ガムガムパンチ:きょうだいげんか

 パンチとピンコのきょうだいげんか。ガムンは気をきかせて?子供部屋のまんなかに壁を作る。パンチとピンコは、お互いに壁の向こうの相手の“部屋”を、ガムンに命じて汚させる。猫から始まって、こじき、ごみばこ、ぶた、ゴリラ、大ダコ、と、どんどんエスカレートして、相手の部屋に放りこませ続ける。なんと虚しい消耗戦!

 疲れたふたりは、今度はそれぞれ、相手のダミーをガムで作らせ、召使いがわりに自分の部屋を掃除させる。お使いに出されたふたりのダミーは、外で出会って、つらいね大変だね..と、しんみりといたわりあう。ダミーの兄妹を引き離そうとする、本物の兄妹。ダミー兄妹は抵抗して抱き合ううちに、溶けてくっつき、混ざり合ってしまう。後悔して仲直りする、ふたり。

「(泣きながら)かわいそうに、なかよしだったのねえ」
「(同じく)ぼくたちより、ほんとのきょうだいみたいだった」

 もう喧嘩はしないのか、もっとやれ、と、挑発するガムンに、パンチはガムンを量産してけしかけ、一人喧嘩させる。

 驚くべき傑作である。(奴隷としての)ロボットテーマ。“敵”のコピーを奴隷にするというモチーフ。ロメオとジュリエット型の悲恋と破局と和解。愛し合うふたりがひとつの塊に溶け合ってしまうという結末は、「悪魔が夜来る」を強く想起させる。(あるいは、やはりこの映画にインスパイアされたとおぼしき、2年前の「鉄腕アトム:ロビオとロビエット」の幕切れを。)これほど内容豊かなエピソードが全集に収録されなかったのは、惜しい。


(文中、引用は、小学一年生 1967年12月号より)

*「手塚治虫作品集6 児童まんが1」(文民社)
*「ほるぷ版 手塚治虫選集16」(ほるぷ出版)


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Sep 23 1996 
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