ぼくの孫悟空 4

*第4巻 第1章 水爆坊やのわがまま

 道端で、むずかる子供をあやしていた娘。なんでも欲しがる子供のわがままを聞いてやってくれという娘の頼みに、三蔵は一行の懸念をよそに、彼らの得物を持たせる。子供はさらに三蔵の荷物も欲しがるのだが、さすがにこれは断る三蔵。すると女はたちまち妖怪の本性を現わし、三蔵を人形に変えてしまうと、得物が無くて戦うに戦えない一行を尻目に、さらって行く..と、ここまでは一見、あまりにもお約束の展開なのであるが、どうもこの子供は、本当にただの子供のようなのである。女にしても、三蔵を食おうとか、この機会に悟空を倒そうとかいうことは全く考えておらず、ただただ子供の機嫌を取っているだけである。

 三蔵を奪いかえしに来た八戒と沙悟浄もまた、なんなく人形にされてしまうなど、散々な目に会うが、子供に化けた悟空が「おいた」の限りをつくして、ついに女(妖怪)を降参させてしまう。彼女は実は、子供の屋敷で飼われていた豹だったのであり、子供の両親が死んだ時に、恩返しのため、子供の親がわりとなって、今日まで育てて来たのであった。子供を女に返して、可愛さのあまりに、わがままに育てるなよ、と諭して去る一行。

 爽やかな読後感の、一篇

*第4巻 第2章 クモ娘のむことり

 偽の茶屋の罠で一行を絡め取った、蜘蛛の妖怪銀糸仙人。彼の狙いは、三蔵を、彼の三人娘のうちの誰か一人の、婿とすることであった。蜘蛛に化けて蜘蛛の巣から脱出した悟空は、池に化けて、水浴に来た娘たちを捉えようとするが、彼女らに見抜かれて、ムカデの本体を現わして合体した彼女らに、手酷く噛み付かれる。(ムカデの合体となると、私はどうしても、後年の鉄腕アトムの「ガデムの巻」を思い出してしまう。)

 娘たちに化けて三蔵を救い出そうとした一行が、見抜かれてエライ目に会っている間に、悟空は桃太郎の桃よろしく川に流され、川下の村の生き残りである老人夫婦に拾われる。(他の村人たちは、ことごとく蜘蛛の化け物親子たちに食われてしまったのであった。)この家だけは襲われないという老人の言葉にヒントを得た悟空は、老人の家では鶏が飼われていたことから、巨大な鶏に化けて、蜘蛛の化け物たちを退治する。

 個人的に、この蜘蛛の妖怪のエピソードの幻想は、西遊記の中でも、最も好きなものである。(諸星大二郎版「西遊妖猿伝」でも、かなりの頁数を割いて、換骨奪胎されていた。)この章は確かに面白いのだが、少し短くあっけない。贅沢な注文であろうか。

*第4巻 第3章 烏鶏国の足のある幽霊

 珍しく化け物のにおいのしない寺で寝たと思ったら、次のコマで幽霊にかき口説かれている三蔵。このテンポの良さが、小気味良い。

 この幽霊は、烏鶏国の国王の魂である。カタキを討って欲しいというのである。5年前にこの国にやってきた山伏に、この寺の井戸で殺されて国を奪われたのだ。残された王子に、このことを伝えてくれという幽霊の頼みを、三蔵は引き受けた。翌日、狩りに出た王子は、一行のたくらみで寺に連れてこられるが、王子は彼らの言葉を信じない。何故ならば、父王は「生きている」からである。王が殺されたという井戸をさらう一行。骨は出てこない。しかし、父王の指環が出てきた。これを証拠として王子と一行は、山伏と(偽)父王を告発し、やっつけるが、王子は(偽)父王の口先三寸に丸め込まれて、彼の言葉を信じこみ、三蔵一行を水牢に閉じこめた。

 悟空は脱出して、父王が殺されたという井戸を調査する。なんとそこでは、5年前に殺された父王の「死骸」が、天国行きか地獄行きか決まらぬままに安置され、地蔵に守られていた。

 悟空は本物の父王を王子に引き合わせる。偽王の正体は国王の肖像画、退治された山伏の正体は、狼であった。

 ………納得いかん。[;^J^] 「これで何もかもめでたしめでたし」どうして父王が生き返るんだよ。[;^J^]

*第4巻 第4章 霊感大王はタイ焼きがお好き

 向こう岸が見えないほどの広大な川の岸辺に辿りついた一行。幅八百里の通天河である。霊感大王に、この川を奪われた巨亀。彼は息子を人質にされ、水に入れないのだった。岸辺の村では、霊感大王に捧げる生贄の子供たちとの別れの愁嘆場。悟空と八戒が子供たちに化けて霊感大王を退治しようとするが、取り逃がした。霊感大王は雪を降らせ、通天河を凍らせる。村人たちが氷の上を渡って行くのをみた三蔵一行も、凍った河を渡って行くが、これが霊感大王の罠。途中で氷が溶けてしまい、この時同行していなかった悟空を除く全員は、水の底に。

 救出に向かった悟空は、霊感大王の居城の水亀亭に潜入する。これは元来、例の巨亀の持ち物だったのであって、人質の息子もそこにいた。但しまだ分別のついていない年頃であって、霊感大王の権威を疑わない、忠実な家来となっていた。悟空は貝に閉じ込められていた八戒と沙悟浄を救い出し、三人、力を合わせて、金魚の化身である霊感大王を退治し、一行は巨亀にのって、通天河を渡るのだった。

 極めて平均的な出来栄えのエピソードである。しいて言えば、題材群がうまく噛み合っておらず、リズム感に難がある。


*手塚治虫漫画全集 15

(文中、引用は本書より)


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: May 25 1996 
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