ヒドロ博士所有権に敗れること太陽をはさんで、地球の軌道のちょうど反対側を公転していたディモン星。この星の公転が次第に遅くなり、地球に大接近して、地球の終わりもかくやという凄まじい暴風をもたらし、世界は破滅の危機に瀕する。まずこの、いきなりクライマックスに突入かと思わせる、破天荒な導入部の「つかみ」が秀逸。
ディモン星の発見者で名付け親のディモン博士は、嵐の中、息子のロックに、ディモン星の権利を譲って、死ぬ。そして博士の予言どおり、嵐はおさまり、ディモン星は地球の周囲を回り始める。暴風雨で日本から吹き飛ばされてきて、親と生き別れになってしまった大助少年、登場。謎の日本人、東南西北(トンナンシャーペー)、登場。(彼は大助の神経を逆撫でするようなことを言い、彼に投げ飛ばされてしまう。)ヒドロ博士、登場。ヒドロ博士はディモン星の権利を譲れ、と、ロックに詰め寄る。
ディモン探検隊出発の瞬間世界は大暴風雨(ディモン嵐)で壊滅的な打撃を受け、もはや旧来の国家などというものはなくなってしまった。そんなさなか、ディモン星には地球のような空気があることがわかり、広大な原野と鉱物資源もあるだろうと、ディモン星の開発熱が沸き起こる。国連では、第一発見者のディモン博士亡きあと、第二発見者のヒドロ博士をディモン星の領事にしようと決議しかかるが、ロックが父の遺言書を提示して、それを覆す。ロック自身はディモン星など欲しくはなく、正しい人を領事に選べと言い残して、会場を去る。
ディモン博士が、ディモン星大接近の暴風雨に備えて残した資材と莫大な遺産とを使って、ロックはディモン星探検ロケットを作り上げる。疲弊した地球の施設と経済力では、これほど大規模なロケットは、今後当分作ることは出来ないであろう。デコーン博士、登場。ロックは、大助もディモン星探検隊に加えることにする。新聞に顔写真が載れば、生き別れになった親とも出会えるかも知れない。
おきまりのコースながら話の順序としてディモン星探検隊への志願者の殺到。ロック、大助、デコーン博士、その他新聞記者らが、隊員に決定する。大助の両親は発進時刻になっても現われない。ロケットは飛び立つ。
死と静寂の星無重力空間での、お約束のドタバタ。(しかし、このサブタイトル、みょーにスれた感覚があるのだが。[;^J^])
ディモンにおける植物の群生ディモン星着陸。見渡す限り乾ききった荒野で、生命の気配もない。滅入る探検隊。そして熱病が流行して、隊員たちはバタバタと倒れていく。これは体の一部が異様に膨れあがるという、奇病である。怖じ気づいた隊員たちの間で反乱が起こり、ロックと大助のふたりをディモン星に置き去りにして、ロケットは地球を指して飛び去ってしまう。
その夜、前線基地の小屋を襲う、岩嵐と洪水。ディモン星には水があった! そして水に浮かぶ植物の種! ふたりは希望に胸をふくらませる。
(ここまでで、まだ53ページである。)
食物を探しに出かけたロックが遭遇する、奇怪なる植物相。人間の手の形そっくりな形態をして、つかみ掛ってくる植物。毒ガスを吐き出すヒョウタンツギの母子。巨大なケムクジャラの蜘蛛状の生物。そして洞窟に入り込んだロックの眼前に、粘土人の群れ! 彼らはロックと瓜二つの姿をしていた!大助の奇怪なる体験
土にもときに生命を授くることあり留守番をしている大助は、水の汲み出しに疲れて昼寝をする。彼を襲う鳥人たち。
石油海ロックは、ロックの姿をした粘土人(ルボルーム)たちに捕えられた。僅か3時間で英語をしゃべれるようになる、ルボルーム。ロックと話しをする代表者の名は、ミルム。植物でも動物でもない、土から生まれた彼らは、どのような姿を取ることも出来るのである。ロックに化けたことにも、全くなんの理由も無いのであった。
ロックを襲ったのは、彼を「エプーム」と誤認したからである。その時、空を飛び去ってゆく鳥人たちの影。エプーム!と叫ぶルボルームたち。
「エプームハ ワレワレヲサラッテイク ソシテハタラカセル ナンデモシゴトヤラセル ジブンハアソブ」小屋に駆け戻ったロックは、大助がエプームにさらわれたことを知る。ロックは追う。ミルムが同行する。さらわれた大助は、ある島に目印のボタンを残し、今、彼らが飛び越えてゆく海が、石油の海であることを知る。
