三つ目がとおる 2

*イースター島編 第6章 ポキの島

 写楽に結婚を迫るポゴは、俺の恋人は和登サンだという写楽の言葉を聞いて、その女を家来に殺させる!と宣言する。ポゴは、ポキ族の女王なのであった。なおも迫るポゴを連れて船に戻った写楽を出迎えたのは、銃を構えた戦闘服の男たち。ついに“幽霊船”が、その正体を現わしたのである。彼らが姿を現わさずに船を動かしていたのであった。彼らは写楽を、船底のさらに“下”へ連行する。それは、超近代設備の潜水艦。そこにパンドラがいた。雲名も既に捕えられている。

 この潜水艦は、ソ連の新造艦と同タイプのもの。設計図のコピーを盗みだして、あちこちで部品を作って組み立てたのだ。無論、盗みだしは全てポキがやった。彼らが向かうはパンドラの島。どこの海図にも載っていない、個人所有の島。遥かな昔、パンドラの祖先の長耳族と、写楽の祖先の三つ目族が、所有権を争って戦った島。

 島に上陸する一行。そこには飛鳥の遺跡の猿石とそっくりな石が、ごろごろ転がっていた。猿石の謎を解く鍵は、この島に..?

 その時、一行の周囲に現われたポキたち。裏切り者の女王・ポゴを処刑するのだ。ポゴはポキ族に捕えられ、処刑台にはりつけられる。次々と槍を投げる雌。女王を殺した雌が、次の女王になるのである。しかし彼女らの槍は、写楽の念力で逆戻りし、逆に投げ手を刺し殺してしまう。対抗馬が皆死んでしまったので、ポゴはまた女王に選ばれ、ポキたちを解散させる。パンドラは、この島では、もう念力を使うな、と、写楽の隙をついて兜を被せてしまう。それは額の目を覆い、写楽はまた、幼児になってしまう。ポゴは、写楽の兜を外せ、と、パンドラに迫るが、お前たちを保護して智慧をつけてやったのを忘れたか、と、パンドラに大喝され、引き下がる。

 遺跡に監禁された写楽。夜になってポゴが訪れ、彼の兜を外そうと試みるが、どうしても外れない。かつて写楽に習った方法で爆弾を作って仕掛けるが、それは兜の代わりに、壁を破壊する。写楽を連れて脱出したポゴは、彼を地下のポキ族の国へ連れてゆき、そこで結婚式をあげる。

*イースター島編 第7章 調合台

 浜辺で行われている、ポキ族の戦闘訓練。それを指揮しているパンドラは、女の姿に戻っている。急速に智慧をつけているポキは、やがては近代兵器も使いこなすだろう。その時こそパンドラの復讐の時。ポキに日本を占領させる、ただそれだけのために生きているのだ。パンドラの敵は、“日本”なのである。

 そこへ、ポゴが写楽を逃がしたという報せが入る。もう許せない、ポゴを殺せ!というパンドラの命令で、ポキの洞窟にガス弾を打ち込んで、突入するパンドラの手下たち。間一髪、ポゴと写楽に逃げられたパンドラは、見せしめのため、捕えたポキ達を全て焼き殺す。

 ポキは写楽を、地下遺跡へと導く。そこには一面に髑髏が彫られた、不気味な壁があった。パンドラは、何度もここに来ては、この壁の向こうへ行こうとして、果たせないでいるのだ。何か秘密の仕掛けが、秘密の扉があるのだ。その謎を解くために、写楽の頭脳が必要だったのだ。

 判るか?と、ポゴが聞く。幼児モードの写楽には、謎が解けないどころか、そもそもその謎に興味を持たずに眠ってしまう。こうなったら、写楽の兜を外すしかない。ポゴは思い切って、パンドラをここに呼ぶことにする。

 パンドラの部屋に現われたポゴは、パンドラと下男を、写楽が眠っている場所に案内して、逃げる。パンドラは、自分がその謎を解こうとしていた壁の前で眠っている写楽に、罠ではないかと警戒しつつも彼を叩き起こし、彼が思い付いた“黒い目”というキーワードを聞き出す。それに従って、黒い(手垢で汚れた)骸骨の目を順に押して、隠し扉を開けることに成功する。まだこの先にどんな秘密(罠)があるか判らないので、彼らは写楽を連れて、奥へ進む..

