S・S・ヴァン・ダイン「グリーン家殺人事件」


 20年振りの再読。よって、犯人は判っていたのだが、そういう視点で読むと、確かにミスディレクションが素朴ではある。アダは最初の襲撃を軽傷で凌ぎ、前半は、怪しい行為(表情)を散々取る。トリックも平易。アダの擬装の凶器隠しトリックは、ホームズからの援用。レックス殺しは、秘密の通路ならぬ秘密の送話管にピストルを仕掛け、自動発射。とまぁ、今の目から見ると色々と古いのであるが、「古臭さ」は微塵もない。全編を覆う暗鬱な雰囲気に乱れが無く、バランス良くまとまっているからであろう。「僧正」には及ばないと思うが、やはり一代の傑作である。

*創元推理文庫


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jul 15 1995 
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