐバレる場所に隠すもんか、と、ミッドナイトは謎を解きはじめる。
彼は東村の部屋に入ると、柱と壁の隙間にテレフォンカードを差し込み、下向きにスライドさせる..と、柱の下からマリファナの小袋が落ちた..! マリファナの経験のあるミッドナイトは、この隠しかたを知っていたのだ。
南川を羨んでいた東村は、彼に嫌がらせをするために、麻薬を手に入れ、陥れたのだ。しかしまさか実刑になるとは思っていなかったのだ。全てを告白し、俺を警察に突き出してくれ、と涙を流す東村を、南川は、今さら冤罪を晴らしたところで、今よりいいものが書ける訳じゃない。もう気にするな、と、許す。
そして同窓会が終わったあと、ミッドナイトは南川から、お礼として、サイン入りの童話の本を1冊、もらうのだった。
かつて自分を陥れた友人の罪を、その素直な告白を前にして快く許す、という点で、ACT.18の花火職人の話に通ずるところがある。
(細かい話だが、名前が確定しているのは南川と北山だけであり、南川を陥れた男の名前が(西原ではなく)東村であるというのは、前後の文脈からの推定である。)
ACT.37(第4巻 ACT.3)植物人間となって病院で眠り続ける恋人のために、売れ残りのクリスマスケーキを買った、ミッドナイト。浮浪者にけつまづいて、ケーキを潰してしまったミッドナイトは、彼にケーキを分けてやる。感謝した浮浪者は、俺の体をお礼にやろう、今夜あたり神様に召される頃合だから..と、そのまま死んでしまう。面倒を恐れるミッドナイトは、死体を放置して、その場を去る。
病院に着いたミッドナイトを待っていたのは、恋人が死んだという報せ。脳死ではなかったが、心臓が止まってしまったのだ。もうどうしようもない。遺体は既に、ブラック・ジャックのところに送られた(押し付けられた)という。
ブラック・ジャックは、今すぐ心臓を移植すれば、助かる可能性はあるという。5千万円。ローンで良い。死ぬまで収入の5割りを払え。ミッドナイトは承知する。もうひとつ条件。死んだばかりの人間の心臓を持ってこい。ミッドナイトは浮浪者の死体を思い出し、それを運んで来るが、彼の死因は狭心症であった。この心臓は使えない。絶望するミッドナイト。
そのとき、奇蹟が起こった。彼女の心臓が動きはじめたのだ。しいて理屈をつければ、急に気温が下がって、心臓が刺激を受けたか.. ミッドナイトは喜ぶが、ブラック・ジャックは不機嫌である。治療も受けずに勝手に助かる患者に用はない、俺の癇癪が爆発しないうちに、娘とサンタを引き取って、出ていけっ! サンタ..? 浮浪者の衣服に縫い付けられていた名前は、三太であった..
定番のクリスマス物だが、もうひとひねり欲しかった。話が淡々と進むので、奇蹟が余り奇蹟らしくなく、ありがたみが薄いのである。[;^J^]
ACT.24(第4巻 ACT.4)制服警官を乗せた。それだけでも普通ではないが、この警官、どうにも尋常な雰囲気ではない..彼は銃をミッドナイトに突きつけると、タクシーから下ろし、公衆電話から、井上という男に呼び出しをかけさせる。行き倒れの男が井上の名を呼んでいる、という、偽りの内容のメモを読ませたのだ。
言うまでもなく、偽警官である。交番に押し入って、制服とピストルを盗んだのだ。この男は、井上を殺すために九州から出てきたのだ。彼はミッドナイトを殴り、気絶させる。
井上が誘い出されてきた。そして偽警官(山口)は、彼に銃口を向ける。失恋の恨みだ。彼の恋人のゆかりを金で奪ったのだ! 銃が火を吹く直前、気絶から覚めたミッドナイトは、山口を叩き伏せる。そして..
