*96年01月10日


 音域によって、息(呼気)の高さを変えること。息は曲線であって、直線ではない。高さによって、強さに応じて、時間的変化をつけること。そして息をそのように出しやすいように、体を(時間的変化をつけて)動かすこと。

 この順番を間違えないように。何よりも大切なのは“息”であり、それを送り出すために筋肉と体を動かすのである。(もちろん、一番大切なのは“音楽”なのだが、今はそれよりも遥かに手前の段階。)

 現段階の教材では、大体2小節で1ブロックである。これをひと息で歌うのだが、その時の息の吐きかたは、基本的に放物線型。まずたっぷりと(音高と音量に必要十分なだけ)息を吸い、それをゆっくりと吐き出し始め、まんなか頃に吐き出す勢いがピークになり、後半では次第にそれを弱める。これは、前半がクレッシェンド、後半がデクレッシェンドであるようなフレーズには、乗せやすい。また、前半が上昇音型、後半が下降音型であるようなフレーズとも相性がよい。しかし、こんなフレーズばかりではないので、その時の処理が問題になる。

 コンコーネ第1番で出てきたのは、(移動ド記法だが)レ↓ソ↑ミ↓ドというパッセージ。ここでフレーズの中ほどで音程が5度下がる時に、それに息がつきあって、弱まったりしてはいけない。呼気はあくまでも放物線型なのである。音程の上下とは無関係に、この呼気のペースを維持すると、なるほど確かに、フレーズに芯が入ったようだ。

 高音部を歌う時の注意。“息”が“音程の下をくぐる”ことがないように。“息”は“音の上”に向かって出す。別に禅問答ではない。試みてみれば、すぐ判ることである。

*目次へ戻る


*96年02月14日


 腹痛で1回休んだので、1ヶ月ぶりになってしまった。勘が掴めていない時期に間があくと、いろいろと後退してしまう。健康管理も大事。

 高い音域では、音の焦点を遠くに合せる。低い音域では、近くに合せる。到達ポイントも違うのだが、発生(発声)ポイントも違う。高い音ほど、頭頂付近から抜けていくのである。

 このことに気を取られていると、高音を出す時に、喉が上がって上擦ってしまうことになる。発声のおおもとは、あくまでも下腹であり、それは音域によらない。喉仏もしっかりと下げ、喉を開ける。むしろ高い音ほど、重心を低く取る位の気持ちで。発音源を下げることによって、高音を延ばす。作用・反作用の法則。

 発声練習では、相変わらず「オ」の音で、口唇の周辺がフルフルし、ナチュラルビブラートがかかってしまう。口がこの運動に馴染んでいないからだ。ちょっと集中的に、「オ」の発音練習をすることにしよう。

 ブレスも、いまいち。とにかく、十分な量の息が、入ってこないのである。形だけブレスをして、実は全然吸っていないということもある。もっとゆっくり吸ってみよう。

 上半身の力みも相変わらずだが、むしろ、下半身に力が入り過ぎている様な気がしてきた。椅子に座って発声すると、膝から下がひきつる。立って発声すると、膝が棒立ち。膝を軽く(ほとんど気持ちだけ)かがめて、伸び上がる様にして発声をすると、下腹からの息の送り出しが、楽になった。

 今日はコンコーネの3番をさらった。次回は4番。

*目次へ戻る


*96年02月29日


 発声練習の時に、「サ」や「パ」や「ナ」で歌うのは、ピッチがぶら下がるのを、子音で引き上げるため、と、数ヶ月前に聞いた記憶がある。次回に確認しよう。

 「ア」から歌い出して「オ」に変わる、発声練習。口の形を固定する癖がついていたので、ちょっと新鮮な違和感というか、歌いにくさである。徐々に慣れるが。新鮮な違和感と言えば、これまでの発声練習では、「ドーレードー」「ドレミファソラソラソファミレドー」といった、上がって下がる音型がほぼ全てだったのだが、今日は、「ソファミレドー」という、上から入って下がる音型で練習。歌い出しの時にしっかりとスタンバイしていないことが明らかになる。つまり、(特に高音域になると)きちんと当たらずに、出遅れるのだ。

 コンコーネの4番。ピッチが上がるところで、発音源が上がってしまうというか、気持ちが“上”の方に、まだ行ってしまう。声は息の流れに乗って出ていくのであり、息の源泉は下腹なのである。これを忘れると、声が痩せて細くなり、上擦る。何度かやり直しを命ぜられて繰り返すうち、横隔膜がピタッと張ったと思えた時、明らかに声が変わった。これは録音テープで確認した。これを常時、行なえれば良いのだ。

 まだまだ、下腹から流れ出した息を吹き上げる通路が、安定して機能していない。

 長いフレーズで息を持たせること。フレーズにもよるが、前半ではほとんど息が出ていかないというか、横隔膜が張り出さないのだ。後半に息を残す。

*目次へ戻る


*96年03月27日


 また、仕事で1回飛んでしまった。1回飛ぶと1ヶ月開いてしまうのである..というのを言い訳にするつもりは毛頭ないが、今日は最低とは言わないが、実に不調であった。全然響かないのである。焦らないこと。基本(呼吸法と腹筋の使い方)の積み重ねが大事。

