第3巻 第2章 ふたつの眠りゴールドランドの居城で、サファイアへの想いに胸を焦がせながら、悪魔の娘との結婚の約束をしたことを後悔している、フランツ。そこへ、ヘケートを連れたヘル夫人が現われ、若いふたりを引き合わせて、得意満面で去って行く。ヘル夫人が帰ったことを見すまして、豪華なドレスを脱ぎ捨て、普段着になるヘケート。彼女自身は、親が決めた縁談に、全く気が無いのであった。なんとかならないだろうか、と、ヘケートに相談するフランツ。そこに、叔父のシャネル五世が帰ってきた。
縁談を色々と持ち帰って来て、大得意のシャネル五世は、フランツが悪魔と婚約したと聞いて、怒るまいことか。(当然である。[;^J^])悪魔に魂を売るような奴にあとを継がせるわけにはいかん、城から出ていけ!お前の兄を呼び戻して国を継がせる、と、シャネル五世。兄のことなど、フランツには初耳である。フランツの幼いころ、叔父はフランツの兄を嫌ってイタリアの貴族に預けて、フランツの方を育てていたのだった。その兄の絵姿は..海賊ブラッドである。無論、シャネル五世は、兄が海賊であるなどという話は一笑に付して取り合わない。
さて、シルバーランドの王城では、男と女の全面戦争の火蓋が切って落されていた。戦闘服([;^J^])を着用して、ほうき、ゴム糊、洗濯バサミで戦う女官たち。サファイアはナイロン卿と一騎打ちである。男の子の心を失ったからとて、おめおめと遅れを取るサファイアではない。
そこにかけつけてきた、フランツ。彼はサファイアに別れを告げに来たのである。何故結婚できないのか?誰を妃にするのか?と、涙ながらに問うサファイアに、
「そいつは……ぼくのうしろだ。
(突如広がる暗雲、そして雷雨!)
アハハハ…わかるかい? こいつさ、悪魔なんだよ」このシーンは、凄い。悪魔自身が現われるのではなく、見えない悪魔がずっとフランツと共にやって来ていたのであって、それが引き起こした天候の急変を指して、「こいつが悪魔だ」と言う。これは私の知る限り、漫画で描かれた、最もすぐれた、最も凄味のある悪魔の描写である。
その悪魔の娘とはヘケートであり、叔父の怒りをかった私は国を追われ、もはや財産も地位もない。サファイアとは結婚できない、私のことは忘れてくれ、と、魔の山ハルツへと駆け去ってゆくフランツ。悲しみにくれるサファイア。
ハルツ山中に着いたフランツ。彼を出迎えた魔女は、しかし憮然としている。魔女が欲しいのは王位と国であって、国を追われた王子に娘をやっても意味が無い..しかし彼女は諦めない。まだ手段はあるのだ。魔女はフランツを大魔王サターンに引き合わせる。(ここで現われた、モダーンな感覚(←この言い回しはモダーンではない。[;^J^])の姿の魔王は、「魔法屋敷」でデビューし、前年(1962)には、鉄腕アトム「ロボットランドの巻」でも活躍している名優である。)
魔女はサターンに、ゴールドランドの城で結婚式をあげるために、城じゅうの人間を石に変えてくれ、と依頼する。サターンは、国一番の美しいやさしい娘を、生贄に要求する。無論サファイアだ。フランツはサターンに刃を向けるが、かなうわけがない。目覚めた時には、目の前にヘケート。彼を結婚式の日まで、ハルツ山から下ろすなということになったのである。ヘケートは見張りである。もとよりフランツと結婚する気のないヘケート(本当に結婚したくはないのか?)と、フランツは、結婚式の急場を逃れる相談をする。
サターンは城へ流れ込む川に魔法の薬を流し込み、それを飲んだ城中の全ての人間は、石になってしまう。魔女は有頂天で、サターンに約束した生贄のサファイアを捉えに行く。
第3巻 第3章 悪魔の結婚式依然として男と女の戦争が続いている、シルバーランドの王城に、ブラッドが潜入してきた。彼はサファイアに、自分の数奇な生い立ちを語る。すなわち彼は、ある王家に生まれたのだが、彼を嫌った親族の手で、捨て子同然にイタリアの貴族に預けられ、愛情をそそがれることなく育ったのである。そのことを知った彼は、家を抜け出し、自分の本当の故郷を探すために、海賊に身を投じたのだった。運命に翻弄される同士のサファイアとブラッドは、心を通わせる。
