パンチとピンコのパパのおみやげは、タイ焼きである。一方、向かいの社長宅の姉弟は、毎日豪華なおみやげを買ってもらっている。今日などは、自動車である。悔しいパンチたちは、ガムで上等の自動車を作って、向かいの家の姉弟に見せびらかす。このあとは、お定まりのエスカレート戦。向かいの家の、デパートからの(本物の)おみやげの山に対抗するところの、こちらの家の(ガムによる贋物の)おみやげの山。ガムに戻ったおみやげの山は、窓から流れ出して、パパを直撃する。
向かいの家から仕掛けられた、おみやげ見せびらかし戦の第二ラウンドは、動物シリーズである。(本物の)犬、シャム猫に対するところの、(ガムの)ライオン、孔雀。
“敵”の家の偵察に出向いたガムンは、実は、このお金持ちの家の姉弟は、ママに構ってもらえず、寂しいのだ、と知る。高価なおみやげなんか、いらないや、と..
気の毒に思ったパンチたちは、ガムで、彼ら姉弟の“優しい”ママを作って、向かいの家に送り込み、彼らと遊ばせる。大喜びの姉弟。そこに本物のママが帰って来て、これは贋物だ!と騒ぐが、子供たちは、こっちのママの方が優しいから、こっちが本物だ、と、ガムのママを選ぶ。後悔して泣き崩れる、本物のママ。これからはきっと、優しくなるよ、と、ガムンたちは、ガム製のママを密かに連れ帰る。
ひとりになったガムンは、「みんなにはママがいて、しあわせだな。ぼく、ひとりぼっちなんだ」。
平凡な、しかし普遍的なテーマである。幕切れのガムンの独り言も、印象的。
(文中、引用は、小学一年生 1968年2月号より)
「手塚治虫作品集6 児童まんが1」(文民社)Last Updated: Sep 12 1996
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