ゆかりは既に、井上と離婚していたのだ。結婚してからもずっと、山口のことを想い続け、寝言にまで彼の名を呼んでいたのだ。彼女が山口の元へ、九州へと飛び立った日は、まさに山口が井上を殺すために九州から飛び立った、その日。入れ違いだったのだ。あと1日のことで、山口は犯罪者となってしまったのだった..
運命の皮肉。(タクシー代がどうのこうのという最終頁は、全くの蛇足なので、内容紹介からは省く。1頁余ったのを埋めたとしか、思えない。[;^J^])
ACT.34(第4巻 ACT.5)異様に小生意気な女児が、今夜の客である。大体、言葉づかいが普通ではない。「そこを曲がってくれたまえ」「待っていてくれたまえ、すぐもどる」。そして立ち腐れの空き家の前で降りると、その廃屋に入っていって“婚約者の小百合”の名前を呼ぶのだ。その家の壁に、女学生姿の小百合の肖像画は架けられているが..それは50年前、昭和14年に描かれた絵なのである..
そこに、女児を探して一団の大人たちが駆け込んできた。彼女がここに来ることは、判っていたらしい。
憑依現象なのだ。前川伯爵令嬢の小百合に恋をしていた白根大尉の霊が、憑いているらしいのだ。彼女はある日突然、自分は白根大尉だと言い出して、凄い力を振るったり、飲んだこともないビールをガブ飲みしたりし始め、恋人の家に行くと言って、この家に母親を引っ張ってきたりしたのだ。
これは、前世記憶か、クリプトムネジアなのだ。前世記憶とは、文字どおり、生まれ変わる以前の記憶を思い出すこと。クリプトムネジアとは、本で読むか人に聞くかした話を、自分の経験だと思い込むこと。この場合は、白根大尉を良く知る人に彼の話を詳しく聞かされ、それが自分のことだという自己暗示にかかってしまった可能性がある。
前世記憶か、クリプトムネジアか、あるいは本当に何かの悪霊が憑いているのか。その謎を解くための降霊実験が始まる..
小百合の肖像画を見つめて、彼女のイメージを掴んだ一同は、手を取り合って輪になり、小百合のことを一心に思い浮かべる..やがて、ポルターガイストが始まり、コップや人形などの小道具が、ジャンプし始める! 仰天したミッドナイトは椅子から転げ落ち..そこでポルターガイストは収まってしまい、小百合の霊を呼び出すには至らず、実験は失敗してしまう。また後日、やり直しだ..
とにかく俺は帰らせてもらうぜ、お嬢さん、いや、白根大尉! 未払いのタクシー代を払いな! 1500円だ!
彼女は財布から1500円取り出し、ミッドナイトはそれによって、彼女が白根大尉の生まれ変わりでは“ない”ということを、証明した。昭和14〜5年当時ならば、この距離のタクシー代は、3円位のものだ! 白根大尉が1500円も払うわけがない! クリプトムネジアだ!
めでたしめでたしなのだが..これでは、ポルターガイストの立場が無いような気が。[;^J^]
ACT.38(第4巻 ACT.6)何かをひいた! 車から降りて調べたところ、それは“既に死んでいた”犬の死骸だった。首輪をしている飼い犬だが、頭を撃たれていたのだ。彼は死骸を路肩に運ぶ。
次の町で、おでん屋に入ったミッドナイト。そこで喧嘩をしているふたりのホステス。家族を捨てて男の元に走ったものの、その男に騙され捨てられ、ホステスに身を落とした女を、同僚がからかっているらしい。捨てられた女は、ミッドナイトが犬の死骸から外して持ってきた首輪を見て、驚く。それは彼女のかつての飼い犬の首輪だからだ。彼女が家族ごと捨ててきたマリオという犬の..
彼女をアパートまで送り届ける車中で、ミッドナイトは..あの犬は、つまんねえ野郎と駆け落ちしたあんたの居所をかんづき、あんたを慕って、ずっと旅をして来たんだろう。しかし、あと少しで懐かしい飼い主に会えるというところで、心無いハンターに射殺されたんだ。これであんたは、見つからずに済んだってわけだ..
