よろめき動物記:第44話 オーム

 学習院幼稚園に通っている息子の、言葉使いが悪い。「カアチャン、イッパイヤッカ」「ホンコンにウマイヨ!」といった調子である。腹を立てた父親は、これもテレビの悪影響だと、俗悪テレビの追放に動く。つまり、委員会(学会?)の連中に、息子を実験台に使って、テレビの害毒を調べさせたのである。

 結果、息子は「オーム病」に罹っていることが判った。これは、テレビから出る一種の電波が原因で、オームがえしの口まねをする病気である。科学者たちは、この電波を消すことに成功! これでオーム病の根源は断たれた!

 学会で成果を発表する科学者たち。

司会「それでは坊やに質問してみましょう」
学者「あなたのお名まえなんてえの♪」
坊や「いうことなし!」

 上記の学者の台詞は、(当時の)コメディアンの口まねである。つまり、とっくの昔に大人たちがオーム病に罹っていた、というオチなのだが..論理的に明解でなく(ちょっと考えオチの面があり)、2ページの短篇としては切れ味が悪く、印象に残らない。


(文中、引用は、サンデー毎日 1965年2月14日号より)


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Sep 11 1996 
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