指紋の偽造を扱う。このネタだけで長編1本もたせることを含めて、古き良き時代のノンビリムードが漂い、それがまたなんとも言えない味を醸し出している。いきなり自明であった真犯人は、冤罪の被告が無罪を勝ち取った法廷から、憤怒(と不安と絶望)と共に立ち去り、ひとりの警視がその後を追うにとどまり、結局、断罪されるまでには至らない(動機や背景も含めた真相究明には至らない)点が、むしろスマートである。
創元推理文庫Last Updated: Jul 15 1995
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