プラスチック王は、父・ジュラルミン大公の歪んだ親心を顧みず、サファイアに王位を譲るために、女も王位につけるよう、掟を変えようとする。もはやサファイアを殺す他なし、と進言するナイロン卿に、お前が手を下せと命じるジュラルミン大公。
王の改革は議会を通った。女は選挙権を持ち、離婚権を持ち、男をなぐる権利 [;^J^] を持つようになったのである。男と女の戦争は、この布告で終った。恩赦で乳母と博士は牢から出され(彼らのことを覚えていた人が、何人いるであろうか [;^J^])、海賊稼業のブラッドの罪も消える。サファイアのいない船旅なんぞに興味のないブラッド。しかし、サファイアは城から離れることは出来ない。ブラッドにとってはつらいことだが、フランツがサファイアを幸せにするだろう..しかし何故か、サファイアはフランツの名に耳をふさぐ。彼はもう、帰ってこれないからだ。驚くブラッド。
そこに現われた、ヘル夫人。彼女はサファイアを、三日後の十三日の金曜日にフランツの城で挙行される、フランツとヘケートの結婚式に招いて、消え去る。何かたくらみがあるのだとして、思いとどまらせようとするブラッド。窓の外からは、サファイアの暗殺を狙って弓に矢をつがえるナイロン卿。しかしその矢は、その時部屋に入って来たプラスチック王の胸を射貫く。そして第二の矢はサファイアの胸を。王を誤射したナイロン卿は、もはやこれまでと逐電する。
プラスチックもサファイアも、急所は外れてはいるものの、あと三日の命と診断された。矢傷に効くのは、南の海の果ての黒真珠島にある薬である。必ず三日で帰ると言い残して、ブラッドは薬を求めて出港する。
その夜、死にかかっているサファイアの元に訪れた、ヘル夫人。サターンの生贄に捧げるために、結婚式に呼び出すことは出来そうもないが、しかしこのチャンスに、魔女はサファイアから女の子の心を抜き取った。結婚する娘のための、またとない贈り物である。高笑いして飛び去る魔女。
第3巻 第4章 黒真珠島の女王十三日の金曜日、人々がみんな石になったゴールドランドの王城に、魔物たちが集まって、フランツとヘケートの結婚式が挙行された。サターンの主催で式は滞りなく進行するが、ヘル夫人が持ち帰ったサファイアの女の子の心は、ヘケートの家来の小悪魔たちが奪い取ってしまう。それを城の外まで追っていったヘル夫人は、天使・チンクが、城に近づいて来たという報せを受け、魔法のイバラでゴールドランドの王城を包む。
城に近づくチンクを襲う天変地異、そして魔物たちの誘惑と襲撃。苦戦するチンクの応援に、天国から小さな天使たちが降りてきて、イバラを切り裂く。彼らの助けで城内に飛び込んだチンクは、外へ走り去る蹄のあとを見つける。
大広間では盛大な酒宴が続いているが、サターンは、花婿と花嫁が、ヘケートの家来の小悪魔たちが化けていた贋物であることに気付く。本物のふたりは、外へと逃げてしまっていたのだ。サターンの命令で(命令されるまでもなく)ふたりを追うヘル夫人。その前方で、チンクもふたりを追っていた。
ついに魔女に追い付かれたふたり。ヘル夫人は巨大な梟と化して、白蛇の姿になったヘケートを捕える。フランツは十字架と化した短剣を梟に投げ付け、梟=ヘル夫人は死ぬ。チンクの祈りが、短剣を十字架に変えたのだった。母親を死なせたことをヘケートに詫びるフランツ。そのヘケートも死にかけていた。
「ウフ… かあさんが死んだら、あたしもおしまい……
……
あたしはね、かあさんの魔法で生まれたのよ。だから、とてももろいのよ
……
さあ、あっちへ行って… あたし死んだら、どんなみにくい姿になるか、しれないわ
おねがい、あたしを見ないで………そのまま行って……
……
フラ………ン…ツ……さよ…な…ら………」
ヘケートは、やはりフランツを愛していたのである..
