ブラック・ジャック:デカの心臓

 ひとなみ外れた巨体の持ち主、出可(デカ)少年。彼は鯉の養殖が好きな、心優しい少年なのだが、そんな彼の心中とは無関係に、周囲は相撲だ、プロレスだ、末は横綱か世界チャンピオンかと、かまびすしい。出可は巨人症であり、運動をすれば寿命を縮める、というブラック・ジャックの進言も、父親にはねつけられる。

 意に反して相撲部屋に入ることになった前日、出可のイケスに車がスリップして飛び込んだ。このままではオイルで鯉たちが死ぬ。池に飛び込んだ出可は満身の力を振り絞って車を押し出そうとするが、心臓が持たず、車と石の間に足をはさまれてしまう。ブラック・ジャックは、だから言わんこっちゃない、と、出可の両足を切断し、義足をつけるが、実は車椅子を漕ぐ出可少年の両足の義足カバーの下には、(治療中の)足が、健在なのであった。いずれそのカバーを取って、すっかり治った足を父親に見せてやれ、と、ブラック・ジャック。

 これも、この場限りの解決のような気がするのだが。出可に運動をさせるのを、彼の両親に(決定的に)諦めさせるために、足を切ったふりをするのだが、実は足は切られていないということを、将来のいつの日か知ってしまえば、振り出しに戻るのではないかな。そんなに物分かりの良さそうな父親にも見えないし。


*「ブラック・ジャック 15」(少年チャンピオンコミックス)


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: May 3 1996 
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