ゴダル編 第2章 竜安寺にて物語は、紀元前2400年前に始まる。三つ目族の強大な王国・レムリヤの、残忍冷酷卑劣非道なゴダル王子は、ウル王朝を滅ぼし、シグアナ王女を奪った。しかし囚われの身でありながら、シグアナ姫は三つ目人の超能力のもとが額の目であることを知り、絶対にはがれないバンソウコウをゴダルの額に貼って、尻にしいていた。ゴダルはその度に、家来に魔法の薬で剥がしてもらっていたのだ。ゴダルには姫に惚れた弱みがあり、彼女の下着まで洗っていたという。(つまり、ほとんど写楽と和登サンの前世なのである。キャラクターもそのように描かれている。)
ある日シグアナ姫は、三つ目人の超能力の最大のものが、ホア・カバリ・キルマという術であることを知ると、危険きわまりない術だからと渋る王子に、どうしても見せてくれ、と、王子にねだる。それは、肉体と霊魂を分離する魔法。ある壺の中で薬を飲めば、魂は生き霊となって肉体から抜け出すが、壺の場所は覚えているので、抜け殻の肉体に無事に帰ってくることが出来るのだ。
ゴダル王子は、実演して見せる。壺の中に入って薬を飲むと、エクトプラズムのような白いモヤが体から吹き出し、動かなくなってしまった。
シグアナ姫は、この時を待っていたのだ。秘薬で王子の体を溶かしてしまうと、壺に蓋をしてしまった。もはや王子の魂には、戻るべき肉体は無く、壺の中に永遠に封じ込められてしまったのだ。これが、ウル王国を滅ぼされた、姫の復讐である。彼女は壺を、王の墓所の地中深く埋めてしまった..
時は流れて、現代。須武田博士は香港で、とある壺を買って日本に持ち帰って来た。それには三つ目の人間が彫られていたのだ。これを写楽に見せようという訳である。
写楽が来る前に、和登サンが、壺のある部屋に一人っきりになったとき..そのとき、壺の蓋が、内部から開けられて、和登サンは壺の中に吸い込まれてしまう!
中には、ゴダルの霊魂がいた。和登サンをシグアナ姫だと思い込んでいるゴダルは、お前の体を貰う、お前はの魂はこの壺の中で、別の肉体を待つがいい! 身からでた錆だ! と、和登サンの体に乗り移って、壺から這い出ると、壺に蓋をして、和登サンの魂を閉じこめてしまった。そこへやって来たのが、バンソウコウをした写楽である。自分にそっくりな少年の出現に驚く、和登サンの姿をしたゴダル(以下、単にゴダル、または、和登サン(ゴダル)と書く)は、これこそ自分に相応しい肉体だと、写楽を捕まえるべく、追いかけて出ていってしまう。そこへやってきたのが、一匹の野良猫。野良猫は誤って壺の中に落ち込み、その中に和登サンの魂が入り込んでしまう。猫(和登サン)は、写楽とゴダルを追って、走り出てゆく。
舞台は、地下水道に移る。元の自分の姿とそっくりな写楽の肉体が欲しい、ゴダル。彼は、地下水道に渦巻を起こして写楽を翻弄するが、
「けがれた衣服をはがし、聖なる水にて洗礼をさずける!」と、額の札を剥がして驚く。なんと、写楽も三つ目人だったとは!