ヘル夫人が死んで魔法が解けたため、シルバーランドの王城では、石になった人々が続々と人間に戻っていた。それを見て、魔物たちは逃げ出す。そして遥か海の彼方、海蛇島でも、王妃とガマーが石から人間に戻っていた。ガマーの作った筏でシルバーランドへと漕ぎだすふたり。その頃海上の別の場所では、ブラッドが薬を求めて、南の島へと船を走らせていた。
第3巻 第5章 ビーナスの花園黒真珠島に着いた、ブラッドの海賊船。島の女王パルパは、確かにこの島には矢傷の妙薬があるという。ブラッドは、あと二日のうちに帰らなければならないのだが、まあ半日位は休んでいけ、と、酒宴に招かれ、眠り薬を盛られてしまう。牢の中で目を覚ました彼に、パルパは、この島にとって男はなくてはならぬ奴隷だ、といい放つ。
三日めの夜、牢を破って脱出したブラッドを、弓矢で制止するパルパ。ブラッドが持っている矢傷の薬はひとりぶんしかない。そしてパルパの矢がブラッドに。しかしブラッドは薬を使わない。この薬はサファイアのためのものだからだ。パルパは彼の真情に打たれ、見逃す。海上に漕ぎだしたブラッドは、しかし瀕死の状態である。
シルバーランドの王城への、王妃の帰還。しかしサファイアの命はあと一時間と聞いて、残酷な運命を怨む。そこにブラッドが帰ってきた。彼は矢傷の妙薬を、自分の傷には使わずに持ち帰り、そして死んだ。ブラッドが命と引き換えに持ち帰った妙薬は、しかしサファイアの死には間に合わなかった。フランツとチンクも、サファイアの女の子の心を携えて帰って来たのだが、遅かった。せめて妙薬を無駄にしないようにと、プラスチック王に薬がつけられ、彼は一命を取りとめる。プラスチックが助かったことをジュラルミン大公に報せに行った女官は、ジュラルミン大公が自害しているのを発見する。大公は、天罰を悟ったのだった。
兄かもしれないブラッドの死体に別れをつげ、そしてサファイアの死体のそばにぬかずくフランツに、チンクが驚くべき報せを持って来る。サファイアを蘇らせる方法があるというのだ。愛の女神、ビーナスの館の花園の中の、生命の花を使えば、人間はよみがえると!
第3巻 第6章 おかしなウーロン侯チンクの願いを聞いたビーナスは、サファイアを一番愛しているものが受け取りに来い、と、チンクに言付けたのだった。ビーナスの使い、エロースが、光り輝く空飛ぶ馬の姿で現われ、フランツはエロースに乗って、オリンポスのビーナスの花園へ向かう。
ビーナスは、ぞっとするほど美しい女神だった。きまぐれでプライドの高いビーナスはフランツを見初め、横恋慕し、フランツが全てを捧げているサファイアを、世界中で一番不幸にしようと決める。
ビーナスの花の神聖な力で復活した、サファイア。しかし彼女はビーナスの嫉妬によって、記憶喪失症となっていた。ビーナスは、記憶を取り戻すためには北の国へ行け、とサファイアを騙して、城から出奔させてしまう。あとを追うフランツ。そのフランツを追うビーナス。ビーナスの乗馬であるエロースは、ほどほどにしろとビーナスをたしなめるが、無論ビーナスは、全く聞く耳を持たない。
第3巻 第7章 女剣士フリーベ道端で寝ていたのは、シルバーランドから逐電したナイロン卿。彼は通りかかったサファイアの姿を見て、慌てに慌てるが、彼女はナイロン卿の顔を覚えていない。
とある“亜麻色の髪”を持った少女の姿を見て、記憶を取り戻しかけたサファイアは、その少女の家に泊り、サファイアを強い剣士だと見抜いた家人に、是非とも明日の武術大会にでるよう、薦められる。この国を支配しているのは、ウーロン侯。お祭りや競技の好きな殿様であり、武術大会で優勝した者は召し抱え、それは村にとってもとても名誉になるからである。記憶を取り戻す手掛かりを得るために、サファイアは試合に出ることを決める。
