砂漠の真ん中の遺跡に呼び出された、ブラック・ジャック。依頼人は若い女で、治すべき患者は、なんと200歳の老人である。彼は病に倒れても、死ぬことが出来ないのだ。何故ならば、“火の鳥の血”を飲んだのだから!
ブラック・ジャックは、そのようなことは頭から問題にせずに、肉腫の治療(手術)をする。報酬は、火の鳥の血だ。内心馬鹿ばかしく思いつつも、とにかく女に火の鳥の巣まで連れられて行き、火の鳥を撃ち殺す。女はブラック・ジャックを殴り倒して火の鳥の死骸を横取りする。
追い返されたブラック・ジャックは、老人から、自分が火の鳥の血を飲んだというのは、嘘だ、と、聞かされる。彼の長年の思い込みを、女が誤解したのだ。その時、女は“光る毒蛇”に襲われていた。“火の鳥”と“光る毒蛇”の正体は、発光バクテリアだったのだ。ブラック・ジャックは、女に応急治療を施して、去って行く。
“命”を“永遠”の視座から照射する「火の鳥」と、“永遠ではありえず、多くの場合、救うことも出来ない”という立場から見つめる「ブラック・ジャック」とは、言わば鏡像の関係にある。この2作の接点が、本エピソード。これが単行本に収録されない理由は、不明である。
人間とは思えぬほどに崩れ果てた200歳の老人を目の前にして、限界を越えた長寿の虚しさを、改めて悟るブラック・ジャック。彼は例え、本物の“火の鳥の血”があっても、それには関心を示さないであろう。何故なら、ブラック・ジャックの仕事は、患者を治すことであって、不死にすることではないからである。
Last Updated: Jul 25 1996
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