三つ目がとおる 11

*ボルボック編 第1章 棒が出たァ!

 とある寺の本堂の裏の地面から、突如巨大な棒が、地面を突き破って現われた。住職は、和登サンの父の兄(つまり、叔父)である。数日後、親子で招かれた和登サンと父は、これを掘り出す人足にされてしまう。近くの工事現場の震動で、半年くらい前から、少しずつ伸びてきていたのだが..

 棒の基底部まで掘り広げてみると、棒を中心に、多数の石が放射状に配置されており、ひょうたん型の土器が、多数掘り出された。須武田博士に電話して状況を説明し、これは環状列石である、と、判定された。

 この遺跡を須武田博士の依頼でフィルムに収めるために、夜になってから、工事現場にカメラを借りに行った和登サンは、工事現場にも、同じような石の棒が6本現われたことを知った。寺の分もあわせて、7本が、ちょうど円形に並んでいる..やがて、ヒョウタン型の土器が、いっせいに、チリーンチリーンと鳴り始めた。そして、大きな地震が!

 石の棒は倒れ、寺が崩れる! 工事現場の裏山も崩壊し、工事現場の石の棒も、全て倒れた。土器は一つ残らず壊れた。工事現場では10人死んだが、和登サンたちは無事だった。

 帰京した和登サンの報告を受けて、犬持医師と須武田博士は相談する。7本の柱から等距離にあたる(円の中心の)点。そこは一面の山林で、死面堂家の私有地であり、しかもちょうどその場所に、納骨堂があるのだ..

 不気味な風貌の死面堂氏が、須武田博士たちに招かれ、現われる。彼は、納骨堂には手を出さない方がいい。いやな言い伝えがあるから..と言葉を濁すが、結局、犬持、須武田、和登サン、写楽を引き連れて案内することになる..

 まずは、ムード万点の導入部である。

*ボルボック編 第2章 閉じこめられて

 納骨堂の入り口は、小型の古墳のような小高い盛り土に据え付けられた、頑丈な扉だった。百年来開けられなかった重い扉を開いて、地下に降りて行く一行..やがて、納骨堂に辿り着く。骨壺の並ぶ間には、不気味な屍蝋が..

 その時、壁の文字を調べていた死面堂氏の足元の床が突然開き、すぐに閉じた。すなわち、死面堂氏は..プレスされてしまった。戸口で大きな音。扉がひとりでに閉まったのだ。重くて到底開けられない..閉じ込められた。これが納骨堂の秘密..「いやな」言い伝えだったのだ。

 しかし、死面堂氏を殺した仕掛けは、今回初めて起動したものだろうか? これほど多くの骨壺が収められているにしては、闖入者の死体が見えないが? そこで彼らは、妙に年代の若い、せいぜい2〜30年前の遺体とみえる、屍蝋を調べる。屍蝋の下には手記があり、それには、彼が須武田博士の先達の寺島博士だったこと、この納骨堂で、日本の過去に関する驚くべき秘密を発見したまま閉じ込められ、なすすべもなく死んだことが、記されていた。

 写楽は洞窟の奥底に転がり落ち、彼を追ってきた一行は、そこで驚くべき古代彫刻群を発見する。イースター島の石の顔、あるいは飛鳥の猿石や亀石を思わせる様式のものだ。切り札は写楽だ。バンソウコウが剥がされると、写楽は屍蝋(寺島博士の遺体)に火をつけて明かりを確保し、壁の文字を調査する。そして、死面堂氏が潰された床の穴こそ、ここからの出口であることを読み取った。ある手順で壁に触れば、開いた穴が、しばらくは閉まらないのだ。

 写楽は出口(死面堂氏のプレス死体付き)を開け、須武田博士は、古代彫刻群の部屋から、貴重な史料である土器のかけらをひと抱え持ってきて、床の穴から下の洞窟へ降りる。古代彫刻群の部屋の隅では、黒い影が、須武田博士を監視していたが..