アパートに着き、彼女が部屋に入ったちょうどその頃、ひとりの少年がやって来る。足元の誰かに、
「ここなんだね! ほんとにこのアパートかい? マリオ、よくやったぜ!」と声をかけてから、捨てられた女のドアのチャイムを鳴らす。彼女がドアを開けた時、そこにいたのは、捨ててきた息子だった。お前に会えたもんじゃない、もうお前の母さんではないから、お帰り!と泣く母親。お父さんも待っているから、帰ろう、と説得する息子。
彼は、母親の居場所をかんづいて、鎖を切らんばかりに暴れるマリオの鼻だけをたよりに、“ここまで”一緒に旅をして来たのだ。このアパートまで、マリオが連れてきてくれたのだ。おや?マリオはどこに行ったんだろう? たった今、戸口でしっぽを振っていたのに?
ミッドナイトは少年に、よく聞け、お前はひとりでここまでやって来た。少年は、嘘だ! ミッドナイトは母子を車に乗せて、マリオの死骸が眠る街道に連れてゆく。そこで少年は初めて、マリオが死んだことを知り、ちょっと目を離したすきに銃声が聞こえたが、そのあと帰って来てから、吠えもせず食事もとらずに、少年を母親の居場所まで連れて来たマリオは、少年の目にだけ見えていたことを知ったのだった。
非常にスマートな、動物幽霊譚の佳作。
ACT.44(第4巻 ACT.7)名残川に沿った断層地帯を震源地とする強い地震があってから、一ヶ月後。深い霧の夜、その名残川のほとりを走っていたミッドナイトは、怪現象に出会った。
ピッタリとあとをつけて来るヘッドライト。車を止めると、その後続車も、姿を消す。走りはじめると、また現れる。どんなにスピードを上げても、振り切れない..
おでん屋で、タクシードライバーたちの噂話。地震の次の日、あの名残川の橋の下に、子どもの首が転がっていたという事件だ。犯人は捕まっていない。隣で飲んでいた、わけあり風の男は、あの死体はおれの弟だ、その話は二度とするな、と吐き捨てて、店を出る。
同じ店で、彼の話を聞いていたミッドナイトは、その男をタクシーに乗せると、自分が名残川で出会った怪現象の話をする。弟さんが亡くなったのも、名残川に関係しているんじゃないでしょうかね..
ミッドナイトの話から、“深い霧”というヒントを掴んだ男は、ミッドナイトを自宅に招き、彼が謎のヘッドライトを目撃した地点を、地図にプロットさせる。
彼は学者であり、ミッドナイトが目撃したのは、“数秒前の”ミッドナイトの車の姿なのだと言う! 一ヶ月前の地震で、あのあたりの空間に歪みが起きて、時間軸も揺れるという現象が起きたのだ。彼はそれを“時震”と呼んでいた。
ある場所の空間に、過去の時間と現在の時間が、ほんの数秒の差で同時に存在するのだ。そこに立つと過去の自分が見える! ミッドナイトが見たのは、それだ。だから止まって数秒たつと、その車は現在の車と重なって、見えなくなるのだ。
学会に“時震”発生を報告したが、誰ひとり信じてくれず、唯ひとり信じてくれた弟は現場を調べに行き、そこでリーマン空間に体をはさまれ、首だけ残して、体は次元の断層に落ちてしまったのだ。彼は弟の体を取り戻そうと、時震の割れ目を必死に探したのだが、過去の姿は薄くて、日中や月夜でははっきり見えないのだ。なるほど、霧の夜か!
一週間後、濃霧注意報が発せられた。名残川も霧におおわれている。あの学者も出かけているはずだ..危ない! ミッドナイトは急行し、自分の“過去の影”を探している学者を見つける。彼はまさにその時、“時震”の割れ目を見つけたところだった! 弟さんみたいに帰れなくなったらどうする!と、学者を引き止めるミッドナイト。しかし学者は、弟の体を取り戻すのだ!と、リーマン空間に飛び込み、割れた眼鏡と衣服の切れ端を残して、消滅してしまった..