 長耳族の無数の屍蝋を踏み越えた、行き止まりの壁には、イースター島のロンゴ・ロンゴと呼ばれる謎の文字とそっくりの文字が、彫られていた。これを解読させるために、パンドラは写楽の兜を外し、第三の目を開かせる。

 写楽は、これはひとりの長耳族が、死の間際に書き残した遺言であり、長耳族の歴史が書いてあるに過ぎない、と、パンドラを嘲弄する。しかし地下倉に通ずる道があるはずだ!と迫るパンドラ。写楽は、そんなものならここにある、とばかりに、秘密の入り口をあっさり開ける。(パンドラは、長耳族が残した超兵器、あるいは、対日戦争資金となる財宝が、欲しいのである。)

 その地下通路には、何に使うのか、奈良の酒船石とそっくりの石版が大量にたてかけられており、その先の断崖絶壁の通路を越えた時、パンドラの背中に、大きな醜い傷痕があることが明らかになる。パンドラは、自分の呪われた半生を語る。

 彼女は10年前には、東南アジアのある国で、日系の化学メーカーの工場に勤めていた技師だったのだ。ある日、その工場で、何十人も死ぬ大事故が起こり、パンドラも大怪我をした。しかし日本人幹部たちは責任を取らず、逆に彼女を工場から追い出したのだ。こうして、パンドラの、日本人への呪いと復讐の旅が始まったのだった。

 彼女はある島でポキを発見し、これを日本人への復讐の道具とするために、保護し、殖やし、智慧をつけ、殺しを教えたのだ。今回の事件の発端であった、三角山での三人の死体は、ポキに殺させた、あの会社の重役たちだったのだ。

「日本人は、ずるがしこくって利己主義者でいばりくさってる!! そのわけは、日本人には三つ目族の血がまじっているためだ。それにひきかえ東南アジアやポリネシアには、長耳族の血がのこっているのだ! 三つ目族は私たちの敵 −−そして日本人もよ!」

 遠大で崇高な使命感の割には、ポキにさせている、こそこそとしたわるさは、さまになんねーな、と、写楽の嘲笑。

 彼らは偶然、さらに地下深く降りてゆく巨大な秘密の通路を発見する。これこそ、パンドラが長年探していた、長耳族の遺産の隠し場所に違いない!

 その行き止まりの部屋には、無数の猿石と、いくつかの酒船石があった。写楽は、その秘密を見抜く。猿石は薬の原料のカプセル、そして酒船石は、薬の調合台なのだ。様々なデザインの酒船石は、そのパターンに応じて、それぞれ別の薬を調合できるのである。写楽はためしに、ひとつの薬を調合してみせる。

「さて、できた薬をためすかい? あんたがのんでみる? いやだろうね?」

 (いやに決まってるだろーが! [;^J^] どんな薬が調合されたのか、全然判らんのだぞ! [;^J^])

 ふと目を離した隙に、その薬がなくなってしまう。二人のあとを、こっそりとつけて来たポゴが、盗みだしたのだ。慌ててあとを追う、パンドラ。しかし遅かった。地上に戻ってみれば、彼女の部下は、全てポゴの奴隷=ポゴのいいなりになるロボットと化していた。ポゴが薬を飲料水に放りこんだのだ。

 大勢の家来を殺されたポゴの復讐である。ポゴはこの薬をパンドラに飲ませて奴隷してしまおうとするが、そこに駆けつけた写楽が、ポゴを制止する。人間を全てダメにされると困るからだ。何故なら日本に帰れなくなるからである。それを聞いたポゴは、ポキ族全員、日本に移住する、日本人全てに薬を飲ませて奴隷とし、日本をポキの国にする!と、宣言する。

 幽閉されていた雲名を救出した写楽は、どうやらポゴのプランに乗ったようだ。写楽、パンドラ、雲名、そして生き残りのポキ全員を乗せた潜水艦は、出港する。

*イースター島編 第8章 モアイは謎をひめて

 船長室でふんぞり返っている写楽に、パンドラは、三つ目人の祖国の場所を教えよう、と、申し出る。三つ目人の祖国の場所を記した海図のある場所を、彼女は知っているのだ。それはイースター島にあるのだった。写楽は興味を示し、ポゴの反対を押し切って、進路を日本からイースター島に変更する。パンドラに下心があることは、言うまでもない。

 その途上、アメリカの哨戒機に発見され、ミサイル魚雷の攻撃を受けて浸水するが、例によってガラクタをかきあつめ、高性能の気化装置を作って危地を脱した写楽は、泳ぐダッチワイフ(としか形容のしようがない [;^J^] 人形)で、スケベなアメリカ軍人を、まく。

 この攻撃で、ポキが21人死んだ。ポゴは、三つ目族の祖国を探るという、写楽の個人的な興味のために、これ以上ポキ族の利益(日本に植民し、日本を占領する)を損なうわけにはいかないとして、写楽の隙をついて、額にバンソウコウを貼ってしまう。写楽は、またしても幼児に戻った。

 ポゴはパンドラに、日本へ進路を変えよと命じるが、時既に遅し。イースター島に着いていたのである。パンドラを殺せば、ポキだけでは潜水艦を動かすことは出来ない。雲名も含めて、全員が上陸する。

