ガムガムパンチ:(無題)

 動物園から、ゴリラの親子が逃げ出して、ぱんちをつかまえて屋根の上へ。聞けば、子どもが動物園で生まれたので、一度アフリカを見せてやりたかった、と。一同は(例によって)大騒ぎの末、ガムでなんとかジャングルを作る。喜ぶゴリラの親子。しかし、ガムのジャングルは狭く、あっというまに反対側に走りぬけてしまった。アフリカはこんなに狭くない。

 ガムを分けてもらって動物園に帰った、ゴリラの親子。ガムで何を作るんだろう? ゴリラの親は8ミリ映画を作り、坊やにアフリカの光景を見せていたのであった。

 素晴らしい傑作。イミテーションのパノラマのサイズは限られているが(それが直径数十メートルであろうが数キロメートルであろうが、同じこと)、映画の(小さな)画面の向こう側の世界は、果てしなく広い。ここにはまた、アニメ作家・手塚治虫の、夢と信念も投影されているように思われる。


*「手塚治虫作品集6 児童まんが1」(文民社)
*「ほるぷ版 手塚治虫選集17」(ほるぷ出版)


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Sep 13 1996 
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