鈴木: 登場人物(必ずしも「人」ではないが)の人気投票をやったが、割れた割れた。登場人物多すぎ(笑)。 小川: (第1巻で主役級として登場させた)セアキは、地味でキャラが立たないが、最終巻までちゃんと生き残って仕事をしているのは、えらい。 小川: ラゴスには票が入らなかったが、この作品に対する作者のブレを一身に抱えてくれたキャラ。男性性を与えたものか、奪って両性(的)にしたものか、最後まで迷った。建築家としての属性を生かすはずだったが..(超新星爆発を防ぐ壁の製作を指揮するとか。) 塩澤: 基本は、ハイペリオンをやってほしかった。
当時、小川さんには大手出版社から声がかかっており、早川を捨てられると思ったので(笑)、長いシリーズを頼んでおけば引き留められるだろう、と(笑)。他社と並行して(早川にも)書いてくれれば、と..小川: 天冥しか書けなくなった(笑)。
ハイペリオンには時間要素が入っているが、天冥でそれを取り入れたら、終わっていなかった。これをやったらいかん、と、最初から時間線は1本にした。鈴木: 古いモチーフを使っている。「人類家畜テーマ」とか「世代宇宙船テーマ」とか。 小川: 当然、「宇宙の孤児」(ハインライン)は意識しました。
「人類家畜テーマ」と言われてもピンとこない。それを意識したことはない。
(むしろ)「海の闇、月の影」(篠原千絵)に影響された。双子の姉妹がウィルスに感染して超能力を得る。ひとりは闇落ちする。イサリとミヒルの原型であり、これを書きたかった。塩澤: ハイペリオンとか言ってるけど、モチベーションは「海の闇、月の影」だった。(私には少女マンガを読む感性が全くない(ので苦労した)が。) 小川: イサリとミヒル姉妹の件(くだり)の直しが、一番多かった。 鈴木: このようなトリッキーな構成にした理由は? 小川: 第2巻でいきなり(第1巻の設定から)ふっとぶ、という展開を、どこかでやりたかった。 鈴木: 冥王斑の発想源は? 小川: 「復活の日」(のMM−88)のメカニズム。(小松左京は、あの時点で狂牛病を予言していたのではないか?)それと、鳥インフルエンザ(の変異の凄さ)、および、「北アルプスペスト事件」。 鈴木: あおばが、最後の最後に出てきて閉めたのは? 小川: どうやってこの長い話を終わらせようかと..(メモ欠落) 小川: 「断章」システムは大変便利で、どこに何をいれても構わない(笑) 小川: 宗教国家を出したのは、かっこいいから。ロイズ保険を出したのは、国家だけではつまらないから。(しかし、これ(保険)で実行支配ができるかどうかは?) 小川: 火星は、あまり面白いとは思えず、出さないようにした。そのために、レッドリートという災厄をでっち上げた。 小川: 地球がでかいツラをすると鬱陶しいので、フロントに出てこないように手を打った。地球については、厳密なシミュレーションはしていない。 小川: (ラバーズについて)マゾヒスティックな喜びを描く展開にならなかった。 塩澤: 第4巻は、なんでこんなことになった?(笑) 小川: 当時、表現規制問題がやかましく、じゃぁ、やってやれ、と(笑)。倫理兵器の、ややこしい動作原理をでっち上げることになった。動作原理は、終わりの方で混乱してしまった。 塩澤: 第4巻がなければ、もっと売れたのでは?(笑) 小川: そっち!?(笑)
ここで、第4巻があったほうが売れたと思うか、無いほうが売れたと思うか、客席の挙手をとったが、有意な差はみられなかった。[;^J^](ただし、自分のツレが第4巻で挫折してしまった、という、客席からの証言はあった。[;^.^])
