*2009年04月13日:妄想が消えるとき
*2009年04月14日:学習能力ゼロ
*2009年04月15日:全く興味が持てないもの
*2009年04月16日:「近未来入門!」
*2009年04月17日:なんだかなの歓送迎会
*2009年04月18日:「手塚治虫展 未来へのメッセージ」
*2009年04月19日:「ランゲルハンス島航海記」
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*2009年04月13日:妄想が消えるとき


 「怪 Vol0026」(角川書店)をようやく入手して、小説以外にひととおり目をとおした。面白かったのは、荒俣宏のルポ(京極夏彦が同行)、「松沢病院に残された「幻想の痕跡」に会う」である。

 「松沢病院」の名前を知らない人は適当に検索して欲しいが、要するに、日本で一番有名な精神病院である。ウィキペディアによると、最も有名な患者は佐川一政とのことだが、何言ってんだか。もちろん、葦原金次郎(葦原将軍)である。彼を知らない人のためにパパパッと検索してみたところ、「狂気のスター」というページが、比較的まとまって記述されていてわかりやすい。筒井康隆の「将軍が目醒めた時」のモデルと言えば、ご存知の方も多いのではないかな。

 前記ルポ記事の中で、特に興味深かったのが、案内者・春日武彦氏の、以下の言葉である。

 妄想は、急に我に返って、俺はいままで何をやっていたんだろう、という展開にはまずなりません。いつのまにか消えてしまうことはありますけど。ただ、わりと劇的に消える場合があって、それは本人の健康状態が悪くなって死にかけるか、体が極端に衰弱状態になるときです。つまり、我が身が危急存亡の際に立たされると、気が狂っているどころではなくなってしまう。(115頁)

 「将軍が目醒めた時」は、長い長い躁鬱病(鬱状態が無い、躁状態だけの躁鬱病)から、生涯の最後の時を迎えてついに回復した葦原将軍を描いた、感動的な物語であったと記憶するが(何十年も前の記憶で書いておりますので、事実誤認があるかも知れませんが [;_ _])、彼の「回復」は、事実であったのだろうか。それとも筒井康隆による虚構なのだろうか。

 私は、松沢病院の門をくぐったことこそ無いが、その場所はよ〜く知っている。2000年頃にしばしば通っていた、京王線八幡山駅の直近にある、大宅壮一文庫の、真向かいにあるからである。この病院には、こんなに面白いコレクションが保管されていたのか。まぁ..一般客に公開したりはしていないのだろうが、機会があれば、一度、見てみたいものである。

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*2009年04月14日:学習能力ゼロ


 また、濡れた..経緯は、以下の通りである。

 出社前に天気予報を確認。夕方の降雨確率の数値は、有意に上がっている。とはいえしかし、会社の駐車場に着いた時点では雨は降っておらず、従業員通用口までの約100メートル、傘を持ち運ぶことはしなかった。なぜなら、予報はあくまで予報に過ぎず、夕方の時点で雨が降っていない可能性ももちろんあるのであって、その場合、私は必ずや、傘を(通用口横の)傘立てに置き忘れてしまうはずだからである。そういうリスクを事前に潰しておくためである。

 そしてもちろん、天気予報は基本的には的中するのであって、夕方には当然のように、かなり強めの雨がジャンジャカジャカジャカ降っており、私は約100メートル、びしょぬれになって車まで走らなければならなかったのであった。その車の中には、今更なんの役にも立たない傘が常備されていたのであった。

 ..以上と全く同じストーリーを、私はこれまで、何度も何度も何度も何度も繰り返してきたのである。そしておそらくこれからも、何度でも何度でも何度でも何度でも..[;_ _][;_ _][;_ _][;^.^]

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*2009年04月15日:全く興味が持てないもの


 その壱:飛行機のファーストクラス。

 乗ったことが(足を踏み入れたことさえ)無いので、単なるやっかみだろうと思われるかも知れないが、事実なのだから仕方が無い。

 たった数時間からたかだか十数時間の「時間」に、あれほどの金をかける理由がわからないのである。もちろん、何事も程度問題であるから、フライトアテンダントの3人も侍らせて酒池肉林の歓待を受けるというのならば、あるいはそれは数十万円の値打ちがあるかも知れないが、どうやらそこまでのサービスはなさそうである。これでは全くペイしない。興味が持てない。

 1泊数十万円する「都内の高級ホテル」に全く興味も関心も持てないのも、同じ理由からである。これが秘境であるとか絶景のリゾート地であるとかならばともかく、窓から見える風景は、銀座だったり新宿だったり赤坂だったりするのである。完全な日常空間であり、格別な付加価値がない。

 だから、たとえば世界一周の豪華客船の1等船客が支払う数百万円(あるいは数千万円?)は、理解できる。多分、そんな機会は一生無いのではないかと思うが、そういう蕩尽は、してみたいものである。



 その弐:芸能人のカラオケ大会(であるところのテレビ番組)。

 これは本気で理解できない。一体何が面白いのであろうか。これほどしばしば放映されているということは、それを求める視聴者が大勢いるのであろうなぁ..他人のことはわからないが、とにかく、プロの歌手ならぬ俳優やらバラエティタレントやらグラビアアイドルやらアナウンサーやらの歌が上手かろうが下手であろうが、それになんの意味があるのであろうか。(後期というか終末期の「GORO’s Bar」の録画をほとんど残していないのは、芸人のカラオケ大会ばかりやるようになってしまったからである。)われわれど素人のカラオケと異なり、微妙に中途半端な立ち位置に居る彼らであるから、見ていて居心地が悪いのであろうか..