さんざんに弄ばれて怒り狂った写楽とゴダルの念力合戦! 一族中最高の魔力の持ち主のゴダルといえども、二つ目人(和登サン)の肉体に入っていては、そのパワーを存分には発揮できない。ついに写楽に念力を封じられ、和登サンの肉体は硬直する。
身動きならず手も足も出ないゴダルへの、写楽の訊問。レムリヤ王国の支配者・ゴダルは、レムリヤは既に亡く、三つ目人も写楽ひとりを除いて滅亡したと聞かされて、衝撃を受ける。では、帰る国はないのか? それは早合点だぜ、帰る国がなければ作りゃいいんだ、と写楽。(そう来るか。[;^J^])
「この日本という国を滅ぼして、三つ目人の国をうちたてるっ それがオレののぞみだったのだっ」そして、今は三つ目人はオレひとりだが、和登サンと結婚して、100人くらい子供を生ませる! もちろん、和登サンは承知しないにきまってるが、三つ目人の魂なら都合がいい。(おいおい。[;^J^])
「バカいえっ 私は男だぞーっ」
「バッカだなー、タマシイに男も女もあっかい!!」
「それもそうだな……」(お前は、肉体が和登サンなら、魂はゴダルでも、子供を生ませられるのか? [;^J^] 納得してしまうゴダルもゴダルだが。[;^J^])
そして写楽は、和登サンとなって写楽のいいなりに従うというゴダルを、ひとしきり念力(電撃)で痛めつけると、奴隷のゴダルに肩車させ、アジトに向かって、地下水道を去って行く。それを見ている猫(和登サン)は、憤懣やるかたないが、どうしようもない。
ゴダル編 第3章 ゴモラ始動す写楽は、和登サン(ゴダル)を京都の竜安寺へ連れてゆく。“イースター島編”の最後で、パンドラが告げた言葉「竜安寺に、三つ目族の国への地図がある!」を、確かめるためだ。石庭を見たゴダルは、まさにレムリヤ王国の海図に他ならない、と、断言した。パンドラの言葉は正しかったのだ。すると、これを作ったのは、三つ目族の子孫なのだろうか..? その時、彼らを尾行していた猫(和登サン)が、隙をついて写楽の額にバンソウコウを貼ってしまう。幼児モードに移行して、石庭で砂遊びを始め、住職たちに追い回される写楽を、猫(和登サン)は石庭の外に逃がし、自分が和登サンであることを、なんとか写楽に教えようとするが、無邪気な写楽には伝わらない。そこに、和登サン(ゴダル)が現われ、猫(和登サン)を念力で痛めつけ、追い払う。
ゴダルは写楽を、バンソウコウを貼ったとたんに子どもに帰ってしまうことを、いぶかしく思いながら、林の中の古堂に連れ込み、ここを石庭調査のアジトとして、思索にふける。何故、石庭に見せかけて、海図を書いたのか? もしかすると、レムリヤに帰る計画があったのではないか? だとすれば、密かに船を隠してあるはずだ。ゴダルは、その場所を探るべく、写楽に地図を買いにいかせる。幼児写楽は、立て看板から町内の地図を剥がして持って来るが、ゴダルはその間に重大な発見をしていた。本尊が地下の秘密室への入り口になっていたのだ。ふたつに割れた本尊の中の階段を下りて行くと..そこに船があった! そればかりではない、レムリヤの殺人超兵器、ゴモラも!
その頃、京都府警「壬生屯所」では、雲名警部が、新選組の法被を着たキングコング面の上司から、写楽の連行、もとい捜索を命じられていた。数日前から行方不明になっていて、捜索願いが出されている上に、今日も今日とて竜安寺でひと騒ぎ起こしたばかりだという。京都では、近々、先進国首脳会議が開かれる。写楽の失踪と騒動は、これに関係しているに違いない! またしても写楽と関らねばならない雲名は、己の運命を嘆く。
一方、ゴダルは新聞で、3月13日に世界の強国の王たちが京都に集まることを知る。チャンスだ! 彼らを皆殺しにして、レムリヤの覇権を復活させるのだ! ゴダルはゴモラを地下から運びだし、スタンバイさせる..
ゴダル編 第4章 ハプニング「ソドム」と「ゴモラ」。それはレムリヤの秘密兵器であり、ソドムは火の硫黄を、ゴモラは氷の刃を、敵の頭上に降らせるものだった。
和登サン(ゴダル)がゴモラの整備をしている間に、猫(和登サン)が写楽に気を引き、自分が和登サンであることを知らせようとするが、無論、写楽には伝わらない。それどころかゴダルに見咎められ、ゴモラの試運転だとばかりに氷の刃を頭上に見舞われる! 猫(和登サン)は間一髪脱出するが、駆けつけて来た雲名らのパトカーは、氷に潰される。
会場の「みやびホテル」に集まって来る、世界各国の首脳。5万人の大警備陣。
「こんなに世界の大物がそろって日本をおとずれたのは、歴史始まって以来です! じつにすごいできごとです!
