久生十蘭「魔都」


 こいつぁあ、べらぼうに面白いや![^O^] 怜悧で根暗な真名古課長のキャラクターが、抜群にいい。警視総監を犯人だとして告発するが、結局これが間違いで自ら身を引く、その身の振り方は、本文中でも例えられている様に、明らかにジャベル警視であり、地下迷宮と合わせて「レ・ミゼラブル」からの引用である。魔都・東京が、生き生きと描かれている。一応きちんとした推理小説だが、飛び切りのトリックがある訳ではなく、むしろ推理小説風のひたすら面白い小説と言うべきだ。この胡乱な生命力! 登場人物に距離を置く戯文調が成功している。最後の市街戦を一行で片付ける点など、実にスマートである。戦時体勢下に書かれた、したたかな通俗娯楽巨編である。

*久生十蘭全集1 三一書房


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jul 15 1995 
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