そして警察が動き出した。一ヶ月前に首だけ見つかったA少年の兄、Bが、失踪したのだ。BがAを殺してバラバラにした疑いが濃厚である..先生、帰って来ない方がいいよ..
ムードは悪くはないが..なんとも凡庸なSFである。「ミッドナイト」には、ミステリや怪談の傑作が、いくつもあるが、どうもこの作品世界は、SFとは相性が悪そうだ。
ACT.43(第4巻 ACT.8)女児を乗せた。彼女が紙に書いた行先は、「助けて 中野 清風荘 木村みつ子」。異様である。
そのアパートに行ってみると、木村みつ子は“7年前”に死んだらしい。水商売の女でアル中で、急死してしまったのである。身元引受人もいなかったという。行き掛かり上、ミッドナイトは救急病院を訪ね、木村みつ子の死んだ状況を調べる。(それにしても、「助けて」とはなんだろう..?)彼女は心筋梗塞で、すぐに死んだらしい。そして子どもを産んだばかりだったのだ。その赤ん坊がどうなったのかは、解らない..
ミッドナイトは、この女児を清風荘に置いていくわけにもいかず、元の場所に連れ帰る。彼女は彼に「いっしょに死んで」と言う。ひとりで死ぬのはこわいから。いまはママはいないのだ。いるけどママではないのだ。これだけ捜してもいないのだから、死んだ人の国にママがいるのだ。ミッドナイトは彼女を叱り飛ばすが、そこに彼女の母親が捜しにやって来た。さんざんひっぱりまわされたよ、と、女児の書いたメモを母親に見せるミッドナイト。
また、書いたのですね..と、つらい表情になる母親。これは(あすかという名の)この子の“癖”なのだ。
あすかは彼女が産んだ子では、無い。養護施設からのもらい子なのだ。あすかの本当の母親は、産んですぐ心臓発作で死んだのだ。発作で声が出なくなったその人は、紙切れに「助けて」と書いて、窓の外に落としたのだ。これが彼女のたったひとつの遺書になったのだ。
その人の部屋に残された赤ん坊には、その紙に母親の名前が書き足されて添えられて、養護施設に送られた。それを私たち夫婦が紙切れといっしょにもらって帰ったのだが、ある日、あの紙切れをみつけたあすかに、主人がうっかりいきさつを話してしまった。それ以来、あすかの態度が変わり、所構わず、筆跡までそっくりに真似た「助けて 中野 清風荘 木村みつ子」を書きなぐる癖がついてしまい..そして7年も前に死んだ母親を、あてどなく探し回るようになったのだ..
母親がそこまで事情を話した時、あすかは、足元深く掘り下げられた地下工事現場の、目も眩むような鉄骨の上に歩き出してしまう。死んでママに会いに行くと言いながら。ママはここにいる、と、母親も必死になって、その鉄骨の上を歩いてゆき、あわや転落しそうになって泣き叫ぶあすかを抱き上げ、無事に連れ戻す..が、あと少しのところで足場を失い、宙づりになる!「助けてーッ!」
ミッドナイトは彼女にロープをかけて救出し、あすかと母親は抱き合う。「助けて」というマジックワードが、今の母親と結びついたあすかは、彼女を本当のママとして、認識できるようになったのだ。
「助けて」という一枚のメモと、あどけない女児の組み合わせから発想されたのであろう。これも見事なミステリー。
ACT.40(第4巻 ACT.9)車庫で車を整備しているミッドナイトを訪ねたのは、かつて彼が率いていた(今は解散している)暴走族、ダースベーダーの子分だった男である。かつての仲間たちは正業についたかい?いや、別のグループに入ったやつがかなりいます..それでは解散した意味がないじゃないか!
