頭に大怪我をした記憶喪失症の娘が、大金を持って、ブラック・ジャックの医院に転がり込んで来た。飛び降り自殺に失敗したのだろうか? 治療をするブラック・ジャックは、彼女の体の手術の痕を見て愕然とする。この娘は、ピノコの“姉”だったのである!
そして、ピノコも娘も、ことの真相を知らぬまま、何故か惹かれあうのだ。ピノコはまるで姉のように娘を慕い、娘もピノコを可愛がる。ブラック・ジャックは悩む。彼女らの交流は、引き裂かれる運命にあるのである。
ブラック・ジャックは、娘の主治医(かつて畸形脳腫を切除するために娘を連れて来た、可仁(かに)博士)に電話して、彼女を引き取りに来させる。娘は、さる高貴な門跡の令嬢であり、家柄と格式に縛られ、親族間のゴタゴタも多く、ノイローゼになって自殺を計ったのだ。金庫から大金を持ち出していたこともあり、家名を重んずる一族は、ことを内密にしていたのである。迎えに来た可仁を見て、記憶を取り戻した娘は、逃げるように去って行く。最後まで真相を知らないピノコは、彼女は姉のようだった、と、懐かしむ。
「ピノコもの」の、主要なエピソードのひとつ。これが単行本に収録されない理由も、よく判らない。娘の実家が宗教家の一族だという点が、唯一考えられる原因だが、いくらなんでもこの位のことで自粛されては、たまらない。
Last Updated: Aug 11 1996
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