私の感覚では、これは完全にロマン派の音楽です。特にラヴェルの「海原の小舟」に近い。弦楽器の不協和音がこれほど美しく響く音楽はそうそうあるものではなく、また、その耳に突き刺さる不協和音に存在感があるのがいい。それは朱鷺の鳴声の模写であると同時に、この抽象的な音響空間を、遥かな距離と高みに支える通奏低音(通奏高音)として機能している。日本が世界に誇りうる、1980年の作品。どうでもいいことだが、無調音楽ではない。(今気がついたのだが、この年は、本格推理小説時代の再来を高らかに告げた、島田荘司の(これまた世界に誇りうる)世紀の傑作、『占星術殺人事件』が発表された年の前年ではないか。本格推理小説は、ロマン派音楽に通じるところがあるのだが、今回はこの点は論じない。)
Camerata 30CM-178〜9 “鳥たちの時代”Last Updated: Jul 13 1995
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