横溝正史「本陣殺人事件」


 7年前の読書記録では、「無理がある」の一言で片付けているが、これは、トリックしか読んでいなかった証拠である。動機が、人工的ながらも説得力があり、三本指の男の組み込み方も、まことに自然で、間然するところが無い。トリックの本質は、凶器を密室から取り除く点にあるのだが、やはりこれは大仕掛け過ぎて感心出来ない。とはいえ、「密室状態の日本間」なればこそのトリックで、ドメスティックなアイデンティティはある。また、掻き鳴らされる琴のイメージは鮮烈である。

*角川文庫


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jul 15 1995 
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