サファイアを追ってきたフランツは、貴婦人に化けたビーナスに引き止められ、サファイアとの再会を妨げられる。その夜、散歩に出たフランツは、女剣士フリーベに喧嘩を売られる。翌朝、フリーベ、フランツ、サファイアは、それぞれ競技場に向かっていた。途上でサファイアと同行したフリーベは、サファイアを見初めてしまう。
貴婦人に化けたビーナスの奸計。サファイアがフランツと会ったら、記憶を取り戻してしまうのは、間違いない。それを妨げるために、彼女は付近をうろついていたナイロン卿に声をかけ、ウーロン侯を買収するための宝石を与えた上で、ウーロン侯にサファイアを捕えさせるよう取り計らってくれ、と、依頼する。
競技大会が始まった。サファイアの試合が始まり、ビーナスの魔法でサファイアの槍が曲ってしまうが、サファイアは剣で相手を叩きのめす。思惑が外れたビーナス。兜が外れたサファイアの素顔を確認したフランツ。そして誰がどう見ても愚鈍なウーロン侯の元に、ナイロン卿からの賄賂が送られ、ウーロン侯はナイロン卿の頼み通りに彼を召し抱え、サファイアを捕えて土牢に放りこむ。
第3巻 第8章 丘の上の奇跡何故捕えられたのか理解できないサファイアの牢獄に、勝ち誇ったナイロン卿がやってくる。サファイアは未だにナイロン卿の顔を思い出せない。ウーロン侯をけしかけて、サファイアの国を攻め落としてやるとうそぶいて、ナイロン卿は去る。ビーナスのプラン通りである。
数刻後、牢番を叩きのめしたウーロン侯が、牢の鍵をもってサファイアを救出に来る。ナイロン卿が現われた時から怪しいと思っていたウーロン侯は、わざと卿を泳がせて、その真意を吐かせたのだ。ウーロン侯は実は愚鈍どころか、極めて聡明な殿様なのだった。部下の中に混ざっているかも知れない、悪心を持ったものをあぶりだすために、わざと愚かなフリをしていたのである。
侯の手引きで牢を脱出し、馬で逃げるサファイアの前に、再びフリーベが現われる。その格好では目立ってしまってすぐに見つかってしまう、と、フリーベは森の中のアジトにサファイアを連れてゆき、着替えさせる。実はフリーベはサファイアを男と信じて、すっかり惚れ込んでしまっていたのだった。女剣士の一本気な求婚に弱るサファイア。
その頃フランツは、ビーナスの侍女に化けたエロースが届けた毒の花の魔力で、ビーナスの元にさらわれてしまっていた。フランツをかき口説くビーナス。しかしフランツは、サファイアへの愛が消える位ならば、死を選ぼうとする。そこへエロースが、サファイアが土牢から脱出したという報せをもたらす。
サファイアを捜索するナイロン卿たちは、フリーベの小屋を取り巻く。その小屋から出て来たのは頭巾を被った牧師である。彼は結婚式のために招かれたのだ。小屋から出て来る新郎がサファイアに違いないとして、ナイロン卿は部下たちにスタンバイさせるが、小屋から出て来た新婦はフリーベ、新郎は見知らぬ男である。人違いだったかと、他を探しに去るナイロン卿たち。そして教会に着いた牧師と新郎・新婦。実は牧師とサファイアが入れ代わっていたのだ。
邪魔が入らぬうちに、手早く式を上げてしまおうとする、牧師とフリーベ。サファイアとしても、これ以上の引き延ばしはできない。自分が女であることを告白し、信じないフリーベに胸元を見せる。フリーベの泣き笑い。ぐずぐずしていると、また役人たちが来るからと、ふたりはサファイアを逃がす。しかしサファイアは街中でナイロン卿たちの待ち伏せにかかり、そこに再び、花嫁衣裳を脱ぎ捨てて凛々しい鎧姿に戻ったフリーベが現われ、サファイアに加勢するが、ついにふたりは追い詰められ、サファイアの命も風前の灯火となる。
