主役のキャラクターがしっかりしている。歴史的な背景も古い絵画を思わせて好ましい。時代が時代故、トリックやヒントが現代的な約束に従っていないことがままあるのはやむを得ないか。「手の跡」「神のみわざ」「宝さがし」(犯人が、元海賊ではなく元囚人という皮肉)「第十戒」がその例。「ドゥームドーフ殺人事件」は、ルブラン、乱歩も用いたトリック。「ナボテの葡萄園」は、トリック云々ではなく民主主義の描写が感動的。他、「死者の家」「黄昏の怪事件」「奇跡の時代」「黄金の十字架」「藁人形」「神の摂理」「血の犠牲」が佳作。
早川ミステリ文庫Last Updated: Jul 15 1995
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