A・C・ドイル『シャーロック・ホームズ・シリーズ』


 短編集に読み残しがかなりあったので、まとめて再読した。やはり後期の作品ほど、薄味になる様である。長編は、「犬」を除いてかなり昔に読んでおり、敢えて再読しなかった。いずれも印象は非常に良かったものである。「犬」は感心しない。怪物的な犬が「実在する」というのは、ほとんどホームズものとも思えない。もっとも、これほど怪物的であるにも関らず犬は犬、靴には目が無い、という点が真相解明の糸口となるという無気味なユーモアは、ホームズらしい。

..というのが、「バスカヴィル家の犬」読了直後の感想であるが、腑に落ちないので再読してみて納得した。これは、乱歩を典型とする流派の始祖ではないか。ホームズ=本格物、という固定観念があったから、評価出来なかったのである。言うまでもなく、ドイルは、SFの主要パターンの始祖でもあり、オカルト小説も多くものしている。ミステリ系列の業績を、本格物の角度からしか見ない、というのは片手落ちであった。同時に、「赤髪連盟」「まだらの紐」と並べて、本作をホームズ物の最高傑作とする、推理評壇の懐の深さにも感心する。

*新潮文庫


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jul 15 1995 
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