 洞窟の中で、一行は、異様なものを発見した。寺島博士の靴と衣服だ。つまり博士は..壁の文字を解読して出口を開け、ここまでは来れたのだ。では何故、納骨堂に戻ったのか? 何故、こんなところに靴と衣服を残していったのか? 何かにひどく怯えたか驚いて、逃げ戻ったのではないか..?

 先に進んでいた写楽の呼び声。外への出口に辿り着いたのだ。入り口の重い扉の隣にある不気味な石像が、出口だった。写楽は、嫌な予感がするから、すぐ離れよう、と主張する。そして須武田博士に対しては、そのカケラを置いていった方がいい、と。貴重な学術資料を置いていく気などさらさらない須武田博士は、写楽に無理矢理バンソウコウを貼って、黙らせてしまう。

 現場を離脱しようとする一行を、地震が襲う! 彼らの周囲を取り囲むように地滑りが起こり、一行は、幅5メートル、深さ数十メートルの亀裂に囲まれた、陸の孤島に取り残された。飛び越すことなど論外だ。亀裂の手前の倒木を、対岸まで橋渡しすることに成功するが、亀裂の底から、黒くて巨大な、不定形の生き物の「手」が現われて、橋を破壊してしまう。さらに、その黒い「生き物」は、亀裂の内側に残された木をことごとくへし折り、脱出するすべを奪ってしまう。

 やがて夜になる..やむを得ず、陸の孤島の中で眠りに就く一行。あの巨大な生物はなんだろう? そもそも地上では、動物はあまり大きくなれないものなのだが..その時、黒い不定形の生物が、眠っていた須武田博士と写楽を襲う! しかし..その黒い物体(生き物)は..泥だった! 唖然とする一行。須武田博士が持ち出してきた土器のかけらは、その泥に持ち去られていった。あの泥は、亀裂の底からやってきたのだ。というより、何かが、泥をつけて這い登ってきて、泥を残して戻っていったのだ。何故、彼らを襲いながら殺さなかったのか? なぜ、土器のかけらを奪っていったのか?

 その時亀裂の対岸に、和登サンの叔父が現われ、彼の手助けで、一同はかろうじて脱出に成功する。また、住職は、ヒョウタン型の土器を、ひとつだけ持っていた。あの地震の前に、チリーンチリーンと鳴り続けた土器だ。ひとつだけ、壊れずに残っていたのだった。

*ボルボック編 第3章 またもや行方不明

 東京。須武田博士は、ヒョウタン型土器の研究に余念が無い。和登サンは、研究所の中で、うっかり写楽のバンソウコウを剥がしてしまい、写楽は、あの土器を調べるのはオレだけだ、何故ならあれは三つ目族の遺産だからだっと宣言すると、「アブドル・ダムラル・オムニス・ノムニス・ベル・エス・ホリマク」。例の“ホコ”が引き寄せられ、写楽はこれを使って壁を熔かすと、部屋から出て行く。(なんでわざわざ、こんな派手な出方を。ドアがあるのに。[;^J^])

 夜の街道。写楽は、70年代ファッションのカップルの車を、“ホコ”の破壊力で脅してカージャックすると、高速道を、北へ北へと走らせる。さらにタクシーに乗り換えて(そこまで乗ってきた車は破壊して、カップルは追い払い)、岩手県のはずれの三途が浜へ走らせる。タクシーで追跡する、和登サンとヒゲオヤジ..

*ボルボック編 第4章 秘境へのアプローチ

 奇怪な岩。秘境の様相を呈する三途が浜。タクシーを降りた写楽は、タクシーを破壊して運転手を追い返し、三途が浜の危険な断崖を降りて行く。断崖の下の奇岩群に、呪文と“ホコ”の光線を浴びせると、例の棒が、環状列石が、岩の中から現われた! 三つ目族の祖先のカギだ!