マッドハッターである。ダースベーダーの仲間をひとりひとり捜しまわって、勢力拡張のために、無理矢理子分にしているのである。マッドハッターのボスの蛭沢が、ブタ箱から仮釈放で出てきたのだ..!
蛭沢はボスを憎んでいます。殺すつもりです。気をつけてください..
彼が帰ったあと、ミッドナイトは、車のトランクの中に、鳥が巣を作ってしまったのを発見した。邪魔である。トランクを開けたままでは走れない。しかし、巣を放り出すほどの冷酷さは、持ち合わせていない。かくして、なんとも不自由な、鳥(ハクセキレイ)との共同生活が始まった。昼はガレージでトランクを開けておく。そして夜間の勤務中は、卵を抱いて眠っているハクセキレイの夫婦を運んで。(無論、トランクは使用不可である。)
そんな、ある夜明け、ガレージに戻ってきたミッドナイトがトランクを開けたところに、凶器の鉄棒の一撃が! 蛭沢だ! まずミッドナイトの目を襲って視力を奪うと、仲間たちと集団で、凶器で殴りまくる。意識を失い掛けるミッドナイト。せめてスパナがあれば..スパナは車の中だ。車がどこにあるかわかれば..
その時、雛鳥の声が! 生まれたのだ! トランクの位置が判る! 視力を失っているミッドナイトは、一気にトランクに飛びつくと、スパナをつかみ出して蛭沢の顎に一撃! 彼の凶器を奪い取ると、見えないながらも、敵の一団を全員殴り倒してしまう。
やがてミッドナイトは視力を取り戻して、恩人(恩鳥?)の可愛い雛鳥たちとご対面。そしてハクセキレイ一家は、ミッドナイトの車のトランクから飛び立って、引っ越して行く。後日、近所の廃車処理場に、大勢のハクセキレイが巣を作って住み着いた。彼らの子どもたちかな..
こういう、殺伐とした暴力描写は好きではないのだが、小鳥の愛らしさとの対比が、絶妙と言えば絶妙。
はるばる札幌まで、客を運んできたミッドナイト。彼から受け取った1万円札で駐車料金を払い、雪祭りを見物していると、なんと、女らしい姿の、カササギ運輸のカエデである。今日は仕事ではないのだ。
ミッドナイトの活躍(ACT.31,32参照)で、ようやく会社は軌道にのり、ライバルのあくどい北陽急便は潰れて、バックの暴力団も検挙されたのだ。恩返しのために、うちの会社に来てくださいな。ごめんです。礼金30万円はもらったし、身分が違います。鑑別所からも脱走しているし、タクシーだってモグリなんだ、マトモな人間じゃないんですよ..
カエデがここに来ているのは、毎年、社員たちと雪像を作って出品しているからだ。「はぐれ鶴」。以前は「親子鶴」だったのだが、父が死んでから一羽だけにして「はぐれ鶴」..
そこへ刑事。ミッドナイトは警察にしょっぴかれる。贋札容疑だ。駐車場で使った1万円札が贋札だった。彼が運んで来た客は、贋札使いの常習犯だったのだ。お前はその助手だな?
彼は当社の社員である、と偽って、身元保証人となってミッドナイトをうけ出したカエデ。ミッドナイトは無論、カササギ運輸に勤めるつもりはないので、カエデのトラックから途中下車して、自分の車に乗って本土に帰るつもりだが..疑い深い警察は尾行しており、“社員”のミッドナイトを途中で下ろせば、(社員とは真っ赤な偽りであり、実は逃亡幇助である、として)直ちに再逮捕するであろう..
カエデは策略を巡らし、四つ辻でタイヤの跡を追跡不能な状態にかき混ぜてから、ミッドナイトを下ろして逃がす。彼に持たせた大きな荷物は..雪像、「はぐれ鶴」..
北の国、雪祭り、はぐれ鶴、と、ど演歌の世界なのであった。[;^J^]
(文中、引用は本書より)
Last Updated: Apr 9 1997
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