(…中略…)
無事に京都で首脳会議を終わらせられるかどうか、ここに日本政府の国際的な面目がかかっているわけです」という、アナウンサーの台詞が、当時(1977年)の日本のコンプレックスを、あますことなく表現している。(実際、日本が(一見して)一大警察国家に変貌した“あの”東京サミットは、この数年後である。)
その夜、竜安寺で食事をしながら、「会議などしても無駄だよ。どこの国の王だって、自分のことしか考えていないのだから…」と、ゴダル。
写楽が持ち帰って来た町内の地図を、京都全図だと思い込んだゴダルは、銭湯「みやび湯」を、王たちが宿泊する「みやびホテル」だと誤解して、ゴモラの氷塊で攻撃する。銭湯には、いうまでもなく、不運な雲名らが入っていた。
間違いに気がついて、改めて「みやびホテル」を攻撃するゴダル。甚大な震動と庭を覆う氷塊群は、VIPらを驚かすが、ホテル自体はびくともしない。作戦を変えたゴダルは、ホテルの支配人を「ホテルから外に出るものがあれば、氷で叩き潰す」と脅迫する。要求は、「ホア・カバリ・キルマの壺」と「写楽のバンソウコウの剥がしかた」である。
脅迫電話は子供の声であった。しかし明らかに悪戯電話ではない。雲名のキングコング面の上司こと、泣く子もよけい泣き出す壬生シークレットサービス局長、芹沢家鴨は、写楽保介を想起する。
夜。竜安寺。野望を膨らませるゴダル。写楽のバンソウコウを剥がして、彼にソドムを作らせるのだ。次いで危険極まりない写楽を、ホア・カバリ・キルマの壺に押し込んで霊と肉を分離した上で、写楽の三つ目人の肉体をいただく。そして完全な三つ目人として蘇ってから、ソドムを使ってこの国中に火の硫黄を降らせて、滅ぼしてしまうのだ。(完璧なプランである。)
夜明け前。壬生屯所。芹沢家鴨と、犬持医師、須武田博士。事情の説明を受けた芹沢は、そんな物騒な三つ目は潰して、二つ目にしてしまえ!と吠え、犬持と口論するが、時間となり、ゴダルの元へホア・カバリ・キルマの壺を運ぶ犬持、須武田とは別に、30人のシークレットサービスを張り込ませる。写楽を捕縛できなければ、即、射殺してしまえ!..
ゴモラの攻撃シーン(108頁)は、結構見応えがある。光線が上空で巨大な氷塊を作り、それが降ってくるだけ、という、地味な兵器なのであるが。
ゴダル編 第5章 地下水道さて、犬持と須武田(及び彼らを囮にして、写楽を捕えようと部下を配備する、芹沢)たちに先立って、雲名はふたりの部下を伴って竜安寺に潜入したはいいが、地下洞窟に転落して、ゴダルに捕えられてしまう。
その少しあと、SSが張りこむなか、犬持と須武田はホア・カバリ・キルマの壺を運びこむ。そこにいたのは、和登サン(ゴダル)であった。驚くふたりに事情(自分の正体)を説明するゴダル。SS登場。しかしゴダルは人質(雲名たち)を捕えているという証拠を見せて、彼ら全員を追い返し、ホア・カバリ・キルマの壺と、写楽のバンソウコウを剥がす処方箋を地下洞窟に運びこむ。
バンソウコウを剥がすゴダル。その瞬間、写楽は反撃に転じ、ゴダルの目にバンソウコウを貼って視力を奪うと、さんざんに打ちすえ、再度、ゴダルに絶対服従を誓わせて、資材調達(自転車、電話機、自動販売機)を命じる。ゴダルは従いながらも、腹の底深く、復讐を誓うのである。
ひとりになった写楽は、首脳会議を襲う攻撃作戦を練るが、体調が思わしくない。風邪を引いたかな..一方、竜安寺の近所で寝ていた猫(和登サン)は、和登サン(ゴダル)が念力で自動販売機を運ぶのを目撃し、彼のあとをつけて、地下室にもぐり込む。
ホテルにて。いよいよ首脳会議。芹沢は万全の警備体勢を敷く。会議場は地下。万一、氷が降って来ても、地下ホールは防音耐震の設備が完全だから、影響はない。
竜安寺にて。大車輪で攻撃兵器を作る写楽は、伸びている3人(雲名と部下たち)に、何やら小さな装置を飲ませると、ゴダルに命じて彼らを会場のホテルのそばに捨てに行かせる。その隙に猫(和登サン)が写楽の元へ。彼女はついに、自分が和登サンであることを写楽に伝えることに成功する。しかし、いくら写楽でも、今は彼女をゴダルが占有している体に戻すことは出来ない。その方法は、ゴダルしか知らないのだ。時を待て、と彼女を慰める。
しかしどうやら写楽は、本格的に風邪を引いたらしく、高熱を発して寝込んでしまう。そこに帰って来たゴダル。千載一遇のチャンスである。
「よくきくカゼ薬をつくってあげるよ。待っておいで……。フフフフフフ……」(その頃、ホテルの近くで意識朦朧としていた雲名らが救出され、ホテルの警備本部に保護されるが、医師が目を離した隙に姿を消した..)