塩澤: 私としては、第2巻の方がエロかったです。 小川: 個人の性癖については(以下メモ判読不能) 小川: 読者は、第4巻を最初に読んだときに、この世界のどこまでが(作品世界として)正常なのか、「この作品世界としても異常」なのかがわからないので(以下メモ欠落) 鈴木: (第5巻について。)なんで羊なんですか? 小川: あまり面白い答えにはならない。単に可愛いから。「ノーストリリア」とか「電気羊」とかは、関係ないです。キリスト教に(ふんわりと)かぶせたわけでもない。 小川: この太陽系には、ノルルスカインが先に着いてミスチフに備えたが、宇宙のどこでもそうだとは限らない。それぞれ違うタイミングで、ミスチフやノルルスカインが(先に)着いているだろう。 塩澤: 第5巻は違う話になるはずだったんですよね? 小川: 第5巻を書いているときに311が起こった。第5巻は、仙台の(メモ判読不能)を舞台にしていて、そこに津波がやってきて(以下、メモ欠落) 鈴木: ミスチフは、相手を「選んで」乗り移るものなんですか? 小川: 選択性はない。ミヒルは自分から行ったんだし。ミスチフに乗っ取られなくても同じことをやったかどうかは、なんとも。 塩澤: 小川さんは、分量の見通しが立てられない人なんですよ(笑) 小川: しっかり書けと言ったから(笑) 小川: (第7巻の電源の話。)メニーメニーシープの初代大統領は、そこまで深くは考えず、政治的にOKなら良し、としている。 鈴木: テクノロジーで気になるのは(300年とか2000年とかの)移動時間。 小川: 超光速ではない。亜光速。このあたりから、オーバーテクノロジーが、ちょいちょい出てくる。(最初は、オーバーテクノロジー無しでやろうとしていたけど。)だから、ハードSFではないですね。 鈴木: ラゴスとオンネキッツの対話。進化と非進化の論議。ここが、天冥のキモだと思うのですが。 小川: 「メタ進化」について。「進化」と「人為」のどちらが望ましいのか..この話長くなりすぎますので、ここでは省略します。別途、文章を書きます。
宇宙に善悪はない、宇宙はわれわれに興味を持たない..という考え方は、寂しい。お互いを見ている、興味を持っている、みたいな..鈴木: (書き終えた今、)心残りはありますか? 小川: ..無い。 鈴木: 塩澤さんは? 塩澤: 僕は「三体」をまだ読んでいないんですけど(笑)、ゲームが出てくるらしいじゃないですか。ゲーム(要素)を含めてもよかったのではないか。 塩澤: もう少し短くても..(笑) 小川: そんな話は、初めて聞きました(笑)最後の2年間は、これしか書いていないし(以下略) 鈴木: 生々しい話はやめましょう(笑)
以下、Q&A。
Q: オムニフロラは、なぜ、超光速技術を手に入れられなかったのでしょうか。 小川: 皆、必死に隠していたのではないでしょうか。(もしも超光速を手に入れていたら、逃げたと思う。) 鈴木: 異星人の描き方については、ギャグギリギリが多く、しかし状況は深刻で、ここは笑っていいところなのかどうかという(笑) Q: 第3巻の艦隊戦は、どこまで計算していましたか? 小川: (メモ判読不能)や質量が理屈にあう「桁」に収まるようには、計算しました。惑星、小惑星の配置までは、厳密には計算していない。 Q: 設定を作りこみすぎて、あとになって苦しくなったことはありませんでしたか? 小川: 後悔はしませんでした。大変になることはわかっていたし..大変だったけど。 小川: 第1巻〜第8巻の構成は最初の段階で決まっていて、第9巻、第10巻は、マージンとして(ここまででゴチャゴチャになってしまった場合、それの処理用に)とっていた。 小川: 各階層はあまり絡めないように、とは考えた。ノルルスカインは、ミスチフとだけやりあっておれ、とか。ノルルスカインがあまり人間に関わると、矮小化することになるし。 塩澤: 「三体」はまだ読んでいないけど、すごく面白いらしいけど..聞く限りにおいては、天冥の方が面白いと思うので、もっと売れるよう、皆さん、よろしくお願いいたします。
Last Updated: Aug 1 2019
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