第2巻 第2章 きれいな着物を着たい赤ん坊のごとき形態をしている、長寿の霊薬、ニンジンカ。病気の母のためにニンジンカを分けて欲しいとすがりつく貧乏な子供を、ニンジンカの持ち主は追い返す。「貧乏人はムギを食え」(このネタ、今でも通用するのかな。)義憤にかられた悟空と八戒は、少年のために盗みだすついでに盗み食いをし、怒った持ち主との間にすったもんだがあったあげく、大騒ぎの末に、ニンジンカの木は枯れて、元も子もなくなってしまう。
第2巻 第3章 火焔山のたたかい一行は流沙河に至る。沙悟浄登場。彼はここでは文字通り、追いはぎ(着物をかっぱらう)である。砂の底にいる追いはぎに手を焼いた悟空たちは、セメントで彼らを固めて、やっつける。
「沙悟浄か。うわさに聞いたカッパかと思ったら、うすぎたない男だな」
「リアリズムなんで……」
第2巻 第4章 キツネにつままれる言うまでもなく、全編中の白眉である。まずは火焔山の縁起が語られる。牛魔王、玉露、羅刹女登場。火焔山の火を芭蕉扇で消すべく、天界から遣わされた羅刹女は、牛魔王に買収された。火焔山の火を消して欲しくば、貢ぎ物を出せ、と(火焔山に天界から火が降って来る前にそこに住んでいた)動物たちや人間たちを絞り上げる牛魔王。
そこにやってきた、三蔵法師一行。悟空たち三人が牛魔王を退治に出かける間に、三蔵はさらわれ、悟空たちは悟空たちで、羅刹女に芭蕉扇で吹き飛ばされる。混沌道士に仙薬をもらった悟空は羅刹女から芭蕉扇を騙しとるが、これが贋物。そうとは知らずに火焔山に立ち向かってしまい、大火傷を負う。
麓の村では、皆カンカンである。悟空たちが暴れたおかげで、牛魔王の手下たちが村を荒らし、生贄として大勢をさらっていったからである。火傷で動けない悟空のかわりに、八戒が(大方の懸念を双肩に抱いて)出動するが、牛魔王の邸宅で生贄を貪り食う玉露(牛魔王の妻)の色仕掛けに、あっさり騙される。彼は下男に助けられ、牛魔王に化けて羅刹女から芭蕉扇を騙しとるが、その帰りに牛魔王に奪い返され、大怪我をして帰ってくる。
悟空は負傷をおして、再び三蔵の救出に向かう。今まさに牛魔王たちに食われようとしている三蔵。間一髪、彼を救出したのは、あの下男であった。供の馬が化けていたのである。しかし彼も牛魔王にはかなわない。そこへ悟空登場。徐々に本調子を取り戻してきた悟空は、牛魔王と壮大な変身合戦を繰り広げる。誤って火焔山に落ちてしまった牛魔王は、羅刹女に芭蕉扇で火を消させる。結果的に(ようやく)任務を果たした羅刹女は、天界に逃げ帰る。(懲戒免職ものだと思うが。[-_-])巨大な牛の本体に戻った牛魔王は、荒れ果てた火焔山を耕し、悟空たちは、その働きに免じて人間に戻してやるという観音菩薩のオファーを受けず、ただ怪我だけを治してもらい、ひとりでは無事に天竺に辿りつけそうもない、三蔵法師のお供を続けることにする。彼らを見送る動物たち。
私は2年前、中国はトルファン近郊で、本物の火焔山を訪れてきた。それは唯の瓦礫の山なのであるが、その鮮やかな色彩と模様は、確かに火焔を思わせるのである。同時に、その外観からこの壮麗な物語を想起した、中国人の想像力の素晴らしさに、感嘆したものだった。
悟空に殺された玉露の弟狐が、三蔵をさらう。妖怪と見抜いて退治しようとする悟空を諫め、悟空はつむじをまげて出奔し、邪魔者がいなくなってから妖怪が本性を現わす、という黄金パターンである。
「わしゃなぜ、こうよくつかまるんだろう。人間がすこしまたボーッとできているせいかな」12年前にこの狐にさらわれてきた姫君がからんで、もちろん狐は退治されるのであるが、悟空が殺した狐の死体をみて、情が移っていた姫君は嘆き怒るのであった。
(文中、引用は本書より)
Last Updated: May 12 1996
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