前半は、「アトム還る」として全集に収録されている。
時は1972年。舞台は日本、八百屋の八百ナス。亭主はヒゲオヤジである。庶民を地下に移住させるという日本列島改造が進行中。それに伴う地上げに対抗するヒゲオヤジと、息子のカボチャ。アトムがそこに(未来から、タイムマシンで)出現し、ダンプを(はからずも)やっつける。(72/10号)
八百ナスは、ダンプに突っ込まれたはずなのに、何故か壊れていない。アトムが爆発5分前に運んだからである。しかし5分後には結局爆破され..お約束の、ループ。アトムは地上げ屋の親分に乗り込み、公害の撒き散らす有毒ガスを使って退治する。(72/11号)
2003年の居酒屋へ。ロボットの住んでいる小屋への道を尋ね、何故か嘲られるアトム。その小屋に辿り着いてみると、巨大な番人ロボットと立て札。
「ここに、心なき人間によって
ほうむられたるロボットたちのために
ふくしゅうをとげるロボット“ガンダーラ”を送る。
ガンダーラはロボットのおきてにしたがわない、
ざんにんでなさけをしらぬロボットなり 七味博士」
ガンダーラは、“アトム”の名に反応する。小屋の中にはロボットの残骸の山。その中に、アトムの残骸が!(72/12号)
七味博士(ロボット)の残骸を見つけて、修理するすアトム。七味は、ロボットを壊す人間に復讐するために、ガンダーラを作ったのだった。その時、たまたま通りかかった人間の親子連れを襲うガンダーラ! 止めるアトム!(73/01号)
戦うアトム。流れ弾(岩)で腕をもがれた七味に、腕を持って行く人間の子ども。七味はガンダーラを止めようとして、死ぬ。ロボットの真の友だちは、人間の子どもたちだと悟って..(73/02号)
スピカ、再登場! この星を処分する使命とともに..(宇宙船の船長に、地球の実状を知らせた結果、この決定が下されたのだ。)スピカの触覚が、起爆装置。スピカは、モンスターとしての本体を表す。アトムはスピカの触覚を引き抜き、爆発を防ぐ。これによって、スピカは宇宙船と連絡がとれなくなり、帰れなくなって、地球のロボット・アトムの恋人になる..(73/03号)
前半の「アトム還る」編と比べると、小粒なエピソードが並べられている、という感は、否めない。七味博士編は、「アトム今昔物語」を想起させるが、実は、この、ロボットに対する差別と迫害のテーマは、鉄腕アトムシリーズ全体の、通奏低音である。
小学四年生版の冒頭で登場した、なかなか魅力的な「スピカ」は、前半ではたちまち姿を消し、後半でも、最後のエピソードで、ようやく作者に思い出された、という、可哀相な [;^J^] キャラクターである。しかし、アトムの口から「恋人にしてあげる」と、はっきり告白された女性は、ほとんど類例が無いはずである。もって瞑すべしや。
(文中、引用は、小学四年生 1972年12月号より)
Last Updated: Jun 11 1998
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