S・S・ヴァン・ダイン「カブト虫殺人事件」


 一件不再理狙いパターン。優れた探偵/弁護士ならば覆しうる程度の、自分に不利な状況を作り、かつ、それを作った人間は別にいる、と誘導しようとした。動機は色(不貞に対する嫉妬)と欲(身内に(自分の学究のために)遺産相続させる)で、説得力十分。最初にファイロ・ヴァンスに指摘された殺人方法が、あまりにも確率の低いものだったので、おやおやと思ったのだが、きっちりと擬装であった。犯人を逮捕するにたる証拠は結局得られず、真相を知る人間が、犯人を(証拠を残さずに)殺すのを看過する、という結末。エジプト関係を中心とするペダントリイも、ほぼ適量 [;^J^]。傑作である。「僕は、なにかの理由がなくては神話などについて変てこな話にふける習慣はないよ」(398頁)。おまえが言うか、おまえが! [;^O^] 274頁に、トスカニーニに関する記述あり。そういえば同時代だった。

*創元推理文庫


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jul 15 1995 
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