ぼくの孫悟空 1

*第1巻 第1章 石から生まれた孫悟空

 これもまた、一通り読み返すには長すぎる原作なので、照合は、パス。[;^J^] いずれにせよ、原典との「乖離」が問題になるような性質の作品ではないので、各回ごとの見どころ読みどころを、行き当たりバッタリに紹介させていただくことにする。

 石から生まれた石ザルは、まだまるで冴えないみそっかすであるが、ひょんなことから、水底の水蓮洞の主人となる。

*第1巻 第2章 三本たらない頭の毛

 井の中の蛙ならぬ水の底の猿状態であることを自覚した石ザル大王は、仙人にあって修行したいと呟き、それを聞いた、石ザルに二心を抱く側近が、混世魔王を呼び出して、石ザルを追い出させてしまう。しかし混世魔王(その正体は一角獣)は同時に、残った猿たちを食いはじめてしまう。猿知恵で災厄を招いたのである。一方、石ザルは(ヘボ)仙人のもとで修行し、孫悟空という名をもらう。

*第1巻 第3章 金米糖のあめん棒は金ソウ棒

 古巣に戻った悟空は、術で混世魔王を退治する。増長した悟空を懐柔するために、玉帝は彼にヒッパオンの役を授ける。(お馴染みの展開である。)ヒッパオンの業務の実態を知った悟空は暴れ、御存知の成り行きを経て、釈迦の手経由で五行山の下敷きに。

*第1巻 第4章 ならのカンヌシがスルメをかんだ

 三蔵法師登場。タヌキにばかされて軽く気絶するなどした後で、五行山で見世物になっていた悟空を助けてやる。東海竜王の娘のタツ子登場。馬に変身して供をする。山賊三人組を殺して三蔵に叱られた悟空は、ふてくされてしまう。釈迦が老婆に変身して、三蔵に金箍児(きんこじ。頭にはめる金の輪)を与える。呪文は「お猿の駕籠屋」の歌である。

 三蔵法師は、原作でも相当に情けないキャラクターとして描かれている(ほとんど作者がギャグのネタにしているとしか思えない)のだが、本書でも気合の入った臆病さを、存分に披露している。

*第1巻 第5章 ブタは夜おとずれる

 猪八戒登場。とある家に婿入りしようとしていたブタの化け物の正体。取り押さえようとする悟空との術比べは、自動車、飛行機、戦闘機を繰り出しての追跡戦。このあたり(私も大昔の漫画はほとんど読んでいないので、よく判らないのだが)たまに紹介記事や復刻本で目にする、古いギャグ漫画の伝統に則っているように思う。つまり、近代ヴィークルの唐突な出現。一行の行く手には、黄風洞。

*第1巻 第6章 黄風山の黄風洞に黄風大王が

 黄風山から来た虎の化け物が、三蔵をさらっていった。虫に化けて救出すべく忍び込んだ八戒は、食い意地に破れて捉えられる。悟空が続いて忍び込むが、

「おーっ悟空か、よくきてくれた。早くほどいてくれ」
「お気の毒におししょうさま。おつらいでしょうが、もうすこし待っていてください」
「待てとはなんじゃ悟空っ わしゃ、もう一分もこんなかこうしているのはいやじゃっ」
「だっていまほどくとかえって危険です。しょうがないなァ」
「し、し、しようがないだってっ これっ 悟空っ なんといういいぐさだ。あのまじないを忘れたか」
「イテーッ 待ってください」

てなことをしているうちに、悟空は黄風に吹き飛ばされてしまうのである。原作(私が読んだのは「真詮本」である)にはこの会話はないが、三蔵のキャラクターは、原作でもこんなものである。

 悟空は霊吉菩薩に救出され、黄風大王の正体(鼠)と、やっつけるための呪文(「まわれまわれコマネズミ、まわせよまわせ水車」)を教えてもらい、退治する。この呪文も原作にはないが、素朴な漫画的魅力を持っている。

*第1巻 第7章 坊主がお寺にじょうずに火をつけた

 観音院に泊った一行。袈裟フェチ(おっと、これは諸星大二郎版だった。[;^J^])の住職は、三蔵の袈裟を奪うために、彼らを焼き殺そうとする。三蔵は悟空たちに救出されてことなきを得るが、袈裟は黒風山の熊の化け物に横取りされてしまう。悟空は丸薬に化けて、袈裟を奪いかえす。


*手塚治虫漫画全集 12

(文中、引用は本書より)


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: May 5 1996 
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