そこにウーロン侯が現われ、ナイロン卿とその手下たちを捕え、ナイロン卿を追放してしまう。フリーベはウーロンの妹だったのだ。フリーベにサファイアと結婚できたかと聞くウーロンは、女だったと聞いて流石に驚くが、気の良い笑顔で送り出す。
森の中をかけぬけるサファイアを襲う、怪鳥! その正体はビーナスだった。ビーナスの口からフランツの名を聞いて、全てを思い出したサファイアに、ビーナスは、ふためと見られぬほど醜くなれ、と、魔法をかける。
そこにチンクが駆けつける。ビーナスはチンクを贈り物で懐柔しようとするが、チンクは聞かず、ビーナスは不承不承、サファイアの顔を元に戻す。(醜くなった時の顔は、描かれていない。妥当な処理である。)チンクは天の父に、ビーナスの所業を報告してきたのだった。父には逆らえないビーナスは、ふたりのことはチンクにまかせる、シルバーランドに帰すがよい、と、姿を消すが、プライドの高い女神はこのまま引き下がれるかと、最後の呪いをかける。すなわち、シルバーランドへ帰る谷間の道をサファイアが通ったとき、サファイアが豚になるように。
その頃、ビーナスのケープに閉じ込められていたフランツは、エロースに救出される。エロースの裏切りを許さないビーナスは、エロースを小さな草花の姿にしてしまう。ビーナスの、フランツへの最後の求愛も、しかし彼にはねつけられ、ビーナスは最後の手段としてサファイアに化け、フランツへ別れの言葉を告げて駆け去る。驚いて後を追うフランツ。その時サファイアの姿のビーナスは、あの谷間の道にさしかかり、自らの呪いで豚になってしまう。
サファイアが豚になったことに驚くフランツの前に、本物のサファイアが駆けつけて来た。チンクは豚になったサファイアはビーナスであったことを告げる。
サファイアとフランツの長い旅は終った。ふたりは結婚式をあげるために、城へ向かい、全ての仕事を終えたチンクは、豚の姿のビーナスを抱えて天使の姿に戻り、天上へ帰る。かくして、壮麗なロマン、「リボンの騎士」は、その幕を閉じるのである。
少女クラブ版「リボンの騎士」を、7年の歳月を経てリライトしたもの。ストーリーの骨子はほとんど同じであるが、やはりこの「なかよし」版の方が、波乱万丈の展開と肉付けの厚さにおいて、優っている。
なんと言っても、“物語の面白さ”が、もう圧倒的である。ジュラルミン大公が死んだところで物語は終わっており、それ以降の「ビーナス編」は、全くの蛇足なのであるが、人気作を簡単に終えることが出来ないのは、作者の責任ばかりではないし、ここで登場する新キャラのウーロン侯、フリーベがなかなか魅力的なので、なんら問題にはならない。
私には、実のところ女の子の気持ちは判らないが、宝塚に熱を上げる少女たちが、「リボンの騎士」に熱狂したのは、当然であろう。元来女性であるサファイア姫が王子に化け、さらに亜麻色の髪の乙女に化身する、錯綜する男装・女装のエロティシズム。(私は、リヒアルト=シュトラウスの「薔薇の騎士」を想起した。)そして男性的なストーリーはあくまでも骨太で、力強い。
これを読んでいない、男性読者諸君。もしもあなたが“物語”を愛するのであれば、手塚治虫の畢生の傑作、「リボンの騎士」を必ず読み、そして語り伝えていくべきだ。子供たちに。
(文中、引用は本書より)
Last Updated: Jul 6 1996
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