 ドッ↑ミッ↑ソッ↓ミッ、ドー↑ミー↓ドーーー(前半はスタッカート、後半は、柔らかいポルタメント)という音型の練習を、ホの発音でする。これは腹筋のコントロールの練習。前半のスタッカートは、腹筋のバネを解放して、勢い良くはじきだす。後半のポルタメントでは一転して、腹筋の動きをセーブして(しかしもちろん、とことん腹筋を使って)柔らかく押し出す。これは結構難しい。前半の勢いが残っていると、後半が飛んでもない始まりかたになってしまい、息が足りなくなる。後半のことを最初から考えていると、前半で十分に腹筋がはじけない。

 ちなみに、ホ(H音)で行なうのは、喉を痛めないためである由。試しにアでやってみると、確かに少し刺激が強い。先に子音のHで空気を送り出して、空気のクッションを作っていることになるのであろうか?

 前半で腹筋になんら制動をかけないと、えらく大きな声になってしまうので、多少ともセーブしていたのだが、そういうこと(セーブ)をする必要はない、と。

 大きな声と言ったが、実はまだまだ、全然声量が出ない。上で述べたのは、1音を出すときの瞬間的な話である。ようするに腹筋が弱い(鍛えられていない)のだ。声量は息の量の問題ではなく、腹筋のコントロールの問題である。連載の最初の頃に述べたように、発声で使う筋肉は、いわゆる腹筋運動で鍛える筋肉とは、違うものである。なんにせよ、鍛練鍛練。

*目次へ戻る


*96年05月08日


 ほとんど2週間続いたしつこい風邪で、また1回飛んでしまった。随分色々なことを体が忘れており、レッスンの終り頃にようやく思い出す始末である。それで思い出したのだが、私は会社に入ってから教習所に通いはじめ、免許を取った。そのため、毎日通って練習し続ければ、そうは苦労しないはずのところを、3週間、あるいは2ヶ月、と、ぽんぽんブランクが入り、その度にリセットされてしまい、閉口したものだ。それでも最終的には(期限ぎりぎりで)卒業出来たのである。

 高いほうの音が出なくなっているので、ここは無理をしない。ド↑レ↑ミ↓レ↓ド↑レ↑ミ↓レ↓ド↑レ↑ミ↓レ↓ド↑レ↑ミ↓レ↓ドーーー、を、前半は軽いハ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ、後半はアアアアアアアアアーーー、で。次に立って、手を大きく回しながら、ヤで発声。終わりの3回位になって、ふと、息が通り抜ける感覚。その時は、明らかに声が違うのである。

 さらにアとサで発声したあと、コンコーネの6番。上に上がる所で、やはり重心が上擦ってしまっている。音は上へ、重心は下へ。反比例させること。顔を上げないで、口の中を後頭部に向けて上げる。

 息を吸うとき、全力で吸ってはいけない。遊びを残して。そもそも「吸う」という感覚に囚われてはいけない。肺というのは受動的な器官であり、胸の容積を大きくして、そこに自然に空気が入って来るようにする。その時、横隔膜は膨らむが、ここで半分位残す。その残りの半分を、発声する時に「張る」のである。

 豊かに息を回すこと。今は、野放図に、無節操に息を出してしまって良い。フォルテばかりになっても、構わない。まず、息を通すことが先決である。弱音の表現は、その先のこと。息が通り抜けるようになったら、あとはその息の流量を調節すればいいのである。(昔トロンボーンを吹いていた頃、セミナーで講師に同じようなアドバイスをされたことを思い出した。校庭を1週、全速で走ってきてからロングトーンをやってみろ、と言われたのである。それはもうバリバリに割れた、アンプシュアも何も出鱈目な酷い音になるであろうが、少なくとも「抜けた」音が出るはずだ、と。)

*目次へ戻る


*96年05月24日


 口は息によって、自然に開かされる感じで。例え同じ母音を発音しているのであっても、音の高低や音量が変れば、口の形は変わる。常に一定ということは、ありえない。

 喉や顎で頑張らずに、下腹から送り出される息の回転に、全てを任せること。

 息を回す(循環させる)もうひとつの補助運動として、両手を軽く組み合せ、これを水車のように回しながら発声する。回転方向は、体にそって下から上へ、そして上方で向こう側へ。これも含めた様々な体の動き(腕を広げたり回したり)を“止めない”こと。常時、例えコンマ1ミリでもいいから、動かし続けること。体を固めてはいけない。「ガッと吸って、ピタッと止める」のは、いけない。常に吸い続けているかあるいは吐き続けているのであって、その動きは片時も止まらないのである。

 今日は、コンコーネ(低声用)の7番であるが、どうも歌いにくい曲である。ひとつにはブレス記号が多すぎるからであった。明らかに不要なブレス記号は、無視しても良いとのこと。それよりも、半円形を描く呼吸の流れを意識して、それにフレーズを乗せること。半円形の息の流れと、フレーズの上行下降は関係ない。(むしろ息の流れの中程、一番量が出ていくところでフレーズが降りてくる方が、歌いやすい気もする。)

