H・H・エーヴェルス「蜘蛛」


 自殺者が続出する部屋の向かいの部屋にいる女が、蜘蛛の化身であるということは、ピッタリとした黒装束、先の尖った小さい歯、紡ぎ続ける糸、から明らかであったが、なかなか良いイメージである。殺害方法?も、他愛のない物真似ごっこを隠れ蓑として、次第に相手の意志力と行動をコントロールしていき(自分の真似をせざるを得ないという心境に追い込んでいき)、即ち、蜘蛛の糸に絡めとってしまうという、興趣あるものであった。実に鮮烈な印象を残す傑作。乱歩の「目羅博士の不思議な犯罪」の元ネタらしい。

*『怪奇小説傑作集』創元推理文庫


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jul 15 1995 
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