「少年サンデー」での連載を終えてから、掲載誌を「冒険王」に変えてのリテイク。この69/05号と次の 69/06号 で、基本設定が語り直されるが、かなり重大な変更が加えられている。
醍醐景光と魔神との契約。その契約通り、身体の48箇所の無い赤ん坊が誕生し、彼は川に捨てられ、そして医者に拾われて育てられる。この不具の子にはテレパシー能力が備わっており、医者は彼のために作り物の身体パーツを作る。
やがて立派に成長した、彼=百鬼丸と医者の前に、女に化けた妖怪が現れる。百鬼丸を殺しに来たのだ!
雨の中、お堂の中に雨宿りに飛び込んだ百鬼丸に呼びかける、妖怪の声。その妖怪は、百鬼丸の呪われた出生の秘密を、48匹の魔物が48の部分を百鬼丸から奪ったことを、そして魔物どもはそれらのパーツをこねくり回して、どろろを作ったことを告げたのだ。どろろを殺せ! そうすれば百鬼丸の体は元に戻る。もしもその子を殺せなければ..48匹の魔物といちいち戦って、1パーツずつ奪い返さねばならぬ。一生かかっても、全てのパーツは取り戻せまい..そして、百鬼丸がこのことを知ったことを察した魔物たちは、百鬼丸に襲いかかって来るだろう..これだけ告げた妖怪の声は、お堂から去った。
これは、冒険王のリテイクバージョンで導入された、新設定である。そしてこれは、相当無理のある設定だ。なぜならば、もしもそうならば、百鬼丸が(どろろではなく)妖怪を退治する度にパーツを取り戻す時、どろろは逆にパーツを失なっていかなければ、勘定が合わないからだ。それ以前に、そもそも、どろろの代わりに妖怪を殺してパーツを取り戻せることが、論理的におかしいではないか。
ここで、どろろの物語となる。野盗、火袋一党。頭目の火袋と、その女房お自夜の子、どろろ。どろろがまだ幼児の時分に、子分・イタチの裏切りで、火袋とお自夜は武士に売られ、野盗集団から追放され、苦難の末に火袋もお自夜も死に、かくして孤児・どろろは、日本一の野盗となって武士に復讐すべく、力強く歩み始めた。
その頃、百鬼丸を殺しに来たはずの妖怪が、殺すどころか重要な情報を与えて去ったのちに..百鬼丸は、「48匹の魔物とたたかい、どろろという少年とめぐりあう」という運命に従って、育ての親の医者のもとを旅立つ。(69/06号 につづく。)
この「運命」を見ても、「冒険王」版の設定の混乱が明らかである。どちらか一方でいいはずなのだ。[;^J^]
Last Updated: Aug 6 1998
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