C・ディクスン「九人と死人で十人だ」


 戦時下の火薬運搬船というシチュエーションを生かした、一人二役トリック。二役の作り方は、手品の基本と言えそうなもので、その意味では正統派のトリックである。外国語で話すと作り声を見抜かれにくい、と言うのは、面白い発見である。中途で、紅一点の登場人物が怪しい行動をとり(ここでは、懐中電灯を持って甲板にあがる)、主人公がそれを誤解し、それが元で彼女はカンカンに怒り、しかしエピローグでは仲直りをする、という、ワンパターンではあるが微笑ましい展開がある。まるで古いアメリカ映画を観ている様だ。

*別冊宝石 昭和32年9月号


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jul 15 1995 
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