[好きな現代音楽 8]

「宇宙(そら)は光に満ちている」佐藤聰明



 ミュージック東京が発売していたこの盤は、もちろん廃盤で、輸入盤はNew Albion Records NA 008 CD。これも現役かどうかは不明。

 「このディスクは1988年度ニューヨーク・タイムズ紙でアルヴォ・ペルトの『マタイ受難曲』とともにベスト・レコードに選ばれ、全米ネットワークの公共放送WNYCの第二位にランキングされた」(作曲者によるライナー・ノートより)ということから察しがつくとおり、ベタベタのムード・ミュージック(ノー・リズム)である。(CDを買ってまで)聴いたことがないので良く判らないが、ニューエイジ・ミュージックというのが、こんな雰囲気なのかも知れない。

 このジャンル(作風)、別に嫌いではないが積極的に聴く気にもなれない。このCDも(その手の音楽らしいと、レコ芸のレビューで見当がついたので)「参考文献」程度のつもりで購入したのだが、冒頭の「宇宙は光に満ちている」の清澄な響きには、素直に心打たれた。

 ソプラノとピアノ、打楽器による作品で、なんと言ってもソプラノのゆったりとした伸びやかな旋律が印象的。「砂の都市」(菅野由弘)も、こういう旋律をあてれば良かったのに。ただ、作曲者によると「新たなる旋法による『メロディー』の復権をめざした」ということなんだけど、メロディーの復権というのは素晴らしいコンセプトだと思うし、それは成功していると太鼓判を押せるけれども、「新たなる旋法」とは思えないんだが。

 1979年のこの作品、先鋭的なところは微塵もない。ライナー・ノートでニュー・ジャズやプログレッシブ・ロックに言及している作曲者は、自分の感じたままの「コンテンポラリー・ミュージック」を素直に書き上げた。我らの時代の音楽である。拍手。(イーノの“アンビエント・ミュージック”(特に「エアポート」)を想起したことを、付記しておく。)

*New Seasons Classics NSC7 “リタニア/佐藤聰明作品集”


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jul 13 1995 
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