三つ目がとおる:メダルの謎

 写楽は、夜中に、メヅルとクチナワが駆け落ちをする声を“聞く”、いや、正確には、一時的に憑依されて、彼らの声を“しゃべる”。犬持医師には、思い当たるフシがあった。この医院は「愛蛇神社(めづるくちなわのやしろ)」を取り壊したあとに、建てられたのである。

 土地の古老によると、クチナワとは三つ目人の男神、メヅルとは高麗人の女神。ふたつの部族の間で、ロミオとジュリエットを髣髴とさせる悲恋事件を起こし、殺されたのだった。

 ふたつの神の精神が入り込んでいる写楽は、彼らの逃避行のあとを辿って山奥へと入り込んで行く。そしてクチナワとして(クチナワの意志に占領されて)自らバンソウコウを剥がし、三つ目人の超能力で、石を転がし、追跡してくるパトカーを潰す。川を渡ろうとする写楽を、後方からの投石で“しとめた”犬持は、写楽が首にかけていたメダルに気付く。これを試しにかけてみると、メヅルとクチナワの意識が入り込んで来た。これだったのだ。写楽は犬持の首からメダルを抜き取ると、これを庭から掘り出したこと、これは心理的録画・録音テープらしいことを、犬持に説明する。犬持は、写楽の隙をついてバンソウコウを貼り、メダルを川に投げ棄てる。


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Aug 15 1996 
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