舞台は、巨大な<船>を何十年もかけて作り続けている、<造船所>と呼ばれる巨大な都市。そこで一人の少年が遭遇した、全人類の運命をかけて戦った、一夜の冒険譚である。
地球人の敵、イェーヴド人。彼らとの間で交わされている星間大戦争。地球人の反攻の切り札として、この巨大な<船>は作られているのだった。イェーヴド人は、地球人に化ける(というより、幻覚を見せて姿をくらます)能力を持っていた。数多くのイェーヴド人のスパイが<造船所>に入り込み、<船>の秘密を奪って、あわよくば<船>を破壊しようと目論んでいた。
少年はある夜、地球人に化けたイェーヴド人に連れ去られて、<船>に乗り込んでしまった。イェーヴド人たちは、まだ少年に正体を見抜かれたとは考えていない。少年を利用して、<船>の秘密を探りだそうというのである。イェーヴド人たちが、続々と集結する。事態を察知した地球当局は、しかし正面からの少年の救出作戦には、打って出ない。敵は既に<船>に乗り込んでおり、強攻策が裏目に出て<船>ごと自爆されたら、人類の危機である。頼みの綱は、少年だけだ。
<造船所>に潜入していたイェーヴド人のスパイは、ことごとく<船>に集結していた。地球当局からの密かな連絡を受信した少年は、その指示に従い、全人類の未来をかけて、単身、<船>に乗り込んだ全てのイェーヴド人を殲滅したのだった。
大規模な宇宙戦争の中の一挿話、として位置付けられよう。アイデアにもストーリーにも、目覚ましい点は、無い。しかしこの絢爛たる設定と密やかな悪夢的なムード。これこそヴァン・ヴォークトを読む快楽なのであるが、私の拙い要約では伝えきれまい..
Last Updated: May 23 1996
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