 ..ここまで書いて思い当たったが、「タレントのカラオケ姿」を楽しめるのは、彼らに対する「(一方的な)友だち感覚」(「親近感」にあらず)を抱いているからではないだろうか。別にそれが、いいとも悪いとも思わないが..(それはそれとして、「ともだち」の変換の第一候補が「トモダチ」というのは、どうよ。[;^.^])



 その参:面倒くさくなってきたので、以下略。[;_ _][;^J^]

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*2009年04月16日:「近未来入門!」


 「近未来入門!」(あさのあつこ、福江純、メディアファクトリー、ナレッジエンタ読本)に、サササッと目を通した。最近、書店で幅を利かせている叢書であるが、特に偏見があるわけではないのだが、これまで読んだことがあるのは「密室入門!」だけである。本書は、児童文学作家・あさのあつこの素朴な疑問に、天文学者・物理学者である福江純が答えるという内容で、コンテンツは、「地球はどうなってしまうのか?」「人間が宇宙で暮らすとしたら?」「ドラキュラと恋に落ちる日」「宇宙人はきっといる!」「タイムトリップはできるか?」、というもの。ごく軽く読める、対談者に人を得た良書であると思う。地球温暖化についても、解っていること/解っていないことを、バランス良く説明してくれている。

 なお、163頁の脚注に、「ウラシマ効果」の命名者は石原藤夫とあるが、そうだったっけ? 柴野拓美説もあるのだ。どちらも実に信憑性が高いだけに、悩んでしまう。[;^J^]

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*2009年04月17日:なんだかなの歓送迎会


 19:30に有楽街の「てんくう」という店で、歓送迎会。20人弱? 初めて来る店だが、ホウボウが美味い。二次会は(店名は失念したが)8人ほどで近くの店。

 必ずしも楽しい思いばかりではなかったのだが、まぁいい。

 散会したあと、さらに3人で連れ立って、ザザシティの近くのラーメン屋でラーメン。タクシーに相乗りして帰宅。

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*2009年04月18日:「手塚治虫展 未来へのメッセージ」


 ゆっくりと発つ。9:50のこだま。江戸川橋の麺珍亭で油そば。(前回は、酢とラー油を(たっぷりと)振り掛けて混ぜるタイミングを間違えており、本来の味で食べていなかったらしいので、リベンジしに来たのである。)うむ、美味である [^.^]。このあと、すぐ隣の現代マンガ図書館へ行くと見せかけておいて、永田町の国会図書館へ [;^J^]。COMICリュウのバックナンバーを読むのが目的だったのだが..あれれ、ない? 端末で検索できない。キーワードをどう工夫しても、抽出できない。変だな、変だな。確か、あらかじめ自宅でネット越しで検索したときには、あっさりと見つかったのに..勘違いだったのかなぁ? なんらかの理由で閲覧停止状態になっているのかなぁ?(製本などの理由で、このフェーズに入ることはあり得るはずだが、その場合でも、検索だけはできたと思うが..)まぁしゃあない。こんなことなら、現代マンガ図書館で読んでくるんだった。(100円/冊の、閲覧料をケチったおかげで、このザマだ。[;_ _])いや、現代マンガ図書館にあるのかどうかは、判らないんですけどね。

 仕方が無いので、すぐに引き上げる。国会図書館に来て、1冊も読まずに退散するなど、初めてのことではあるまいか。[;^J^]

 13:55、両国の江戸東京博物館へ。「手塚治虫展 未来へのメッセージ」である。普段、あまり見る機会の無い(主として少年時代の)ホームビデオのほか、小学生時代の昆虫写生図や昆虫手帖が、とにかく興味深かった。写真的リアリズムとまでは言わないにせよ、遥か後年、手塚治虫自身、「今ではこんな絵は描けないよ(笑)」と語ったほどの水準の作品なのである。

 ちょっと不思議に思ったのは..原画が多数展示されているのだが、それが複数ページ(というか「複数見開き」)に渡っている場合、たいてい、順番が狂っていることである [;^J^]。ちゃんと確認しろってば。

 16:00に退去して、いったん秋葉へ。ヨドバシカメラ7Fのタワレコと有隣堂。ぶっちゃけ、渋谷のタワレコと神保町の書店群まで足を伸ばすのが面倒だったので、近場で片付けたまでのこと [;^J^]。ルノアールで時間調整。(ココアではなく、クリームソーダ。)

