支配者たち (1944)


 ある心理医学者の回想である。人のちょっとした表情や仕草から、その心理や思考を読み取ってしまうという、特殊技能を持つ主人公(ほとんどテレパスである)は、アメリカ合衆国政府の調査官として、ある病院に踏み込み、そこが秘密結社のアジトであることを察知すると、直ちに脱出を図るが、敵勢力は市内の通信網と交通網を完全に押さえており、主人公は孤立無援。逃走に同行している美人秘書も、彼に銃口を向ける。精神をコントロールするH薬の支配下に置かれていたのだ。

 敵の正体は「世界支配者会議」。紀元前3417年から存在する委員会であった。彼らは近世だけでも12人の国王を輩出し、欧州における全ての戦争を承認し司ってきた。彼らの最大の失敗は英国の存在であり、それを遠因とする合衆国の出現であった。両国に手を焼いた委員会は、合衆国を完全に支配下に置くべく、H薬の支配層への大量投下を図り、その拠点として例の病院を利用したのだった..


 以下、結末まで粗筋の紹介は、省略する。心理医学者たる主人公が、H薬のある弱点を逆用するのだが..と、話は進むのであるが、まぁ凡庸な作品である。しかし、超巨大超時間的超空間的秘密結社と立ち向かう、知能指数の高い科学技術の超人、という漫画的な設定は、ヴァン・ヴォークトが得意中の得意としたところである。彼はその長編群において、この馬鹿馬鹿しくも魅力的な道具立てに、最高の輝きを与えた。この短篇では、その片鱗が微かに伺えるのみである。



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MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: May 23 1996 
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