ゴダルはもちろん、カゼ薬など作るつもりは毛頭ないのだ。写楽のために調合しているのは、ホア・カバリ・キルマの秘薬! これをカゼ薬と偽って飲ませ、体力の弱っている写楽をホア・カバリ・キルマの壺に押し込んで、写楽の霊と肉を分離する! ..しかし、ゴダルも倒れた。風邪をうつされてしまったのだ。レムリヤには流感が存在せず、ゴダルには免疫がなかったのである。
寝込むふたり。もう会議は始まっている頃だのに、こんなことをしている場合ではないっと、気ばかり焦る写楽。 ..ふと、ホア・カバリ・キルマの壺を見ていて、どうやってゴダルが和登サンの体の中にもぐりこんだのか、直感した。やはり体力の衰えているゴダルを責めて、ホア・カバリ・キルマの秘薬と壺の秘密を吐かせる。しかし秘薬の作り方は教えないよ、と粘るゴダルに、どうせオレもお前も、先は長くないさ、と、ハッタリをかける。つまり、流感を知らないゴダルに、これは死病だと脅しをかけ、ふたりが助かる道は、ただひとつ。他の人間の健康な体を手に入れ、ホア・カバリ・キルマの魔法をかけることだ、と..
ゴダル編 第6章 三十六計ホテルの地下会議室で刻々と進行している、首脳会議。昼食時間になり、完全に密閉された部屋がようやく開けられ、首脳たちは食堂へ。一方、姿を消していた雲名たちは、厨房をうろついていた。何故か酸っぱいものを食べたくて食べたくて仕方がなかったからである。ドレッシングのボールを見つけて貪り飲む三人は、写楽に飲まされた小さな機械をその中に吐き出してしまった。そのドレッシングは運び出され、首脳たちのサラダにふりかけられる..
昼食が終り、再び完全密閉の会議室に戻った首脳たち。その頃写楽はゴダルに、計画の全貌を明かしていた。つまり、世界の首脳たちの体を乗っ取り、世界を征服する! 京都盆地の地下には、古代の地下水脈が縦横に走っており、この竜安寺からみやびホテルの地下まで、太い地下水流に乗って行けることが判っているのである。既に仕掛けはした。あの三人の警官が、ある仕事をしてくれたはずだ。あとはオレたちが乗り込むばかりの段取りになっている.. ゴダルはその計画に乗り、フラフラの体で秘薬を作る。写楽は写楽で、フラフラの体で潜航艇(これを作っていたのだ)を完成させると、秘薬を地下室に置いて、乗り込め、とゴダルに命ずる。掘削機付きの潜航艇は地下水脈を掘り当てると、そこにもぐりこみ、ホテルの地下へと潜航する..
その頃、地下会議室では、大事件が起こっていた。首脳たちが次々と猛烈に臭いガスを発し、密閉された部屋から脱出する暇もなく、全員気絶してしまったのである。雲名たちに運ばせた装置が、ドレッシングに毒を混ぜたのだ。
潜航艇が着いた! 気密服を来て乗り込んだ写楽とゴダルは、合衆国大統領らを誘拐して引き上げようとするが、潜航艇が流されてしまっていた! 脱出できない! 外部では、ガスの悪臭に気がついて、ロックされたドアを破り始めた。誘拐は諦めだ。脱出が先だ。写楽は脱出用の装置を作り始める。
ドアが破られた!