 18:15に退去。両国に戻り、駅前の和民に18:30に間に合った。(ちょっとルノアールで腰を落ち着けすぎたかと焦ったが、さすがに近いこと近いこと。)本日の展覧会を機会に集まった、手塚ファンの会合である。総勢14名。森晴路さん、小林準治さん、下崎闊さん、石之博和さん、Tさん、Tさん、Tさん夫妻、Oさん、Oさん、Aさん、Fさん、Uさん、それに、私である。(一部、表記が紛らわしいことをお詫びいたします。[;_ _][;^J^])アルファベットの方々については判らないでしょうが、そ〜と〜濃ゆいメンバーなのである。リストに反映すべき新情報もいくつか得られた。虫プロ倒産の現場にいた人に教えていただいた倒産の真因については、やはりオフレコだろうなぁ。その他にも、面白い話がいっぱい。

 21:30に辞去して、22:00東京発のひかりで浜松に帰る。

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*2009年04月19日:「ランゲルハンス島航海記」


 快晴なので、9時から15時50分まで、湯風景しおり。

 「ランゲルハンス島航海記 大航海錯読日誌」(Friesel、1984、内藤道雄、奥田敏広訳、博品社)を、ようやく読み終えた。薄い本なのに、結構手間がかかってしまった。

 どういう書物かと言うと..(「錯読」あたりでヤな [;^J^] 予感がした人は、賢いです [;^.^])要は、架空の航海記。そもそも「ランゲルハンス島」自体、膵臓内の細胞塊の名前なんだから、話にならない [;^J^]。医学・生理学を主とする科学用語の地口の連鎖で目眩ましをかけた、風刺小説である。その意味では、ガリバー旅行記(の、特に第3エピソード(ラピュタ))の系譜に連なる作品であると言える。(作品の規模は、遥かに違うが。)

 ただ、何しろドイツ語で地口・語呂合わせを繰り出しているものだから、翻訳者たちの奮闘ぶりは痛いほど判るとはいえ、読みやすいとは到底言えない。例えば、適当な頁を開いて引用してみようか。

 数学科の血球計算器〔文字通り訳せば、計算室〕には数学家や虚数家が席を占め、因数交換にはげみつつ、同等分割、多様減数分裂ならびに、無理数、権謀術数による乗法を行なっている。彼らは同様にまた火傷治療可能面積率あるいは偽規則にしたがって、優性規範、連比計算表を算出し、月経周期に固執する。また隠れた行列式を利用してあらゆる当座解決ならびに零解決をもとめる。彼らは限界値に対する愛着があきらかにとりわけ強い。まことに数に関する虚匠であり、集合虚無論、落ちこぼれ理論の大家であり、累乗根の扱い〔歯根治療〕、ポテンツ初数、ポテンツ障害、インポテンツ、およびポテンツ損失計算を得意とし、測定数値をデジタル化、複雑骨折と放射性元素の崩壊に優れた業績をあげている。彼らは現在、ゼロロジー〔血清学〕と称するゼロの研究、および一億より大きな数値による計算を要する奇形学に専心している。

 ..面白いんだか、面白くないんだか..という私のもやもや感を、理解していただけましたでしょうか。[;_ _][;^J^]

 例外的に、言葉遊びがほとんど無いパラグラフがあったので、ここも引用してみよう。

 大学図書館というものは、学生、偽学生、無学生らの勉学に役だち、有能な人間を育成するため存在するのであり、良書からこそ良い種子も得られようというものだが、しかしここの大学の勉強法というのが一風も二風も変わっている。スコラ的な制度が完全に廃止されているのである。つまり、明晰な知性が学生全般に助言を与えるなどということはやめ、賑やかな質疑応答のシステムに切りかえている。このシステムにのっとって彼らは学期をこなし、とにもかくにも順応して、気楽に卒業試験もパスする。彼らは何でもござれ、だが、大したことは何もできないだろう。このようなシステムは発育不全を生み、おそろしくも歴然たる半可通を輩出する。これはまさに教育の目的に反する教育である。というのも彼らは補完的に羽目をはずすようなこともなく、簡単なレポートを学術論文と心得て提出し、学士号をもらうのである。庶民は彼らを下顎突出症と呼んでいるが、しかしこの学業に携わるものは僅かであり、彼らの努力に何らか特別な成果がともなうとしたら、まさに奇蹟というべきであり、これはわれわれの国の事情と変わりがない。

 ..1984年の時点で、ドイツも既にこのような有様であったらしい [;^J^]。いずこも同じ秋の夕暮れ、文明の黄昏である。[-人-][-人-][-人-](「人類は衰退しました」(C) 田中ロミオ)..いや、笑ってる場合ではないのだが。[;^.^][;^.^][;^.^]

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*解説


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Apr 23 2009
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