 そこに待っていたのは、一見して不良学生風の、パンドラの弟・バンドン。そして、小悪人・ガルシア(ハム・エッグ)。形勢逆転である。バン・ドンとガルシアは、ポゴを捕獲する。その間に雲名は脱走に成功するが、かけこんだ村では日本語が通じず、結局留置場に。

 パンドラ、バン・ドン、ガルシアは、写楽とポゴを引っ立てて、ラノ・ララク火山の麓の石切り場へ、ランドローバーで向かう。ここが旅の最終目的地だったのだ。写楽は、こっそりと、ポゴを逃がす。

 ここだけで276体のモアイが残っているという、モアイの制作場、ラノ・ララク。そもそもモアイは、なんのために作られたのか? 運搬資材用の材木さえほとんどない、この島で、どうやって島のあちこちへ、これほど巨大な石像を運ぶことが出来たのか? 一切が謎である。伝説によれば、ひとりの魔女がモアイを歩かせて、あちこちへ動かしたのだともいう。

 かつて、墓泥棒のガルシアが掘り出した古文書を買い取ったパンドラは、

「ラノ・ララクの『古き井戸』に、いりたる子ら泣きさけび、その声にてモアイ目ざめるべし」

という記述を発見したのだった。彼女は、その井戸を探し、そして見出した井戸の中には、一種の精神昂揚剤があった。それを飲んで精神力を高めた子供の超能力で、モアイを動かしたのに違いない。超能力は、大人よりも子供の方に、色濃く残っているものなのだ。(例えば、思春期の子供が引き起こす、石降り現象を見よ。)ましてや、古代三つ目族の末裔の、写楽においておや!

 バンソウコウを貼った幼児・写楽に、無理矢理薬を飲ませ、古文書の記述どおりに泣かせるために、鞭で追い回す、バン・ドン。泣き叫ぶ写楽。それに反応して、モアイ像が、動き始める! 震動し、浮遊し、ジャンプする! 恐れをなして逃げ出そうとしたガルシアは、潰される。そしてモアイ像は、麓の村と飛行場へ、向かう!

*イースター島編 第9章 ポゴ死なないで

 マタ・ヴェリ空港とハンガロアの村を粉砕する、モアイの群れ。モアイは、古代人の作った、念力を動力とする兵器だったのかも知れない。現代人は古代人よりも遥かに超能力が劣っているが、写楽は古代人の生き残りなのだ。

 もはやモアイは制御不能である。このままでは島が全滅だ。バン・ドンは写楽を殺そうとし、写楽を守ろうと飛び出して来たポゴと取っ組み合いになって、共にモアイに踏み潰される。バン・ドンは即死。ポゴも致命傷を追い、写楽の懸命の励ましも空しく、死ぬ。写楽の嘆き。モアイの暴走は止まり、ただの石像に戻ってしまう。写楽は涙ながらにポゴの墓を作る。

 パンドラは、写楽をイースター島の東のはずれの、オロンゴの丘へ連れてゆく。そこには、不思議な海図があった。地面の上に並べられた石! それは、驚くほど精密に、太平洋とその周囲の大陸、島々を写し取っていた。その中に、矢印状の石の列があった。それはインドの南の海上の島を指していた。そこが三つ目族の祖国なのだろう。

 パンドラは、さらに、日本に帰ったら、竜安寺を訪れろという。そこの石庭こそは、三つ目人の島をかたどって作られた、海図なのである。

 パンドラは、写楽と別れて、潜水艦に乗り込む。

「日本人への復讐が、私のただひとつの目的だった。だが長い歴史はくりかえす。長耳族をほろぼした三つ目人の国も今はない。
 おごりたかぶった日本人は、今のままほっておいても、いつかきっとほろびるだろう。
 私が手をださなくっても、今にきっと……」

 そしてパンドラは、船内に残っていた、生き残りのポキ族全員を道連れにして、自爆する。


 残念ながら、竜頭蛇尾といわざるを得ない。冒頭から前半までは良かったのだが、終盤になって、素材のベクトルがバラバラになってしまった。

という、個々のモチーフが調和せずに、互いに微妙に足を引っ張り合っているのだ。

 パンドラの正体(前身)がOL(技師)だったというのは、この悪事?のスケールに相応しい真相とは言えない。また、モアイ像の群れが“キョンシージャンプ”で村と飛行場に迫り、それらを壊滅させる、というクライマックスは、どうにも貧困な幻想といわざるを得ない。前半でいい味を出していた雲名警部も、後半はただのデクノボウで、いいところなく監禁されているばかりである。

 しかし、冒頭の怪奇ムードは実に素晴らしく、それぞれに個性的な謎に包まれた遺跡を経巡る航海記も、イメージ豊かである。後半はともかく、前半は、いまでも時折読み返すことがある。


*手塚治虫漫画全集 102

(文中、引用は本書より)


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Aug 2 1996 
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