ブラック・ジャック:水頭症

 水頭症の少年。手術をすれば一生白痴、放置すればあと2年の命、ということを知っている本人は、しかし朗らかである。芸人志望で病院の人気者の彼は、残り少ない人生で、ひとを笑わせて死にたい、とブラック・ジャックに言う。ブラック・ジャックはカルテを持ち帰って研究する。

「おれという人間は、死を目の前にしてあきらめきって笑っている病人をみると、腹が立ってくるんだ!」

 ある術式を思い付いたブラック・ジャックは、病院の手塚医師にそれを教える。そんな難しい手術は君にしかできないよ、と言われたブラック・ジャックは、十分な報酬をもらわなければやらんよ、と、突っぱねる。それを立ち聞きしていた少年は、病室に駆け戻って泣き出してしまう。

 翌日、手術が失敗したという電話を受けたブラック・ジャックは、病院に駆けつける。実は手術はまだ行われておらず、電話は少年による手塚医師のものまねだったのだ。やっぱりブラック・ジャック先生は来てくれた、ぼくは信じていた、先生にしか手術出来ないと聞いた、僕は芸人になれる、ぼくは一生かかっても手術代を払う、と説得する少年。手術室に入るブラック・ジャック。

 ブラック・ジャックの代表的傑作のひとつ。この少年のキャラクターが素晴らしい。彼は死期を悟って、それまでを精一杯に生きる、と割り切っているのだが、しかし、治癒の見込みがあれば、手段を選ばず(大人を騙してでも)それに精一杯賭けるのである。


*「ブラック・ジャック 6」(少年チャンピオンコミックス)

(文中、引用は本書より)


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: May 3 1996 
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