アイザック・アシモフ「夜来たる」(1941)


 お約束の引用。


もし星が千年にただの一夜のみ、あらわれるとすれば、人々は幾世代にもわたって神の都の追憶をいかに信じ、讃嘆し、保ちつづけることであろう。(エマスン)

 いまさらストーリーを説明する必要も感じないが、逆に言うと、紹介するほどのストーリーでもないのだ。完全なワンアイデアタイプの作品。

 「複数の太陽を持つが故に、何千年かに一度しか夜が訪れず、そのため、天文学がまともに発達せずに、(長い昼間の間に)ごく幼稚で小さな宇宙像を育んできた文明。その文明がついに夜に遭遇し、無数の星の出現を目の当たりにして、自分たちが宇宙の底知れぬ広大さを全く知らなかったことに、科学者たちは絶望し、民衆は恐怖に襲われて暴動を起こし、かくして、一夜にして文明は崩壊する」

 伝統的というか、ほとんど擬古調の定型である「疑い深い新聞記者への我慢強い説明」という形で対話が続くこの作品は、そのビジョンの壮大さだけで持っていると言ってもよい。最大の問題点は、(無知な)民衆の「恐怖」が、全然描かれておらず、実感も出来ないことである。そこは、読者が補って読まなくてはならない。パニック描写にも見るべき点はなく、やはり読者が、以下同文。

 それやこれやで、読者に取って「手がかかる」作品なのであるが、そのように積極的に前向きに読むことによって始めて、ただごとではない感動が得られる。もてなしの良い、いい加減に読んでも感動させてくれる類の小説を期待して、そのように適当に読んだ読者には、ピンとこない作品に違いない。


(文中、引用は本書より)


*内宇宙への扉の入り口へ *スターシップ」の入り口へ


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Apr 3 1996 
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