鳥人は火を使う道を心得ぬこと空を飛ぶエプームを、地上を走って追跡するロックとミルム。垂直に聳えたつ断崖絶壁にぶち当たった彼らは、壁を登る巨大な歩行虫に掴まって、絶壁を登りきる。そして広大な石油の海の岸辺に辿りついた。この膨大な資源の存在を、なんとか疲弊した地球に知らせたいものだと考える、ロック。ミルムを襲う、奇怪な昆虫型生物。その羽根を使って帆船を作り、二人は石油海を渡って行く。
三羽のエプームが、彼らを襲う! 彼らを銃で撃ち落として、捕虜にしたロック。一羽の雌と、二羽の雄。やがて雌が産気づき、無事に卵を産み落とす。彼女を守ったロックを巡って、エプームたちは内紛を起こし、(雌の夫を含む)二羽の雄は、死んでしまう。とある孤島に漂着して、エプームの墓を作ったロックは、そこで大助のボタンを発見する。
その頃、大助を捕えた一行は、既に石油海を越えて、エプームの都へと到着していた。牢に放りこまれた大助は、奴隷階級としての不気味な粘土人を目撃する。鞭をふるう鳥人たちの命令に応じて、椅子になる粘土人。(私はここで「家畜人ヤプー」(沼正三)を連想したが、「ロック冒険記」の方が、数年間先行している。)大助は脱走をはかるが捕えられ、処刑台へ。彼はレンズを使って火を起こし、パニックに乗じて逃走する。
鳥人についてのロックの記録より石油海を舟で渡るロックは、卵を暖め続けている雌エプームと、言葉を交わせるようになった。やがて卵が孵り、その子はロックによってチコと名付けられた。ある日、彼らの舟はエプームの海賊に襲われ、舟はひっくり返されて、泳げないミルムは湖底に沈んでしまう。彼らが辿りついたのは、目的地、エプームの国。古巣に帰った雌の家の中で、チコは、父と慕うロックに教わった通りに火を起こして見せる。火を知らなかったエプームたちは驚愕し、チコを神の子として崇めたてまつる。それを知った領主はチコを魔法使いとして捕える。彼ら母子があわや拷問にかけられそうになった時、ロックが殴り込み、人々に火の起こしかたを教えて、これが魔法ではないことを実証する。顔をつぶされた大僧正は、都の王へ注進すべく、逃走する。
大助の行方が知れロックとめぐりあうことこの章では、鳥人(エプーム)の生物学的、歴史学的考察がなされる。鳥人の形態は、鳥の脚を人間型にし、顔も嘴を除いて人間に似せ、嘴の中には歯がある、といったもの。卵生である。ディモン星の進化について。鳥まで生物進化が進んだところで、なんらかの原因でストップしたのではないか? 翼を手のように使う鳥人は道具を使うことを覚え、文明を発達させるに至ったが、極めて便利な奴隷であり、かつ、どんなものでも作れる(どんな形態にも変形する)粘土人の発見が、彼らの文化を停滞させてしまったのだった。この町の領主も味方につけた賓客待遇のロックは、町中を見学する。
大助鳥人について考えをあらためること大助が発見されたという知らせが、流れ者の鳥人からもたらされる。鳥人の都で処刑されかかったが火を起こして逃走したのを、目撃したというのである。鳥人たちに空を運ばれて捜索に赴くロック。そしてついに、なかば野人化していた大助を発見した。
再会を喜ぶ二人は、ディモン星の文化が地球よりも2000年ほども遅れているのではないかと推測し、大助は、鳥人は粘土人という奴隷階級を得て、怠け者になってしまったから、教育など無駄だろうとくさす。その時、町から逃げ出した大僧正の訴えを受けて都を飛び立った、皇帝の軍隊が上空を通過し、チコが守る町に爆撃を加える。ロックと大助は町に飛び帰り、粘土人らに火焔放射機や36連装(?)槍投擲機を作らせて、皇帝軍を撃退する。鳥人たちの大助への感謝と、勇敢に戦った鳥人たちを見直した大助。
(文中、引用は本書より)
Last Updated: May 9 1996
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