SSとガードマンたちが、会議室に飛び込んで来た! 首脳たちは全員気絶。怪しい服を着たふたり。どうもこうもない状況である。
その時、写楽の手にした銃から、不思議な光線が発せられ、それを浴びた人間は、自分が首脳だと主張しはじめる。暗示光線である。騒ぎに乗じてホテルから脱出することに成功したふたり。その前に立ちはだかったのが、犬持と須武田である。須武田は、ゴダルがレムリヤの王子ならば、今度派遣されるレムリヤ発掘調査隊に協力してくれ、と申し出る。(そんなことを相談している場合じゃないってば。[;^J^])ゴダルは、流感は死病ではないと知って、写楽を殴り倒し、三人を人質にして車で脱出、竜安寺の古堂の地下のアジトへ向かう。
古代船の遺物を見出した須武田は、これこそ三つ目人の国が存在した証拠、と、感涙にむせぶが、現実主義者の犬持は、須武田の感動を歯牙にもかけず、早くこんなゴタゴタを終わらせたい、と望むばかりである。
バンソウコウを剥がしたゴダルは、そのバンソウコウで写楽の三つ目をふさぐ。そしてホア・カバリ・キルマの魔法で写楽の肉から霊を分離しようと、作り置いておいた秘薬を探してみれば、誰かが半分飲んでしまっている! 猫(和登サン)だ! 秘薬の残りを飲んだゴダルは、殺してやるとばかりに猫に角材を投げつけるが、はずみで猫(和登サン)は、ホア・カバリ・キルマの壺に落ち込んでしまう! 和登サンの魂は猫から抜け出して、壺の中でエクトプラズム状に。猫は文字どおり魂の抜け殻となる。
猫の肉体から和登サンの霊を分離するつもりはなかったのだが、それはそれとして、あとはゴダルの霊を和登サンの肉体から、写楽の霊を写楽の肉体から、それぞれ分離して、和登サンの魂は和登サンの肉体に返し、ゴダルの魂が写楽の肉体に入りこめば、出来上がりである。残った写楽の魂は? 永久に壺の中さ。そうはさせぬと歯向かう犬持だが、ゴダルの念力にかなうわけがない。ゴダルは秘薬の最後に残った分を写楽飲ませ、霊肉を分離しやすいように、写楽を裸にし、自分も裸になるが、幼児モードの写楽は、和登サンの裸に大喜びではしゃぎまわり、はずみで船に火が燃え移る!
考古学の貴重な資料が燃え上がることに(例によって)パニック状態になる須武田。壺を運びだそうとするゴダル。この時、もっとも冷静だったのは(魔法もエクトプラズムも頭から信じていなかった)犬持で、既に秘薬を飲んでいた和登サン(ゴダル)を壺の中に突き落すと、須武田に手伝わせて(薬が効くまで)三分間押さえこむ。
「犬持くん、やっぱりきみは、この壺の魔力を信じるようになったのかね」
「信じるもヘチマもない!! やってみなきゃ、このさい……」成功である! 和登サンの肉体からゴダルの霊が分離し、中で漂っていた和登サンの霊が、元の肉体に帰ったのである! かわりにエクトプラズム状態になったゴダルの霊。そこで魂の抜け殻状態であった猫を放り込み、三分間。猫のゴダルは壺から飛び出して逃げ出し、船は燃え、地下室全体が炎に包まれ、元に戻った和登サンを加えた4人は、バラバラに脱出する。古堂は燃え上がり、山火事に..
新幹線。猫になっていた夢をかすかに覚えている和登サンには、夢だったのだから、忘れろ。船の炎上を覚えている幼児写楽にも、それも夢だったのだから、忘れろ! また、夕刊によると、先進国首脳会議では、一同が春先のこととてボケて、何か突発事故が起こったのだが、そのことをすっかり忘れてしまっている、と。忘れたのなら、万事OK、と、冷や汗を拭う、犬持と須武田。
真相を知るものが、ひとりだけ京都に残った。それは五条の橋の下に住みついた、うすぎたないノラ猫である。
この作品を文章で説明するのは、実にややこしかった。和登サンとゴダルの肉体と人格の入れ替わりの件、混乱せずに読み取れただろうか? 実のところ、ぼんやりと読んでいると、絵付きで読んでいても、誰が誰だか見失ってしまいそうになるのである。[;^J^](この霊魂と肉体のパズル、一番最初に猫から追い出された猫の霊魂が、勘定があわないのだが、まぁいいでしょう。)
オチは悪くないが、いずれにせよ格別の傑作では、ない。
しかしこの作品、ゴモラの地味な攻撃(氷塊を落すだけ)の無骨な迫力と、ゴモラ自身のデザインの良さ。そして(時事ネタに近いのだが)70年代後半にもなって、なおも日本と日本人を色濃く覆っていた「外人」コンプレックス(あるいは「国際」あるいは「先進国」コンプレックス)を、生き生きと証言している点で、興趣尽きない。
そして、潜航艇の面白さ。ガラクタから超兵器(超装置)を作り出すのは、この作品全体を通じての(ワン)パターンであるが、このゴモラ編では、特にその“楽しさ”が際立っているように思える。自転車と電話機と自動販売機という“材料”のリアリティが、絶妙だからだろう。私も、小学生時分には、この位の材料があれば、タイムマシンだろうが宇宙船だろうが、自在に組み立てられたものである。(無論、夢の王国でだ。)男の子なら、誰だって、この位のことは出来たのだ。女の子のことは、知らない。
(文中、引用は本書より)
Last Updated: Oct 15 1996
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