 ついに追いついた和登サンとヒゲオヤジ。彼らが崖を降りてくるのに気がついた写楽は恫喝するが、和登サンの「ボクを愛してんだろう」という色仕掛け [;^J^](パンティーのプレゼント付き)に、しぶしぶ折れる。

 写楽の説明によると、これは三つ目族の先祖の、日本上陸のしるしなのだ。2〜3万年の昔、彼らは2トンもの重さのある柱を船に乗せて、ここに上陸すると、領土を示すために柱を立てた。そして土でこれを隠した。死面堂家の納骨堂の周囲に、同じような柱が並んでいたのは、彼らの子孫が長いあいだに、各地に散らばっていったからだ。

 彼らは近くの洞穴を住居としたはずだが、見つからない。沈降海岸なので、長いあいだに入り口が沈んでしまったのだ。写楽は、近くで仕事をしている海女さんに手伝わせて、地上から地下の洞窟への穴を開ける。そして、3人が洞窟に降りて行ってみると..

 そこは、蟹の巣窟だった! 写楽の“ホコ”で撃退し、さらに洞窟の奥深く進んでみると、またしても三つ目族の文字が。三つ目族の探検隊のキャンプの跡だ。写楽は、石筍を突き崩して、中から、黒くて大きい、不気味な形状の球根を掘り出した。

 これが、写楽の目的だったのだ。2万年前、彼の先祖たちは、これを船でどこからか運んできて、培養したのだ。食用ではない。彼らが長い年月をかけて進化させた、知性のある植物なのだ! これは、人間が他の動物を支配するように、他の植物を支配する植物なのだ!

 その時、洞窟の奥から、かすかに人の声が! 奥には、底知れぬほど深い縦穴と、縄ばしご。声は、その底から聞こえてきた。誰かが来ているのだ。やがて、誰かが縄ばしごを登ってきて、そのまま上に登って行ってしまった。隠れてやりすごしていた3人は、尾行するかたちで縄ばしごを登って行くと..地上に出た。寒々とした山の中だ。巨石文明の遺跡がある。石の柱が砕けた跡も。ここはどこだ?

 額に大きな瘤のある物凄く臭い男が、近くに隠れていた。彼は頭がおかしいのか、3人に向かって、おまえらはイヌかサルか? いずれにせよ、俺のナマズが地震を起こしたら、日本中みんな死ぬ! と、吐き捨てて、逃げて行ってしまった。

 自転車に乗った地元の青年をつかまえて道を聞いてみたら、やはり無愛想に、イヌかサルか聞き返される..どうやら様子が判ってきた。この小さな村は、犬神の霊を祭るイヌの家と、猿神の霊を祭るサルの家に分かれて、昔から争ってきていたのだ。あのナマズ男は、イヌでもサルでもないから誰にも相手にされない、ろくでなしだよ、と青年は言い捨てて、走り去って行く。

 へとへとに疲れた3人は、ひとやすみしようと、近所の民家を訪ねる。そこには犬神の像があった。イヌの家だ。写楽はいきなり“ホコ”で神像を破壊し、中から、例のヒョウタン型の土器を取り出す。この村の家々の神像には、全て、この土器が隠されているのに違いない!

 当然のことながら騒ぎになり、村外れまで逃げた3人の前に、あのナマズ男とそっくりの、不気味な黒づくめの男が現われた。古美術商の青玉である。彼は写楽の名を知っていた。

 青玉は3人を自分の家に案内する。あのナマズ男(吾平)は、彼の(頭の弱い)弟なのだ。青玉は商売柄、古代美術の珍品に関心が深く、それらにしばしば三つ目の像があるところから、写楽にも興味を持っていたというのである。彼はまた、3人が掘り出した「球根」にも興味を示すが..

 そこに吾平が帰ってきた。こいつら(3人)は、ナマズを取っちまう、と、わけの判らないことを言う。

 その夜、3人が寝静まったころ、青玉は、こんなくだらん球根ばかり、取ってくるな!と吾平を鞭打って折檻していた。吾平が持って帰ってきたのは、写楽も発見した、あの、黒くて大きい、不気味な形状の球根である。吾平は命ぜられたとおり、球根を地面に埋めるが、その穴の中には、多数の球根が..


*手塚治虫漫画全集 111


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jul 15 1998 
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