 体の動きを止めずに歌う。上半身の力を完全に抜いて、むしろぐにゃぐにゃにして、蛸か何かのように腕を降りながら声を出す。下腹と横隔膜だけ、しっかりと。この呼気の源泉から吹きあがってくる息を、柔軟な上半身を通じて、空中に自然に流しだして行く。声はそれに乗っていく感じ。

*目次へ戻る


*96年06月05日


 前回実習した、水車のように手前から向こう側へ回す運動から。これで息の流れを作り、それに声を乗せるのである。

 “オ”の音をまとめるためには、唇の形をしっかり作る。唇を使わずに“オ”を出そうとすると、喉に負担がかかってしまう。唇を使い過ぎては(唇にたより過ぎては)いけないが、喉に負担をかけるのは、もっとよくない。主役は、腹。それを唇の形で支援する。

 腕を左右に大きく、“∞”の字の形に振りながら、発声。(両腕を同じ方向に振る。)体を柔らかく動かす支援運動。腰の(ほんの気持ちだけの)前後運動と、調和させる。これが結構難しい。神経をそちらに取られてしまい、発声の方がお留守になりかねない。息が自然に流れるように、オーバーに大きく振る。欠伸の要領を忘れずに。

 両腕を内側から外側に回す、いつもの運動。腕の先端が真上を通過して、外側へ降りていく時、つまり一番高く遠く“抛りやる”時に、空をイメージしてみようと思ったが、確かにイメージはわいたのだが、どうも結果に結び付いていないようである。頭でコチャコチャ考えずに、体を動かす、という体育会ノリが大切なのだが、それはそれとして、このイメージ作戦はうまく行くはずだと思える。もう少しトライしてみよう。

 今日は、コンコーネ(低声用)の8番。いきなり高音から始まって、低音へ降りていくライン。逆に、低音から始まって、高音へと上がっていくライン。息の配分が難しい。これまでの典型的なフレーズは、低く始まって中程で高く上がり、また低く降りていく、ここまでが一呼吸なのだが、これが第一のパターンとすれば、高く始まって降りて行ったきりのフレーズが、第二のパターン、低く始まって上がりっきりのフレーズが、第三のパターンである。それぞれに合わせて呼吸の配分を変える。実は現段階の私には、高級過ぎる話なのだが。

 非常に複雑なさまざまなメロディーラインも、分解してみれば、(例外はあるのだろうが)この3パターンのどれかに属しているので、この3パターンの呼吸法を修得すれば、ほとんどのメロディーラインに対応できるのである。セザンヌの、“自然は、球と円筒と円錐からなっている”という言葉を思い出して、愉快な気分になった。

*目次へ戻る


*96年06月19日


 上に行けば行くほど、息と声が“離れやすく”なるので、注意すること。声が離れそうになったら、とにかく体を動かす。(動かせばいいというものではないが。)腰。首。流れから離れて口先だけから出ていってしまいそうな息を、体でつかまえる感じ。逃がさない。体を(正しい方向に)動かし続けることによって、息の流れが体の流れに乗るような感じ。声は、その息の自然の流れに乗せるだけ。

 繰り返すが、体は動かせばいいというものではない。ちゃらちゃらした細か過ぎる動き、あるいは小手先の動きは、実はなんにもならない。フォームが決まっている訳ではないが、息の流れを作る動きを心掛ければ、両腕を(ラジオ体操の内回しの方向に)8の字型に広げる動きに、自ずからなるであろう。

 コンコーネの9番。最後に大きく上昇して行くところでは、ほとんど上を向き、腕を振り上げて、反り返る。ここまで大袈裟に動かすことによって、背中が張る。それが狙いである。

 下腹から上は、連携プレイ。高音域を出すときは、声を上に放るのであるが、腰、背筋、首が、自然につながって動くこと。「背中は前に押し出されるが、首から上は動かない」、逆に、「首は上を向くが、胸から下が動かない」、いずれもNGである。こうなると、喉に負担がかかってしまうのだ。体全体で息を流し出すこと。

 どうも、横隔膜の“張り”が、はっきりしない、と、先生に指摘される。実際に手を当てて見ると、実は張っていたのだが、体型のためにわかりにくいことがひとつと、あと、どうも私が、張り出すポイントを誤解していた(もっと遥かに高いポイントを張り出そうとしていた)ことがひとつ。臍の真上と考えるのではなく、少し斜め上のポイントなのだ。このイメージを体で覚えるためには、ここにベルトを巻いて、これを膨らませると良い。ベルトをお借りして巻いてみると、確かにこれは判りやすい。ベルトを膨らませる(反作用として腹が締め付けられる)感覚で筋肉の動きを覚える際も、背中との連携をわすれずに。

*目次へ戻る


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jun 22 1996 
Copyright (C) 1996 倉田わたる Mail [kurata@rinc.or.jp] Home [http://www.kurata-wataru.com/]